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はじまり
宇宙の声が聞きたくて たたずんでいた。
耳をすましても 手をのばしても
聞こえてはこなかった。
それでも 待ちつづけた。
幾日も 同じように
宇宙の声を聞きたくて たたずんでいた。
気づくと 近くに幻獣が来ていた。
視線を幻獣へと向けると 僕を冷淡に見つめている。
幻獣の唇が静かにささやく。
幻獣のささやきは静かすぎて 僕には届かない。
聞こえるようにと足を踏み出すと 幻獣は後ずさる。
僕との距離を縮めない。だが離れない。
「もう一度おしえて」
僕も静かにささやく。
幻獣が 静かにささやく。
次ははっきりと聞こえた。
ただ それに衝撃を受けた。
幻獣のささやきは 僕がずっと昔に忘れた事だった。
それを抱えていかなければ 僕は進めないと悟った。
幻獣は 北風と去って行く。
僕に背を向ける一瞬 少し笑ったようにみえた。
静寂に耳が痛む。
脳は ざわつく。
心がきしむ。
それなのに 聞きたかった宇宙の声が 聞こえた。
「光の射す方へ・・・」
ああ すべてが理解できた。
歯車がかみ合うように 僕の中のわだかまりが解けて 思考も細胞も回りだす。
僕はもう 宇宙の声を聞こうと待たなくても いいんだ。
僕は 行かなければならない。
その道は 険しくとも心踊るものだろう。
僕は 宇宙にいだかれ 静かに歩きだす。
行き先は知っている。
導かれるように
そう 光の射す方へ。




