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第十五話 続・戦車

晩餐会の前の着替え、今回は青と黒のローブで着飾るちょっと神秘的なダークな感じといったイメージ。着込む服は全て王宮からの提供で、それぞれ色によって意味合いがあるのだという。見事に一人では着れない作りになっているぐらい大きい被り物で背中も皺にならないようにきちんと伸ばしてもらう。


「…」


疲れてるのが目に見えて分かった。実際巫女さんはここに来るまで既に仕事をこなしてきていた。


「今日ベッドで休んでると、巫女さんの居る部屋が見えたんだ」


出し抜けに言ってみる。


「視界を同期させていたのて、それはこちらの不手際でした」


声に張りが無い。それがとても心配だった。


「元気ないですね。何か元気が出そうなら、なんでも言いますよ」


「何か言われたいためにやってるわけではないのです。お気遣いありがとうございます」


「本心は?」


「ユウキがもう全てを投げうって、空の彼方へ飛んで行ってしまえば。多分楽にはなれるんでしょうね、でも、それは許されないんです。私の心配はいいですから、今日のスピーチの原稿は覚えましたか?」


「覚えたよ」


「要約すると?」


「世界平和のため身を粉にして働きます」


「姿勢だけ分かればいいですから。人々は救世主を望んでる。その役目を果たすことが大切です。表面上だけでも。王宮の議会では既にユウキが元の世界に帰還した場合を考えて影武者の立役者を議論してる最中ですよ」


「大変だろうけど、頑張って欲しいですね」


「私は嫌ですよ。そうなったら、私はお役目御免です」


「そうなんだ」


「ええ」


そうなったらどうするんですか?そう尋ねようとしたが、喉元まで出かかってなんとか飲み込んだ。まるで他人事のような発言はもうするべきじゃない。


「どうして僕ならいいんですか」


「よく知ってますから」


「どうしてですか?」


「…そろそろ行きましょう」


この時、僕は巫女さんは僕の思っている以上に隠し事がある事に気付いた。


「今日は疲れたんじゃないですか。休んだらどうですか。一人でも大丈夫ですから」


「ありがとうございます。ですがお気遣いは無用です」



世界への扉も、同期されてる目も、彼を選んだ事も、彼女にとって最大の秘密だった。


彼女こそが、ユウキの人生を狂わせた存在だったのだ。

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