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最終話 全力!

 シンシアのクラスメイト、神無月佐代子があやつるゴーストデッキ、いったいなにを繰り出してくる!?


「”ファントム・ミストレス”です……はぃ」

――――――――――――――――

【ファントム・ミストレス】

 モンスターカード:ゴースト

 攻撃力:600 防御力:300

 このカードはプレイヤーに直接攻撃できる。

――――――――――――――――


 闘技場の土からあがった黒い霧が女性の姿をかたどった。半透明で向こう側が透けて見える幽霊のような姿だが、その手には巨大な鎌が握られている。


《きたぁぁ!!》

《初手ミストレスちゃん》

《眼福眼福》

《キタキタキタキタ》

《ミストレスちゃんの出番だよ~!》


 コメント欄が盛り上がりはじめた。なるほど、俺もよく知ってるカードだ。さっそく切り札が出てきたってわけか!


『”人妻にしたいモンスターランキング”14年連続ベスト3継続中のファントム・ミストレス! まさかこの目で見られるとは……思わぬ収穫だぜ!』

「セルミくん?」

『見ろ、ボロボロの薄い布から透けて見える豊満なバスト! 清楚な雰囲気のなかに見え隠れする妖艶さ、はかない瞳! 今日もイラスト投稿サイトがミストレスであふれてるに違いないぜ!』

「ふーん……?」


 おっと、いけない。つい興奮してしまったぜ……反省しなければ。シンシアが変なことを覚えたら、父親が卒倒してしまいそうだ。


『気になるのは谷間……じゃなかった、なぜシンシアのドロー直後に出したのか? ターン終了直前にしたほうが、こちらにとって対処しにくいはずなのに……』

「……えっと、ボクのターン、ドロー! フクロウ男にマジックカード”進化薬”を使うよ!」


――――――――――――――――

【進化薬】

 マジックカード(消費)

 モンスター1体を選ぶ。それはターン終了時まで攻撃力と防御力が600アップ。

――――――――――――――――


 佐代子は顔を手で覆いながらイヤイヤと左右に首を振っている。いかにも攻撃されたくなさそうに見えるが、指の隙間からチラチラとこちらを覗く目に弱気を感じない。むしろ待ちかまえているようですらある。


「バトルフェーズ、フクロウ男でファントム・ミストレスに攻撃!」

「ててて、手札から”いたずらポルターガイスト”を……捨てます、すみません」


――――――――――――――――

【いたずらポルタ―ガイスト】

 モンスターカード:ゴースト

 攻撃力:200 防御力:300

 このカードを手札から捨てる:このターン、あなたの墓地のカードを好きな枚数だけゲームの外へ追放する。それと同じ数のモンスターを選び、攻撃を無効にする。

――――――――――――――――


 墓地に送られていたストレンジャー・レイスが追放され、フクロウ男の攻撃が防がれた!


「わお! 佐代子ちゃん、やるぅ!」

「うひぃぃ~せめてもの抵抗なだけですからぁ……」


《ナイス防御!》

《かわいいよ佐代子ちゃ~ん!》

《もっと、もっとだ!》


 観客からも声援が飛ぶ。視聴者数もさっきより増えてきていた。いつかシンシアにも、もっとたくさんのファンがついてほしいものだな……。あと、ファントム・ミストレス、ちょっとほしいな……。


「うーんモンスターを出しても防御できないし……よし、今はこのまま。ターンエンド!」

「わ、私のターン……どろぉ……マジックカード”血の儀式”……出します」

――――――――――――――――

【血の儀式】

 マジックカード(消費)

 モンスター1体を選ぶ。あなたは好きなだけライフポイントを支払ってもよい。支払ったライフポイントの半分をそのモンスターの攻撃力に加える。(小数点切り捨て)

――――――――――――――――


「こ、これで3900ポイントのライフを払ってファントム・ミストレスに、ポチッと……」

「えーーーーっ!?」

『そんなにライフを使うのか!?』


【神無月佐代子のライフポイント:100】

――――――――――――――――

【ファントム・ミストレス】

 モンスターカード:ゴースト

 攻撃力:1200(+1950) 防御力:300

 このカードはプレイヤーに直接攻撃できる。

――――――――――――――――



 モンスターの強化にしてはハイリスクな戦法を取ってきた。このままでは3000を超える大ダメージを食らってしまう。だが――


「ファントム・ミストレスで……攻撃しま……す」

「う~~~~~~~~ん……」


 シンシアは考えこんでいるようだ。


『なあ相棒、デュエルはどうして楽しいと思う?』

「それは……!」

『全力でぶつかり合うからだ。君はそれをよく知っているはず……デュエルTVを見ているだけで満足できないのは、自分で体感したいからだろ? 全力でぶつかるってのは、ベストをつくすこと。ためらっちゃいけない』

「セルミくん……そうだね……うん。手加減なんかしたら失礼だよね」

『ああ!』


「ごめん佐代子ちゃん! 手札からマジックカード”火球”を発動!」

――――――――――――――――

【火球】

 マジックカード(消費)

 プレイヤー1人かモンスター1体を選び、400ポイントのダメージを与える。

――――――――――――――――


「ほわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


【神無月佐代子のライフポイント:0】


《火力カードきたー!!!!》

《ありがたやありがたや》

《勝っても負けてもおいしい》


 佐代子が倒れると同時に歓声が上がった。超ハイリスクハイリターン……確かに一定の人気がつきそうな戦いだった。


「はわぁ~さすがシンシアさん……お強くて、美しくて、カッコよくて……もはや悔いはありません。がくっ」

「佐代子ちゃん!?」



***



 そして――ゴールド・ライセンスをめぐる大会当日。


「来たね、佐代子ちゃん」

「はいぃ……ここまでご一緒できて、もはや悔いはありません……がくっ」

『早いなおい!?』


 町ひとつを丸ごと再現したデュエルスペースは大混雑。外部からの観戦希望者はもちろん、星ノ門ノブレス女子高校の生徒も来ているらしい。


《キャーーーー! シンシアちゃーーーーん!!》


『今のメッセージは絶対あの人だな』

「うれしいような、恥ずかしいような?」


「みなさん、こんにちは! 実況を務めさせていただきます、デュエルTVの襟元舞でございます。まずは予選のルールからご説明しましょう」


 


 俺たちの伝説が、いま始まる!

ここまで読んでいただき、ありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[良い点]  カードバトルの緊張感と敗者には容赦がない点、またこの世界におけるカードバトルのプライオリティの高さなど、世界観が綺麗に表現されておりました。 シンシアちゃんの無垢さがかわいいです。 […
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