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29話 メタ読みっ!?

「メ、メタ読み(・・・・)…?」


 お賽銭を入れた人の名前が聞けると思った由佳(ゆか)は、想像していた返答と違ったので叡斗(えいと)の言葉をオウム返しした。


「どういうことや、叡斗君」


「メタ読みはメタ読みだよ。ほら推理小説で、実は犯人は一番無関係そうな目立たないメイドさんだった、とかさ」


「それはわかる」


「わたしもそれはわかる。その意外さが大きければ大きい程、事件の解決が面白く感じるわよね」


 (かえで)はよくそうした小説を読むので、特に大きく頷いた。


「それで? それでお賽銭を入れた人はだれなの?」


「だからオレたちの中で一番無関係そうな目立たないクラスメイトが犯人ってことさ」


 叡斗にそう言われて、全員が改めてクラスメイトの顔を順番に思い浮かべた。


「あれ? わからない?」


 みんながなかなか答えを出さないことに、叡斗は意外そうだった。


「叡斗、教えてっ。メタ読みすると誰が犯人だってわかるのっ?」


 由佳が切実そうだったので叡斗はもったいぶらないことにした。


岩倉(いわくら)木野(きの)だよ。ほら、あのふたりはオレたちの近くにいるけど、目立たないだろ? それに無関係そうだし」


 叡斗はそう言ったが、由佳はその瞬間、岩倉と木野のふたりが無関係でないことに気付いた。

 ふたりは叡斗のことが好きだ。そしてその叡斗は自分に好意を寄せている。岩倉と木野が「おなじくらすのきふねゆかに、じぶんのおもいがとどきますように」と願った意図は「私たちのことを思って、どうか叡斗との関係を絶ってください。私たちにもチャンスをください」というものだったのかもしれない。

 由佳は急に岩倉と木野が、お賽銭を入れた張本人であるということが現実味を帯びてきた気がした。

 叡斗のいう「メタ読み」のパターンにも合致するし、ふたりで出し合えば1万円のお賽銭を捻出することもできるかもしれない。


「私、岩倉さんと木野さんに会ってくるっ」


 由佳は意を決した。

 そしてすぐに行動に移そうと立ち上がった。


「叡斗も一緒にきて。岩倉さんと木野さんに会うには叡斗も一緒にいて欲しい」


 叡斗は、なんでオレが?といった様子だったが、由佳は叡斗の手を引いて生徒会室を出ようとした。


「まあ、一緒に行くのはいいけど、でもやっぱり岩倉と木野は犯人じゃないと思うし、行っても意味ないかもよ?」


 その言葉に由佳は足を取られて転びそうになった。


「な、なんでよっ? 叡斗がふたりが怪しいって言ったのよっ?」


 由佳は訳がわからないといった様子だった。


「まあ、そうだけど。メタ読みなら完全に犯人だけど、あのふたりは金欠(きんけつ)だから、1万円のお賽銭は絶対に払えないからさ」


「き、金欠やて…? 叡斗君、岩倉さんと木野さんは金欠なんか…?」


「そうだよ。夏祭りで演奏するだろ? 晴れ舞台だし、ふたりは新しい楽器を買ったんだよ。親に借金してね。それに練習する場所としてワンフィールドを使うのにもお金がかかる。部屋代は顕乗さんが免除してくれてるけど、ドリンク代とかなんだかんだ出費があるからな。だからふたりは今、お小遣いがピンチなんだ」


 由佳は全身の力が抜け落ちてしまった。


「だったら、最初にそういってよ…」


「由佳、ごめん。ちょっとメタ読みしたかっただけだった。本当にごめん」


 さすがの叡斗も、少し申し訳ないと思ったようで、神妙な様子で謝った。


「あ、ごめん、叡斗。叡斗も考えてくれてたのにひどい言い方しちゃった」


 由佳も、少し言い方にトゲがあったことを詫びた。


「しかし、犯人がわからないな」


「いったい誰なんや…?」


 由佳は大きく溜息をついた。


「私たちは今、問題が山積みね。1万円のお賽銭を入れた人、苗蘇神社と一条神社の神様がいなくなったこと、それにもうひとつ──」


「もうひとつ…? まだなんか問題があったんや。それ、どんな問題なん?」


 静子が不安そうに訪ねた。


「明日からは夏休み。だからいよいよ夏祭り本番よ」

今回のお話はどうでしたでしょうか?

(,,•﹏•,,)ドキドキ


ご意見ご感想などいただけますと幸いです。


私の小説を読んでいただきまして、本当にありがとうございました。

皆さまに「面白い!」と思っていただけるよう頑張ります୧(˃◡˂)୨

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― 新着の感想 ―
推理小説になって来ましたね! 夏祭りで話が大きく動きそうなので、楽しみです! この祭りですべて解決するといいですね!
[良い点] 神様に一万円、学生なら確かに大きな出費ですね。おじさんにはもう、そんな感覚は無いので、なるほどというところです。楽器代がすさまじいのは把握していますが。今回もとても面白かったです。
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