表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/53

2話 クラスメイト① 鞍馬 狗巻

「それでは神様、今日も元気に学校に行って参ります」


 由佳(ゆか)二礼二拍手(にれいにはくしゅ)一礼(いちれい)を持って、一条神社(いちじょうじんじゃ)の神様にご挨拶を申し上げた。


 由佳は通学時、一条神社の前を通るのだが、毎朝こうして神様に挨拶をするのが日課だった。

 と言っても、神様が《視える》ことは内緒なので、あくまで神様が《視えて》いないような素振(そぶ)りで挨拶をしていた。

 その為、傍目(はため)には、信心深(しんじんぶか)い女子高生が、殊勝(しゅしょう)にも、毎朝、神社に挨拶をしているように見えるだろう。


 神様は、由佳が≪視える≫からといって、何か特別な反応をして下さるわけではなかった。

 ただ(おごそ)かに、そこに鎮座(ちんざ)しておられるだけだった。

 それでも由佳は、神様に挨拶をすることを欠かさなかった。

 それは近所の人に会ったら、挨拶をするのが当たり前であるように、神様の姿が≪視えて≫いるので、無言で通り過ぎることはできないというマナーの側面もあるが、もう一つ、神様に挨拶をすると、反応がなくても、心の声をちゃんと聞き届けて下さっているという実感があり、とても充足感を得られるからだった。

 その為、由佳は自ら進んで神様に挨拶をしていた。


 由佳がこうして挨拶をしていると、式神や鬼が、飛んだり跳ねたり、手を振ったりして、一緒に遊ぼうと由佳を盛んに誘いかけてきていたが、しかし、由佳は、それも《視えない》ふりをしていた。

 彼らと一緒に遊ぶわけにはいかないからだった。


「ごめんね」


 ちょっとした罪悪感から、由佳は心の中で彼らに詫びた。

 これも毎朝のことで、由佳の日課になっていた。


「お参りはすんだか?」


 由佳(ゆか)がこうした朝の日課をしていると後ろから声をかけられた。

 由佳に声をかけたのは同じ高校に通うクラスメイトの鞍馬 狗巻(くらま いぬまき)だった。


「おはよう、狗巻(いぬまき)


 由佳と狗巻は、小学校と中学校も同窓の幼馴染みだった。

 お互いの家も近いので、通学時にこうして一緒になることが多かった。


 狗巻(いぬまき)が来ると式神や鬼は、さらに一緒に遊ぼうと、より飛んだり跳ねたりして大騒ぎをしたが、由佳はそうした彼らを尻目に、狗巻と一緒に学校に向かうべく、最寄りの駅へと歩き始めた。


「もうすぐ夏休みだね」


「高3の夏、受験の夏」


狗巻(いぬまき)は、部活は夏の大会までだよね?」


「それが終わったら受験に専念する」


「狗巻は成績いいしなぁ~。

 大学はどこでも行けそう」


「由佳が志望校決めたら報告よろしく」


「報告?」


「そう、報告」


「なんで狗巻にそんなこと報告しなくちゃいけないのよ~」


 由佳は眉間にしわを寄せて、少し怒ってみせた。


「ひょっとして報告しろっていうのは、志望校がかぶって同じ大学に行かないため?」


「……」


「小、中、高と一緒で、大学まで一緒は勘弁してくれ~てこと?」


「……」


「まあ、別にいいけど……。でもね。高校の時も志望校決めたら報告しろっていうから、私はちゃんと報告したと思うんだよね。志望校決めたよ~!って。でも結局一緒の高校になってるよね? 報告してもダメだったじゃない。無駄だったじゃない。これって報告する意味あるの?」


「ある」


「なんでよ~! ないって! ないないっ! 意味ないって~! 結局、小・中・高と、ずっと一緒じゃん~」


「同じ大学に行かない為とか言ってない」


 狗巻(いぬまき)は小声で呟いた。


「……何?」


「……何が?」


「今、なんて言ったの?」


「何も言ってない」


「言ったって! なんか言ったよ! なんて言ったの? 教えてよ~!」


「独り言だし、内緒」


「なんでよ、ケチ~。私には志望校決めたら報告しろとか偉そうに命令するのに~」


 そうこう言っているうちに駅についた二人は改札を通って電車に乗り込んだ。

2話目はどうでしたでしょうか?

(,,•﹏•,,)ドキドキ


もしよろしければご意見ご感想などをいただけますと幸いです。


因みに貴船由佳も鞍馬狗巻も有名な観光地から命名しました。

また観光に行きたいです(*´﹃`*)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
霊とかではなく、神様が見えるというのはとても面白いですね。式神や鬼たちもなんだかいつも楽しそうです。 八百万の神と遊んでみたいです。
読ませていただきました(^^) 早速良さげな展開ですね!読みやすいのも良いです 続きを楽しみにしております!
[良い点] 男児が青春していて胸キュンでした。主人公は察しなくちゃ駄目でしょう。男児が可哀想に。ずっと一途にやってきたんだろうなぁと察せられました。 [一言] 受験会場も一緒に行くんだろうなぁ。今から…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ