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17話 そして神様がいなくなった①

 駅に着くと由佳(ゆか)は深呼吸をして自分を落ち着かせた。

 顔色も元に戻った頃に、少し遅れて狗巻(いぬまき)が追いついてきた。


 由佳は狗巻が自分の様子を気にかけていることに気付いていたが、無言を通した。

 狗巻もしつこく詮索せず、ふたりは黙って電車に揺られた。


 駅をおりて苗蘇神社(びょうそじんじゃ)に続く小径(こみち)に入っても、狗巻は黙って由佳の後ろをついてきていた。


「よくよく考えたら、こんな人気の少ない所でふたりっきりなのよね……」


 これまでなんとも思っていなかった今の状況を、由佳は急に意識するようになってしまった。


 その矢先に狗巻(いぬまき)が不意に「なあ、由佳」と話しかけてきたので由佳(ゆか)は飛び上がった。


「ひゃ、ひゃいっ!! な、なんでしょうっ!?」


 由佳は心臓が飛び出そうなくらい早鐘を打ち始めたのを覚えた。

 みるみる顔も熱くなってきたので、必至に深呼吸して自分を落ち着かせようと努めた。


「なんかいつもと雰囲気が違う」


 唐突に狗巻が言い出した。


「ふ、ふぇぇっ!? い、いえっ! そんなことないですっ…!」


「いや、絶対違う。なんかおかしい」


 由佳は頭が真っ白になった。

 いつになく狗巻の様子が真剣で、少し威圧感もあったからだ。


「き、きのう、まえがみをきりました。だからじゃないでしょうか?」


 抑揚のない棒読みで由佳は答えた。


 髪を切ったといっても、ちょっと不揃いに伸びた箇所を整えただけで、切った内に入らないような程度だったが、嘘ではなかった。

 由佳は前髪をひっぱる風を装い、手で顔を隠した。


「違う。そうじゃない」


「いえ、ほんとうです。でもすこしだけなのでちがいがわかりにくいかもなのです」


「だから違う。そうじゃない。神社が変だ(・・・・・)


 狗巻は由佳の背後にある苗蘇神社(びょうそじんじゃ)を指さした。

 由佳は何事かと思った。


「え…? 苗蘇神社(びょうそじんじゃ)? 私じゃなくて…?」


「由佳も変だが、それより神社がもっと変だ。いつもと雰囲気が絶対に違う」


 さりげなく狗巻は由佳の事にも言及していたが、由佳は聞き流してしまった。

 由佳は苗蘇神社の様子をうかがったが、別段、変わった様子はなかった。


「特に変わった様子はないように思うけど…。鳥居や御社(おやしろ)が壊れたりしてもいないし。あ、(かえで)の掃除は今日もまだされてないみたいだけど」


「そういう異変じゃなくて、雰囲気が変だ。いつもみたいに心が安らぐ感じがしない」


 そう言われて由佳は、はっとした。

 確かに狗巻が言うようにそうした厳かで、威圧的だけど怖くなく、包み込んでくださるような優しさを、今日の苗蘇神社(びょうそじんじゃ)からは感じなかった。


「…あれ? そういえば……」


 由佳は異変の理由に気付いた。


「神様がいない……」

今回のお話はどうでしたでしょうか?

(,,•﹏•,,)ドキドキ

ご意見ご感想などいただけますと幸いです。


この後、20話で狗巻の秘密が明らかになるなど加速してまいります。

引き続き、皆さまに「面白い!」と思っていただけるよう頑張ります!

୧(˃◡˂)୨

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― 新着の感想 ―
急展開ですね。どうして神様がいなくなったんでしょう? 狗巻の秘密も気になります。引き続き、楽しみに読んでいきます!
[良い点] 大事なことなのに由佳ちゃん、気づくのが遅い(笑)見える人からしたら一番、ヤバい変化が起こっていますね。続きがどうなるのか、何が起きているのか気になりますね。今回もとても面白かったです。
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