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《天へ至らんとする愚者の道》  作者: Aluluna
《プロローグ》
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f4xa-f-7a《繁栄と安寧》エリア

 「人は皆、夢を持ち、趣味に打ち込み、幸せを追い求めるべきである」


 私は眼下に広がる大勢の人の海に語り掛ける。

 コレは仕事だ。楽しくもない。

 全く、なにが悲しくて思考もせず理解した気になってのうのうと時間を浪費する糞共に説教をしてやらねばならんのだ。

 f4エリアで生活出来るのは約束された成功への道だと言うが、全くもってわからん。

 こんな腐りきった脳ミソで機械に毛が生えたような生活を送るのだ。地獄と変わらないではないか。


 「ここにいる人々は優秀な頭脳で気が付いているかもしれない。既に……時代は移り代わっているのだという事を。」


 f2エリアにある中央賢人会に招待されたからといってこんな所に来たのが間違いだった。なまじ人の求めるモノに合わせる癖が付いているのが良くなかった。

 私は貴様らが化石だの反社会的勢力だの好き勝手言うf8に居るんだぞと、そう言ってやりたい気持ちでいっぱいだ。

 どうせ今私が、「君達は人が生きる意味を考えた事があるのか」と問えば、このゴミクズは風に吹かれたかのように散っていなくなるのだ。どれほどそうしてやりたいことか。


 まあ、そんな事をすれば牢獄行きだ。流石の私も、思考を進めるならそれなりの環境を望む。


 何が反社会的勢力だ。まったく。

 そりゃ、真理が望まれるとは限らないのは当たり前だ。それを否定し、評価しないのは、歴史上何度も起こってきた当然の事だろう。


 だが!だからといって!危険性はさほど無いだろうが!


 というのが本音だ。

 奴らの政治に支障が出るのか、それとも自殺率を減らすためか。

 行き過ぎた科学で安寧を得た人類には、目指す目標が少な過ぎるのかもしれんな。


 そもそも、科学など、根本から無理があるのだ。

 結局大昔から解明されていないことは変わっておらず、人の思考に合わせて物事を解釈するばかり。いつしかそれは歪んで結果のみを求め、真理はどこまでも遠のいていく。


 哀れだ。まあ、人らしいが。

 求める物を手に入れることに躍起になってばかりだ。果てには無限のエネルギーだと?その前に貴様らが唱えた原則はなんだったのか。

 無限など都合のいいものがあるものか。どうせ文明は落とし穴に落ちて崩壊するに違いないな。


 まあいい。今はひとまず、この生産性の無い演説を終わらせるとしよう。

 帰ったらチョコレートをツマミながら、ワインでも呑んで一休みするのだ。







◆◇◆◇







 「おい、コーヒーとクッキーを出してくれ」


 「畏まりました」


 いつも思うが、この家事ロボットは優秀だな。

 声は人のそれと比べても違和感無く聞こえ、何より不機嫌にならないのがいい。

 女房ではこうはいかんな。

 あいつも仕事が減って喜んでいた。

 今や円満な家庭には必須と言われるだけの事はあるな……


 あたたかみのある木製のリビング。

 自然が減り植林事業の超効率化が上手く進んでいない現代では、木製の建造物というのはそれだけで富裕層の証だ。


 最新の空調や家具は見事に木材のそれと調和し、完成された配置をしている。

 床も壁も綺麗。そもそも最近の家具は埃をほぼ出さないが、埃1つない清潔な家だ。

 もちろん、家事ロボットのおかげである。


 「ふぅむ、最近はテレビもつまらんな……」


 目下、最近の悩みは、女房と関わる時間が少なくなっている事である。

 だいたい家事ロボットのせい……おかげ……


 いやいや、ともかく、結構な大問題なのだ。

 なんでも、家事ロボットで円満になったはいいが、お互い夫婦でいる意味がわからなくなって離婚した家もあるらしい。

 なんとも難しい話だが、ちょっとこれは余所事じゃないので、笑い話にするわけにもいかない。


 「とは言ってもだなあ……あいつは趣味だと言って部屋にいてばかりだし……」


 なんだか色々な趣味を始めているらしく、殆どリビングに出てこないのだ。

 今までそういった事には口出しして来なかったもんだから、声も掛けにくいし……


 「うーむ……今度……そう、今度、聞いてみるか……」


 緊張するので後回しである。

 優れた社会人にはその場を凌ぐスキルも大事なのだ。


 うむ。

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