始まりの物語その1
「あら?窓から音が……誰!?爺や!衛兵!えいへ」
「姫!このような場所から申し訳ございません。少しでいいのです。お話をさせていただきませんか?」
「……」
「お願いいたします」
「……わかりました。カーテンを少し閉めるので、隠れていてください」
「どうかなさいましたか!姫!」
「すいません虫が出て驚いてしまって……」
「いえ、その虫はどこですか」
「あ、いえ、その……もう退治してしまいましたわ。わざわざ来てくださったのに申し訳ありません」
「いえ、なにかあったらいつでもお呼びください。それでは!」
「もういいですわよ」
「お手数をおかけして申し訳ありません」
「いいえ。すごく刺激的で胸がドキドキしてしまいましたわ」
「私も……俺も、見つかったらどうしようかと……」
「まあ、お揃いですねふふっ」
「ははっ」
「こんなところまで一体どうやって……そもそも私が誰だかわかっているのですよね?」
「もちろんですマリー姫。ここまでは城の壁を登って参りました」
「まあ!城の壁を登ったなんてそんなことできるのかしら?本当?」
「もちろん。俺は嘘をつかないので」
「それで私になんのご用なのかしら?」
「お話をしに」
「どんな?」
「もちろん色々です」
「それはつまり……何か話したいことがあって、私のところに来たわけではないのかしら?」
「姫と話したいから来たのです」
「そのためだけにこの城壁を登って来たと言うのね」
「それだけの価値があるので」
「ふふっおかしな人ね」
「よく言われます」
「それじゃあそこの椅子にお掛けになって、私はこちらの椅子に座るわ」
「ありがとうございます。こんな高そうな椅子に座るのは初めてで緊張してしまいますね」
「私も城の人以外と話すのは初めてだから実は緊張してるの」
「俺はマリー姫と会えた時から緊張してますよ」
「おんなじですねふふっ」
「ははっ……名乗りが遅れて申し訳ありません。私はマナトと申します。18歳です。この国で冒険者をやっています」
「あら、私としたことが先に名乗らせてしまって……私はマリー・メロニアンです。18歳です。この国で姫をやっています」
「同い年なんですね。知りませんでした。なんだかとても……」
「どうしたの?」
「いえ、あまりにも気障っぽい台詞だったのでやめました」
「気になるじゃない。でも気にしないでおくわ。ねえ、マナトって呼んでいいかしら?」
「もちろんです。マリー姫」
「じゃあマナトは冒険者なのよね?私は滅多に城の外に出ることが出来ないの」
「それは息がつまりそうですね」
「ほんと、うんざりしてしまうわ。私が見れる外の景色はこの窓から見えるいつもと変わらない景色だけよ、今日はちょっと変わった景色が見えたのだけどね」
「それって俺のことですか?」
「ふふっそうね。それで冒険者であるマナトには、冒険の話を私にしてほしいのです」
「もちろん喜んでさせていただきます。といっても俺も冒険者になってまだ日が浅いのですけど」
「まだ若いものね。あなたも私も」
「それは、おばあちゃんが言うセリフですよ」
「まあ、やだ誰がおばあちゃんよ」
「ははっすいません。それではまずは俺がこの世界に来た時の話をしましょう」