表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/9

8話 クラスメイト

 そそがれる視線をたどってみると、電柱の影に身をかくす一人の生徒を見つけた。ぼさぼさした量の多い髪の毛が印象的な女の子で、片方の目に眼帯らしきものをしている。


『なあ、あの子こっちを見ているぞ』

「クラスメイトの神無月佐代子ちゃんだ! あんまり話したことないけど……もしかしてボクに用かな?」


 そういってすぐに駆け寄るシンシアだが、佐代子という子は近づくにつれて縮こまってしまった。声をかけてもモジモジして顔を合わせようとしない。一体どうしたんだろう?


「佐代子ちゃん?」

「ひぃ……あの、おぉ……あぅ……はぁぁぁ~~~~ん……」


 かろうじて反応するのがやっと、といった様子。まるで小動物のようだ。


『なんか様子が変だな……』


 すると神無月さんは突然両手を突き出し、全身がカクカクしたポーズをとって叫んだ。


「すすすすすす昴シシシシシシシンシアさん、昨日のデュエル拝見しました! 超・絶! 推させていただいております~~!!」

「ほんと? ありがとう!」

「うひぃぃぃぃぃ! もうダメです~~~~デュエルスペース展開!!」

「えっ!?」


 次の瞬間、俺たちは光に包まれた。光が消えて暗闇が、そして闘技場の風景がたちまち形成された。


『この子、デュエリストだったのか!?』

「佐代子ちゃんすごい……先輩デュエリストが同じクラスにいたなんて、ボク知らなかったよ!」

「そ、そのようなお言葉、ありがたき幸せぇぇぇ! っていうか、すみませんすみません! テンパってスペース展開しちゃいましたすみません! もうすぐ登校時間なのにすみません!」


 観客席には100人を超えるアバターが次々と現れはじめた。彼女にはある程度のフォロワーがいるらしい。シンシアは……昨夜の時点で3人だ。両親をのぞけばひとりだけ。


「もしかして、昨日ボクをフォローしてくれたの佐代子ちゃん!?」

「は、はいそうですっ! ほんとにたまたまだったんですけど、男の子っぽい恰好してましたけど、間違いなくシンシアさんだと思いまして! ああ~まさかデビューの瞬間に立ち会えるとは幸福の絶頂でして!」


《デュエルまだー?》

《朝から元気だね》

《佐代子ちゃんテンション高くない?》

《相手の子は誰?》


「ハッ! あぅ……この空気、どうすれば……ぷしゅう~~~~……」

「デュエルでしょ!」

『即答かよ!』


《お、はじまる!?》

《昴シンシア見たけどデビューしたばっかじゃん》


「見るのも遊ぶのも楽しむのがデュエル。ここでやめたらみんなもガッカリしちゃう。ね、やろうよ?」

「はふぅ……ほんと推せる……だいしゅき……」


 こうして朝一番のデュエルが始まった。



【神無月佐代子 対 昴シンシア デュエル開始!】


【神無月佐代子のライフポイント:4000】

【昴シンシアのライフポイント:4000】


 「ボクの先攻、ドロー! まずは《舞いおりたひらめき》を発動! デッキからカードを2枚引く!」


――――――――――――――――

【舞いおりたひらめき】

 マジックカード(即時)

 あなたはカードを2枚ドローする。

――――――――――――――――


 手札を増やせるマジックカード。単純だが確実なプラス効果をプレイヤーにもたらす。手札がまったく冴えない状況――俗に”事故”と呼ばれる――はデュエリストなら誰でも恐れるもの。いくら強力なカードを持っていても、コンボを組み込んだとしても、”運”が悪ければどうしようもないからだ。


「フクロウ男を召喚してターンエンド!」

「わ、私のターン……《生前葬》です……」


――――――――――――――――

【生前葬】

 マジックカード(永久)

 このカードがフィールドに出たとき、手札からゴースト・モンスターを1枚選んで下に重ねる。このカードがフィールドから墓地に送られたとき、重ねたゴースト・モンスターを表にして特殊召喚する。

――――――――――――――――


「さらに”ストレンジャー・レイス”を召喚して……終わります」


――――――――――――――――

【ストレンジャー・レイス】

 モンスターカード:ゴースト

 攻撃力:200 防御力:1500

――――――――――――――――


「佐代子ちゃん、もしかしてゴーストデッキ?」

「あ……その通りでございますぅ……ふあぁ~、さすがシンシアさん……」

 佐代子のデッキはゴーストを主軸としたデッキらしい。多くはマジックカードを使ってトリッキーな動きを見せるが、果たしてこの子はどう出る? こちらはまだまだスターターデッキから大きく変わっていない。守備力800ならフクロウ男の攻撃で倒せるが……油断できないな。


「ボクのターン、ドロー!」

「す、すみませんマジックカードぉ……出します」

『なにっ!』


――――――――――――――――

【憑依爆破】

 マジックカード(消費)

 追加コスト:あなたのフィールド上にあるゴースト・カードを1枚生贄にささげる。

 フィールド上にあるカードを1枚選び、それを破壊する。

――――――――――――――――


《来たぞ黄金コンボ》

《お 待 た せ し ま し た》


 観客の投稿が増えていく。デュエリスト佐代子の得意なコンボが来るようだ!


「佐代子ちゃん、このターン攻撃してくるフクロウ男を――!?」

「違います……”生前葬”を破壊します」

『……そうか! 生前葬の下にあるカードを特殊召喚するつもりだ!』



「生前葬が墓地に送られたので、特殊召喚……」


《キター!》

《これ大丈夫なの?》

《これを見に来た》

つづく

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ