第6話 ダークウルフとの出会いとは?
間もなくして、大きな狼のモンスターは、ヘルミーネが予想もしなかった話をする。
「ご主人様、一緒にダンジョンを制覇したあの日、また出会えて、お呼びいただけて嬉しかったです!」
「またって何!?」
「忘れられていましたか? 残念です。無理もないですね。あの時ご主人様はまだ幼かった。大きくなられて。」
「今17歳だけど、どういうこと?」
「この森で命を助けていただいたあの日のことです」
ヘルミーネは幼い頃、一人でこの魔族の森に迷い込んで、奇跡的に故郷の村に帰ってきたことがあった。
「小さい頃、森で迷って小柄な野良犬を助けたことはあるよ。もしかして、君なの!?」
「そのはずです。思い出していただけたでしょうか?」
「大人達の狩りに興味本位でついて行って、はぐれて森に迷い込んだんだけど、ここだったんだ!ケガをして動けなくなってたよね。元気で大きくなって良かった!」
「ご主人様、ありがとうございました。あの時の主従契約を覚えていませんか?」
「えっ! 何それ!? 何か約束あったっけ?」
「その反応ですか、残念です……私はご主人様に再び会える日を待っていたのに……」
ダークウルフは以前、魔族の森で死にかけた経験を語る。
「あの日、私達の群れは縄張り争いに負けて森ををさまよっていました。私は群れからはぐれた上にまだ幼く、大ケガを負い体力も尽きかけていて。そこへ森の中へ歩いて入ってきたのがご主人様です」
「そう言えばそんなことあったね。ごめん、野良犬じゃないね。何ていう種族なの?」
「私達は、ダークウルフと呼ばれています。人間たちは黒く凶悪な悪魔の狼と言っているそうですよ」
「まあ、見るからに大きくて恐いよ。」
「でも、私が小柄だったからか、ご主人様は近寄ってきました。鳴き声で助けを求めると、帰り道を教えてくれないと助けないよと言いましたね。そればかりか、またこの森に来るけど、その時森を案内する約束をしないと助けないよとも言いました」
「私そんなひどいこと言った?ちょっとしたおしゃべりをしてたつもりだし、ごめん内容は覚えてない」
「ええっ!! あれは主従契約しないと助けないというアピールではなかったんですか!?」
「いや、勘違いだよ!」
「あの時、私は乗り気ではなかったのですが、やむを得ず、口約束でご主人様と主従契約を結びました。だから、私はご主人様に仕え、ご主人様は私から闇属性魔法の属性適性を得たんですよ!」
「そうだったの!? 全然自覚なかった! だから、私召喚魔法が使えるし、魔王さんからもらった杖が使えるんだね」
「はい。ご主人様が魔王様の杖の強大な魔力を借りたことで、召喚魔法で私が呼び出せるようになりました。あの杖で強力な闇属性魔法が使えるのも私から得た属性適性があるからです」
「あの時、君が見つめていた薬草をとって口に入れて、傷口にも詰め込んであげたよね!助かってよかったよ」
「傷口に薬草を詰め込まれて痛かったです! 更に、残りの魔力をほぼご主人様にあげ、森の出口まで案内しました。だから、闇の魔力に守られて人里まで歩いて帰れたんですよ」
ヘルミーネは懐かしい友人に再会したような気持ちになり嬉しい。ダークウルフも、長年主人に言いたかったことがやっと言えた。
「ご主人様、助けが必要な時はいつでも呼んでください! できることは何でもさせていただきます」
「分かった! よろしくね、クロちゃん!」
「えっ!何ですか?」
「君の名前だよ、クロちゃん!」
ヘルミーネに強力な仲間ができた。