雪道
町いっぱいに積もった雪は、一面を白銀の世界に変えていた。
「うわっ、さぶっ!!」
外に出ると、息は真っ白!吹き付ける風は、肌を刺す程に冷たい・・・。
「お母さん、行ってきます!!」
「いってらっしゃい!外は凍ってるから、転ばないように気をつけるのよ!」
「分かってるって!も〜・・・私も子供じゃないんだから・・・」
もう高校生だよ!と一言添えて、私は学校へと足を向けた。
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「う〜・・・寒い〜・・・」
コートにマフラーに手袋で、完全防寒してるのに、冷たさはちょっとした服の隙間から入り込んで来る。
「カイロ持って来ればよかった・・・」
「よぉっ!何やってんの?」
げっ!?一宮!!
「・・・あからさまに嫌な顔すんなよ」
「べ、別に嫌な顔なんかしてないよ!!」
一宮冬真。学校ではお調子者で有名なヤツ。コイツのテンションが、私は苦手だ。
「い〜や、嫌な顔してる!なんだ?俺、お前になんかしたか?」
「あんたのテンションが嫌いなんだよっ!・・・アッ!」
ドテ!
「・・・・・・プフッ」
「わ、笑うなーっ!!」
コイツの顔なんか見たくなくて、私は早足でその場を離れようとして・・・こけた。
「ほら・・・」
「・・・なによ」
「手、いつまでしゃがんでんだ?風邪ひくぞ!」
そう言って、私の手をグイッと引っ張って立ち上がらせる一宮。あ、意外と力あるんだ・・・
「・・・ありがと」
「へぇ・・・高坂がお礼言うなんて、明日は台風か?」
「私だって礼くらい言うわよ・・・・・・クシュン!!」
さ、寒い!!溶けた雪とかが入り込んで、体が冷たい・・・!!
「なんだ、寒いの?」
「・・・だって・・・」
「ほら、やるよ!」
ごそごそとポケットから取り出したものは、カイロだ。
「まだ暖かいし、学校まではもつだろう!・・・新品じゃなくて悪いけど・・・」
「えっ、でも一宮は?寒いよ?」
「走ればいいさ!俺、陸上部だぜ。んじゃお先に!!」
声をかけるヒマもなく、一宮は颯爽と雪道を駆けて行く。
普段はお調子者で、いっつも周りを困らせる一宮が、今日はカッコイイ・・・それに、イメージだけで苦手意識を持ってた私だけど、今は少しだけ、見直してる。
「・・・あ、あったかい・・・」
ポケットに入れたカイロは、温かくて、心まで温かくしてくれそうだ・・・
「あ、やばっ!!」
遠くで、始業前の予鈴が鳴っている。私も、雪道を駆け出した・・・