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《天へ至らんとする愚者の道》  作者: Aluluna
《プロローグ》
1/3

f32xa-b-8d《罪の落とし子》エリア-下層

 顔を上げれば、冥い空が僕を押し潰そうとしていた。

 十年以上、見慣れた空だ。

 どこまでも、いつまでも、闇の広がる空。

 星や太陽と言うものはそこに無い。それは雲なのか、それもわからない。距離も測れない、闇。


 「変わらない……なぁ」


 昨日は一体、なんの為にあったのだろう?

 今日は一体、なんの為に過ごせばいいだろう?

 明日は……果たしてあるのだろうか。


 答えの出ない問いだ。

 答えなんて、きっと無いのだろう。


 明日があるのか、も。

 僕にはわからないことだ。


 「君は今、光に出会えているのかな」


 これも、知る術の無いものだ。

 僕はそれを、幸せを祈るしかない。


 だが、知らぬものを祈れるだろうか。


 今日の天気は雨だそうだ。

 今回は何処に落ちる(・・・)だろうか。

 大地には、穴だらけの石柱が連なっている。

 それが唯一の目印。

 唯一、世界が無でないことを証明する、物体(オブジェクト)


 「今日は、誰が旅立つ(・・・)んだろうな……」


 この地にもまだ、人が残っているのだから。

 常闇の空が唯一降らせる雨は、その石柱は、多くの人々の命を奪っていったらしい。

 きっと今日も、何処かで誰かが死んでいくのだろう。


 それは、救いか。


 或いは、悲劇か。


 遥か昔、世界が光に満ちていた時代には、人は太陽の光を浴びなければ気が狂うと云われていたらしい。

 だとすれば、皆の死はきっと、救いなのだろう。


 そうでなくては。


 「僕は、皆は、何も信じちゃいないんだ」


 歴史は育ての親に聞いた。

 それは酷く大雑把で、物語にも思えなかったけど。

 ただ、科学を否定され、信仰に縋った人々は、その神をも信じられぬ程の絶望に押し潰されたのだ。

 それだけは、実際の出来事なのだろう。


 「でも、何かを信じているから、生きてるんだ」


 矛盾しているそれが、行動の示す真実だろう。

 僕は何を、信じているのか、わからないけれど、何かを。きっと。


 石柱は天罰のような死の象徴であると同時に、希望の象徴でもある。

 人が希望を見いだせるとすれば、たったひとつ変化を与えてくれる、それだけなのだから。


 「…………」


 空を見る。

 変わらない黒がそこにある。


 ここから雨が降るなどと言われても信じられないが、何度もそれを見てきたのだ。


 きっと、この空の上には、何かがあるのだ。


 希望。


 これが、唯一の希望。


 空に挑むこと。

 大地を抜け出すこと。


 天上の世界を夢見て、だがしかし、殆どはそれを夢想に終わらせる。

 希望を否定し、無為を生きる。

 幾らかは種の保存を試み、食いでを減らす為にそれを殺す。

 大地に希望など、もはや無い。

 希望。その存在自体、机上の空論のようなもの。

 この地には絶望が拡がるのみ。


 けれど。


 「君は……君は今、空が見えているかい?」


 僕は、僕だけは、希望を見なければならない。

 僕だけは、希望から目を逸らしてはならない。




 全ては、君の為に。

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