第2話 誰も信じてくれない
ヘルミーネはギルド受付で魔族の森で倒したドラゴンの角を換金しようとした。受付は驚く。
「どこでこんな貴重な物を拾ったの?」
「私が倒したドラゴンから取ったものです」
居合わせた冒険者が一斉にどよめく。
ギルドマスターが呼ばれて来る。
「嬢ちゃん、嘘は良くないぞ。まあ、たまたま森で拾ったんだろ」
ヘルミーネは疑われるのに納得した。
本来、私のような低ランク冒険者がドラゴンを倒せるわけない。
「嘘に思えるでしょうけど、ギルドのゴミ箱で拾った杖を使って倒しました」
ギルドマスターは笑う。
「じゃあ、その杖とやらを見せてくれ!」
「もう、持ち主に返しました」
一同が一斉に笑う。
笑われるのは仕方ないと思いつつもヘルミーネは説明を続ける。
「持ち主からは、拾った杖を返したお礼に今私が持っている杖をもらいました。これもかなり強力な性能ですよ」
魔王から杖をもらったことは秘密にしたい。魔王は現在、王国最大の脅威だ。
「はいはい、嬢ちゃん、じゃあいつか威力を見せてくれよ。本物のドラゴンの角には違いない。換金はするよ! まずは魔法の基礎から学びな!」
ヘルミーネは換金後に、ギルドマスターから魔法訓練所の初心者講座を勧められた。
彼女は魔法の知識や技術が未熟なのを自覚している。素直に講座を受講した。
後日、魔法訓練所で初心者講座が始まる。魔法の属性や戦術の考え方などを学ぶ。
実技に入った。各自、杖を使って的に攻撃魔法を放ち、講師が属性の確認と技の評価をする。
講師はヘルミーネにアドバイスした。
「あなたは魔力が小さいけど、気にせずやりなさい。威力が小さいことは気にしない!」
ヘルミーネはぎこちない動作で魔王の杖を的に向かい振りかざす。
「えいっ!」
ゴォォォ! ドォォン! パァン!
黒い炎の柱が立ち昇り、すさまじい爆風が起こる!
講師がよろめきながらヘルミーネの魔法を判定した。
「闇属性! 魔王並みの絶大な魔力だ!!」
ヘルミーネはその場で卒業を許可される。