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第7話 計画破綻のミノタウロス狩り!

 ヘルミーネはクロとの関係がはっきりし、自信を深めていた。難関クエストに挑みたい。

 もう、クエストで実戦を積んでもいいよね。攻撃魔法も形になってきたし!

 

 ギルドで、ミノタウロス狩りの案件書を見つける。あるダンジョンでミノタウロス3体が暴れていて、冒険者の犠牲者が出ているとの内容だ。


 彼女は思い切ってこのクエストに挑戦する。受付で手続きすると、Eランク一人では申し込めないとのことだ。参加の決まったパーティーに了承をもらった上で、補助係としての帯同でなければ申し込めない。

 

 そこへ、全員Aランクの3人パーティーがやってきた。剣士、魔法使い、僧侶の組合せで全員体格が良く屈強そうな男だ。

「闘技場で活躍したヘルミーネという魔法使いは君のことか? 噂を聞いたよ! 一人で申込み希望? 俺達もその案件に申し込もうと思っていたんだ。ちょうど、ちょっとしたサポートが欲しいと思ってた。一緒にやろう! 俺達のパーティー名はルミナス団だよ。リーダーのラルフだ。荷物持ちで良ければお願いしたいんだけど、どう?」

ヘルミーネはこのパーティーについて行くしかなかった。

 

 ランクが低いと自分の思うようにクエストに申込むこともできないんだね。これは、本来なら当然のことだけど、今の私にとっては迷惑なルールでしかないよ! 

「ヘルミーネ・ルクスです。よろしくお願いします。攻撃魔法ならお手伝いできます!」

 

 ラルフは闘技場と実戦の違いをアピールした。

「闘技場のプラチナとはいえ、実戦のミノタウロス戦はかなり手こずると思うぜ。一瞬の油断が命取りだ」

 

 一行はダンジョンへ向けて出発した。


 ラルフはヘルミーネの実力を疑う。

「君はEランクだけど、こんな難関クエストに挑むとはね。闘技場の実績で自信があるのか、経験不足で立ち位置が分からず実力を過信してるのかどちらかだろうな」

 ヘルミーネは少し気に入らなかった。

「ドラゴンを倒したことはありますし、召喚魔法も使えるので、お役に立てるとは思います」

「ドラゴンの角を拾ったのは、偶然と聞いているぞ……まあいい。闘技場は人為的に作られたバトルだから、結局は安全だ。でも、実戦は何が起こるか分からない」

 

 ラルフはヘルミーネのことを戦力外に考えている。

 「ミノタウロスはあのダンジョンではボスだ。出くわしたら、君は後方の安全な場所で待っててくれ。俺が指示を出すまで待機で頼む。心配するな」

 

 ヘルミーネは不服ながらも、仕方ないと気持ちを落ち着かせる。

 ミノタウロスって何?強そうだけどドラゴンほどではなさそうだし。でも、確かに知らない相手にいきなり飛び込んでいくよりも、まずは皆さんにお任せして様子を見よう。


 期待は十分あった。

 まだ実戦で使ったことのない技があるから、思い切り試すいい機会だ!クロちゃんもついてるし、4人掛かりでしょ?


 ダンジョンに到着する。ヘルミーネは大きな荷物を背負わされていた。道具類や食料など、ダンジョン攻略の数日で最低限必要な物だ。身長158cmのヘルミーネが小さく見える。


 ルミナス団がダンジョンに入り、ヘルミーネは最後尾からついて行く。


 さっそくモンスターに出会った。ゴブリンだ。ラルフと魔法使いのロバートが瞬時に片付けていく。どんどん集まられて集団を作られると厄介だという。

 

 隠れていたゴブリンが背後からヘルミーネを襲う!気配に気付き、杖で軽く払うと、やりすぎなくらい吹っ飛ぶ。

 ラルフも見ている。

「ヘルミーネ、ゴブリンくらいなら余裕そうだな。その程度の敵が出てもかばわずに進むぞ!」

「分かりました。問題ないです!」


 どんどん、階層を下に進む。僧侶のレスターが振り返る。

「もう少しで、ミノタウロスが出てくるぞ! 私達はちょっと前、下見に来たんだ。ビビるとは思うけど、君は戦闘に巻き込まないから大丈夫だ」


 丁寧な配慮のようでも、ヘルミーネには無用だった。彼女は引っ込んで待機している気はさらさら無い。

 隙を見て、私も参加するからね!あなた達より活躍したらごめんね。報酬は山分けといきましょうか!


 広間のような大きな空間がある階層に来た。ドシンドシンと大きな足音が聞こえてくる。ミノタウロスがいて、岩陰から覗くとやはり3体だ。人の10倍はありそうな巨体で牛の角が生え、こん棒のような粗末な武器を持っている。


 ラルフが戦略を立てた。

「ロバート、まず、あいつらに幻影魔法を食らわせてもらいたい。混乱させたところを俺が手前の1体を攻めるから、奥の方は攻撃を頼む。レスターは、全員に防御魔法をかけておいてくれ!」

 攻撃戦略としては、ミノタウロス達に幻を見せて足止めする。次に一番近い敵はラルフ、遠い敵はロバートが遠距離攻撃で倒すということだ。

 

 ロバートが岩に身を隠しながら、幻影魔法を詠唱する。しかし、敵の気配が変わらない。そればかりが、こちらに気づき3体とも向かってきた。


ロバートが青白い顔で伝える。

「やばい。状態異常耐性だ!」


 ラルフが指示する。

「まずいぞ、気付かれた! 全員下がれ」

何もできずに退却する。


 その時、1体のミノタウロスが走ってきて大きなこん棒でパーティーめがけて殴りかかってきた。動きが速い。一行は最初の一撃をかわしたものの、もう1体が攻撃に加わる。2体同時の二撃目をかわしきれない!


 ルミナス団メンバーが終わりを覚悟した時、ミノタウロス達の動きが別の方に向かって行く。気付くと不気味で巨大な狼まで出てきた。いよいよ最期だと確信した瞬間、狼がミノタウロス達の攻撃を受けている。


「クロちゃん、もういいよ! あとは私がやるからね!」

「承知しました! ご主人様。大したことはなかったですね」

 ヘルミーネがとっさに召喚したクロがミノタウロスたちを引き付け、代わりに攻撃を受けていた。クロはノーダメージだ。


 ヘルミーネが杖を振る。 

繰り出した魔法は、エターナルナイトメア。相手に魔王の幻影を見せ、混乱と恐怖に陥れる。高確率で成功する状態異常魔法だ。


 ミノタウロス3体は混乱し、空間を攻撃したり、動作が止まり立ち尽くしたりした。

 そこへ、ヘルミーネが攻撃魔法でとどめを刺す。その名はシャドウスパイク。

 闇のエネルギーが無数の槍となって、ピンポイントで敵を貫く!

 バァァァン!ドォォン!バババーン!


 ドサ!

 ミノタウロス3体が倒れる。ヘルミーネの勝利だ!


 やっぱり、私強くなってる!前より断然、スムーズに魔法が出せる。自信を持って戦っていいんだ!


ルミナス団は唖然として声が出ない。ラルフは、やっと震えた声を出した。

「ヘルミーネ、すごいな。君はこんなに強かったのか?」

「はい、これが普通です!」

「召喚したモンスターは化け物級に強いし、その変わった杖は何だ!? 異常な魔力だろ!」


 ロバートが不思議がった。

「ヘルミーネさんの魔法は闇属性だし、杖も異常な高魔力だ。低ランクでは考えられない。深い事情がありそうだ」

「はい、この杖は知人からお礼にもらった強力なアイテムです」

 

 ラルフもびっくりしている。

「知人て誰だよ! 神か? 魔王か? まあ、そんなわけないか。分からんけど、魔法の世界は奥が深いぜ……」


 ヘルミーネはミノタウロスの角を取ろうとしていた。

「じゃあ、皆さん。報酬は私が全部もらっていいでしょうか?……冗談ですよ!」

ぐうの音も出ないルミナス団だった。

 

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