表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
永劫的な少女?  作者: 緑神江
5/8

第五話 事件解決?

『唖然』言葉が出なかった、理解できなかった、体が動かなかった。

 それもそのはず、今は爆発音が発生してから約四秒後の世界。

行動を起こさなくて当然、考えなくて当然。

人間の頭は理解の範疇を超えた事柄が起きると、一度クールタイムを挟むようにできているのだ。それが常識、であり人間味でもあり人間なのだ。

でも……でも……


 わずか四秒その刹那的四秒間を経過した

先に動けるものが、いるとするなら。

『啞然』言葉が出ない、理解できない、恐ろしく人間味がない。裏の世界の住人とやらじゃなければ咄嗟に動ける訳がない……

恐怖の対象ともいえる理解しがたい存在、それが……

「楽さん! 何だかやばいかもです。外行ってみましょう」

爆発音から約五秒後

僕は『寒河江 九』純粋無垢な少女の後に着いて行く。


 まず初めに目に付いたのは崩壊した商店街ではなく、特にこれ言って変化のない商店街。

爆発はしてないみたい、だった。

 嫌な雰囲気を常に出し続け、この世のものとは思えない閉鎖的な空間。

閉鎖された空間。

世界から隔離れたかの様な、この世界に存在していないかのような。

異質で異常で狂った商店街に変わりはない。

が、その中に一つ違和感しかないこの空間にある事、存在する事すら違和感を覚える……

物体が、

たとえば 僕の前に

たとえば 九の前に

たとえば 家の前に

たとえば 空中に

たとえば 商店街の中に

たとえば この世界の中に

存在している。


「ワームホールです……か?」

「そうとしか、言えないよな。これ」

「……」

「……」

 いや、いや、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌。


 これをそういう物として見るっていうのは……つまり、そういう事じゃあないか。

この摩訶不思議な状況を()()()って神隠し的な何かも、九のいつの間にか居たってのも。

消えた近所のお姉さんも……全て実際に起こった、現実。


 現実? 現実って何? 現実って何ですか?

今僕が体験しているのは、目の当たりにしているのは現実なのか?

何をしているんですか?

学校は? 授業は? 部活は? 塾は? 休日は?

友達は? 妹は? 両親は?

受験生の僕は今何をしているんですか?

何となく、部屋から出てみる。

何となく、家のドアを開ける。

何となく、自転車に乗ってみる。

何となく、遠くへ行ってみる。

何となく、商店街へ入ってみる……

その結果がこれですか?

「ありえない、だろ」

苛立ちを込めた様な声で九に話しかける。

「私も信じたくはありません。けどこれは……」

「そうとしか、言えないか」

 僕らの前に、突として姿を表した物体。

これをワームホールと言わずして、何をワームホールと言うのだろうか。

丁度九の身長ほどの渦、又は小さなブラックホールとでも表現すれば良いのだろうか。

だとすれば、まずい。

神隠しとは違く、これはもう否定の仕様がない。僕の目の前に存在している、確実にある

3Dホログラム等の可能性もあるかもしれないが、まず映写機が見当たらない。

それらしい物は一切見当たらない。

それに、第一誰が何のためにそんな事するんだよ……


「九、『これ』を現実として捉えるには少し時間がいるかも。ちょっと部屋に戻ろうぜ

危険かもしれないしな」

「ええその通りです。戻りましょう戻りたい。確かにここに居続けるのは、危ないかもですね」

突然、寝床としている家の前に現れた渦、元いワームホール。『その』物体に背を向け僕らは部屋へと戻った。


 僕は立ったまま壁ににもたれ掛かる、九はあの! 事務椅子に呑気に胡座で座っている。

「お前それ、呪われた椅子とかじゃなきゃ良いけどな」

「はい? 呪いなんてものはありませんよ? 私そういうの、信じない派です」

 神隠しだ何だ言ってたくせに……

「まぁそうだな、お前信じない派だったよなうんうん。それは置いといてだ、なんだよあれ」

「知らーなーいです」

「知ってたら話してますよ、何なんでしょうねあれ訳がわりません。お手上げです」

「異口同音だよ、話し合い終わり」

「……」

「なんだ、本当に知らないのか?」

「知りませんよ! 人を広辞苑みたいに勝手に思わないでください」

「広辞苑だと分かるのか!?」

「あぁ……間違えました幻獣辞典でした、すいません」

「――知らないなぁそれ。小学校の図書館の奥の方に置いてそう」

「何を言うんです! マルゲリータゲレロさんのしっかりとした文学作品なんですよ!」

「マルガ、リータな」

清々しいまでのドヤ顔、最高……

「……何で知ってるんです」

「その作者は結構有名だろ、ほら砂の本とか、エル・アレフとかな」

「それは、なんとか〜ボルヘスさんの作品じゃありませんでしたっけ」

「あれ? 」

「んー?」

「…………」

「じゃなくて! 現実逃避もいいとこですよ楽さん『渦』のよく分からないあの物体の話をしましょう! どんだけ今の状況が嫌なんですか!」

「分かった、分かったよ。ふざけが過ぎた、ええと……じゃあまずあれなんだと思う。 本当に根っから芯の意味で何なんだあれ?」

「またそこからですか、簡単ですよ

『よく分かんない渦』ですかね。逆に言うとそれ以外の表現方法が分かりません。五里霧中って感じ……話し合いがとても難しいです」

「またまた、異口同音だよ。『あれ』が何なのかは分かるんだよ、想像はつくんだよ。

分かってはいるけど、全く分からないんだ」


「もし、もしもだ。この摩訶不思議な状況を一度完全に信じきったとしよう。

神隠し的な何かも神隠しと捉えよう。

だとすると――この空間からの脱出経路と見るのが一番自然だよな」

「あ――」

事務椅子にあぐらをかいている、九が低い天井を見つめる。

「な、る、ほ、ど」

「早い、ですね」

「ん? 何が? 」

「いえいえ 、なんでもありません。気にしたら負けです!」

 天井を見つめたままの姿勢で

まるで純粋無垢な少女であるかのように。

九は無邪気に笑う。

「じゃあ楽さん『あれ』をそういう物だと

仮定して。あれに入る事は出来ますか?」

「無理……かな、今はまだ仮定の段階だし。

多分、この先もずっと仮定なんだろうけど。

まずは、あちらからのアクションを待つのが定石なんじゃないか」

「でもでも、楽さん『あれ』を脱出経路と仮定してしまうと事は思ったより深刻なのです。遅かれ早かれ『あれ』に入ることになります……」

「それに、私は『あれ』はもうアクションは起こさないと思いますよ。

多分、脱出経路って迷路同様()()()()()で役目は終わってませんか?

 後はそこに存在していればいいんです。

ただ置物のように存在する()()の物そう思いませんか?」

「それは――ぐうの音も出ない正論かもな」

「でしょ!」

「でも、一つだけ間違えがある。

脱出経路っていう表現が悪かった……

仮にあれがある一点と一点を繋ぐワームホールというのならば。あちら側、ワープした側も考えなきゃいけないだろう。

AからBに。BからAに。何かが送られてくるってのは、ありがちな奴だろう? それはアクションって呼べるんじゃないかな」


「でもそれは、ワームホールを使った

アクションであり。ワームホールはそこに存在しているだけです、あくまでも……」


「確かにそれはそうだな」

そうなのか? あまりツッコまないけど。

「でしょ!」

「……分かった。でしょはもういいからさ。

この話の着地点ってどこなんだろうね? 」

 僕は、胸の前で手を組み天井を見る

「えーそれを言われるとお困りするなぁー」

九も、同じく頭を傾げて天井を見上げる

「『あれはなんなのか』これがこの話の題材だよな」

「そうですね、それです。それ」

「でも今の俺たちじゃ。どう頑張っても仮定止まりで、あれから何かが飛んでくるぐらいの事がないと決定ずけられ無いよな……」

「そののの通りです」

「放置かな、一旦は近づかない。それでいいよな」

「了解です! 餓死しそうになったら飛び込みましょう!」

「いいね! 決定!」

可決した……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ