プロローグその2
side マナト
俺が異世界に来てから半年がたった。
装備もなしに異世界に送られた時はどうしたものかと思ったが、色々あったけどなんとかメロニアンという王国にたどり着いて、一端の冒険者としてギルドで依頼を受けるようになった。それで今はなんとか生活できるようになっている。
幸いなことにと言って良いのかわからないが、見た目は地球にいた頃と変わっていないかった。年齢はわからないけど、見た目が変わってないならきっと同じなんだと思う。
地球では津田真人って名前だったんだけど、異世界では心機一転してマナトと名乗ることにした。ただ名字を失くしてカタカナにしただけなんだけど、気の持ちようは変わってくる。前世で誓った通りに、もう嘘はつかずに生きていこうと思う。
つまり俺、マナト18歳は、なんとか異世界のメロニアンで冒険者になれましたってことだ。
今日は冒険者としての仕事ではなく、メロニアン王国でパレードが始まると聞いて、町へ繰り出したのだった。
なんでも建国200年目のパレードらしい。随分と長い歴史を持っている国だ。
地球は西暦2000年ほどだけど、日本はよく知らないが、200年前の日本と言うと江戸時代なんじゃないか?200年と言うのは短いようで長い。
俺が異世界に来たタイミングでたまたま200年記念だなんて都合が良すぎるが、恣意的なものでも運命でもどっちでもいい。
悲しいことにまだパーティなども組めておらず、王国に親しいと呼べる人間もいないのでボッチなのだが、思う存分楽しもう。
♦
祭りを楽しみ始め時間が経った頃に、中央通りに人だかりが出来ていた。
実はいまいち何が行われるのかわかっていないのだが、俺もその人だかりへと混ざってみることにした。
それからしばらくの時間が経つと、歓声が奥の方から沸き始める。そちらへ目を送ると、神輿のようなものがやってくるのが見えた。
これはニュース等でしか見たことないが、ローマ法王のパレードみたいなやつだ。王様が国民に向かって手を振るあれである。
神輿が近づくにつれ、手を振っている王様が見えてくる。国に住みだして間もない俺は知らなかったが、王様は白髪が目立つ初老の爺さんだった。さらにその横に若々しい女性がいて、王様の隣で王様と同じように手を振っていた。こちらは王様に比べるとかなり若いが王妃だろうか?
その神輿が過ぎても、更にその後ろから別の神輿がやってきて、これまた上に乗っている男が手を振っている。齢は王様より一回り下くらいだろうか?流れ的には王子様だろう。
そこから同じように何個も神輿が過ぎて行き、それぞれに女性や男性などが乗っていた。パッと見だが、年齢順に見えたので、第一王子から順番にという感じだろうか。
そして最後の神輿に乗った女の子を見たときに俺は恋に落ちた。
そうとしか言いようがない状態だった。
美しい。
その言葉しかでてこない。
心臓の鼓動がうるさい。
他の女性も美しかったのだが、この女の子だけ何かが違う。
神輿が行ってしまう。
俺は懸命に神輿を、彼女を追いかけるのだった。
♦
あのパレードから1週間が過ぎた。
彼女の名前は調べればすぐに出てきた。現王の16番目の王女らしく。
名前はマリーと言うようだ。
だが例え名前が分かろうとも、俺はどこの馬の骨ともわからないただの冒険者だ。話すことはおろか、会うことすらできない。精々、催しで出てきた姫の姿を見ることができるだけである。
そのことでこの一週間、悩みに悩み抜いた。そして答えは出たのだ。
出たのだが本当にこんなことをしていいのかやはり悩んでしまう。
だが、自分の心には嘘をつけない。
この燃えるような想いはごまかせないのだ。
だから城に忍び込み、姫の部屋の窓を叩いた。