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永劫的な少女?  作者: 緑神江
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第四話 否定すべき少女?

 ではでは、ガクガクさん教えましょう

何故私達に未だ救助が来ないのか。

何故ここには誰も人っ子一人として人が来ないのか、それは俄には信じ難い事が私達の身に起こっているからなのですよ。

楽楽さん、いえ学学さんでしょうか。

その方が某公共放送機関ぽいかな? 」

「スルーで」

「うい」

 あの騒動、何て言い方をするのは少し拡大解釈し過ぎかもしれないが。

ともあれ僕らは今晴れでもなければ曇りでもない、夕日の色だけが薄く通る商店街の中で九のとんでも発言から僕達の会話は始まる。

「えーと、楽さん。多分ですけど……

ここに居ても救助何て来ませんね。救助所か人っ子一人家族や友人でさえここには到着出来ません」

 九は、友達とカフェで雑談でもするかの様に、大きくねじ曲がっているこの状況に何一つ疑問を持っていないかの様な。

少し不安感や不信感それに危機感に喪失感を覚える様な

表情で、トーンで、九はそんな事を言う。

「……それは何で?」

「『なんで』なんで、と言われると返答にお困りするなー。ここがそういう場所であり。

ここがここであるから、理屈や根拠とかじゃないんですよ。それ以上でも、それ以下でもなくここはそういう場所でしかないんです。

ここだから出れない、ここだから誰も来ない本当は説明はそれだけで十分なんですよね」

 淡々と説明口調で話し続ける。

表情に変わりは無い。

「いやいや、分からん。具体性に欠け過ぎて全く理解出来ないんだけど……」

「具体的な説明でないと理解できない、と

やっぱりそうですよねー 私とても苦手なんですよね、ありのままに事を説明するって。凄く本来より内容が薄く捉えられる気がして。今の鬼気迫る感が全く演出出来ないんですよね」

「だからなー 人付き合いも苦手何ですよ。

私のトークスタイルってトーテクって本筋から外れた話を長々と話すっていう。

自分の思いを伝える――とか向かないタイプなんですよね。話し下手と言いましょうか。後々何喋ってたんだわたしーってなっちゃう様な」


「それは、凄いトークテクだな。

話が脱線する速度がその高度なテクニックを物語ってるよ」

「楽さん……集中力が他界しました」

「早いんだよ!」

「……」

「……」

 兎にも角にも、ひとまず九から現状況を

説明してもらわないといけないので。

「分かった、じゃあそのトークテクだかで良いからさ。簡潔にかつ分かりやすく言ってくれよ頑張って理解するし。

これでも希望的観測は得意な方なんだ、聞いて悪い事は何も無い」


「おけおけ、じゃあ蟹江楽がもてる全ての力を使って希望的な解釈をしてよ。

そしたら……何か変わるかもしれない」

 九らしくない含みのある物言いで僕に話しかけてくる。

「とりあえず、言葉を選ばずに説明するとなると、」

いかにも考えてる様なジェスチャーを取り肩を揺らす。

()()()って知ってますよね?

人生で、1度も有効活用しないであろう単語なのに一般常識とまで上り詰めたあの単語。

それをまさか使う日が来るだなんて――人生分かんないもんだなー」

 うんうん、と胸の前で腕を組み頷く九妙に様になっている。

「とまあ、このような感じで。私たち神に隠されちゃいました」

「……現代社会からハブられました、とさ」

「……」

 当たり前だ。希望的観測だなんだ言っていたが、急にこんな妖怪変化的な事を言われて返す言葉を所持してる人類などいない。


また、これを聞き。うんうん、とそれを

鵜呑みにできる人類なんて皆無に等しいだろう。でも居る、目の前に僕の前に存在する 非常識的な事をあたかも常識かのように捉える、非常識な存在が確認出来る。

「……もしこれが本当だと仮定すると、

いやいや、おかしいって。

これを現実と仮定する事自体おかしい。

仮定するに値しない、現実として扱う様な――物じゃないだろう。フィクションの世界だけだそれを引っ張り出して良いのは。

正直がっかりだよ、『現状の実態』とやらを中々に期待してたんだぞ」

 でしょうね、とでも言わんばかりの目でこちらを見た後大きなあくびをしながら何故か

正座になり左右に、まるで自らがメトロノームにでもなったのように揺れ始める

(人間の重心はそこまで都合よく作られていないので揺れていると言っても微振だが)

「……まぁそう言うとは、流石に思ってたけどねーこれ以外に説明の仕様が無いんだよ。そりゃまあ詳細不明って訳じゃないから、 根拠だの理由だのは説明できるけど……

まずはこの神隠しされちゃったよーって言う状況を把握してもらわないと……」

「話が進まない」

僕が、九の台詞を遮った。

「せーかーい」

実に楽しそうに僕をジロジロと見てくる。

「そうだな……分かったじゃあ、百歩譲ってそれが本当の事だとしよう

だとしたらこの摩訶不思議も納得出来なくは無いしな……」

「だとするとこれからどうなるんだ?

この空間から出れずに飢え死にでもするのか? それとも……何かしらの妖怪とやらが助けに来てくれるとか?」


「またまたーそうやって結果ばかり求めるのは馬鹿の証拠ですよ?」

まったく……、と一息

「焦らずいきましょう楽さん、時間まだ……あ」

「ない」

「そうでした訂正します」

 気分屋よろしく酷い会話だ、まるでこの

状況を危機としてないような……酷く酷く

不安を煽られる。

「分かりました楽さんの気持ちは十分

分かります。でもでも確かに結果は気になるとは言え、推理小説の結果だけ見ても何も物語としては入ってこないでしょう?

犯人の動機や殺害方法、殺害状況に死後変化等の説明がない物語なんてありませんよね?」

「まずはそこから、じっくり説明している時間は……ありませんが。しっかりプロセスを踏みましょうでなくては、こんな魑魅魍魎な話頭に入って来ないでしょう?」

 饒舌家よろしく

説明口調で決められた台詞を話すNPCかのように、小学生には似つかない饒舌さで会話を進める……

「まず! 私が現状況を神隠しだと、判断した理由を述べましょうか」

「うん」

「理由1 助けが来ない」

「……うん、そりゃまぁ」

そうだけども……

「いやいや楽さんもう私達1日と4時間位はここにいますからね、ほんっとに訳が分かりません。ここまで他人と長い間同じ空間にいるという経験は初めてです、疲れました」

「もう嫌」

「死にたい」

「……」

 それについては、僕は何も言えない。

「まあまあ愚痴はこれぐらいにしておいて、最後の理由です」

「早っ!」

「あははは」

幼気な顔で本当に楽しそうに心の底から笑う。

「言うと、思った……」

「笑うな、笑うなよ。洒落になってない。

何がしっかりプロセスを踏みましょうだ……人間を、舐めるなよ」

「いやいや楽さんそれは、決めつけが限界突破してます。『質より量』ですよ、楽さん」

「逆だよ」


 実はホントに期待してたんだけど、な

この訳の分からない状況の唯一無二の光だったんだけど……すがりついていたのか、情けないな、なんか。


「ではでは! 最後の理由です。過去に実例があります」

「なるほど……それは、その理由は

この状況を神隠し、として扱うに当たって『理由1』よりも参考文献としては中々の効力を持つ気が、する……」


「何ですか、その微妙な反応は。ここでドーっと来るはずでしょう、楽さんもっと楽観的にお気楽で能天気に生きましょうよ。

こんな状況なんですから何かしらの理由を

鵜呑みにしないとやっていけませんよ?」

「んーまあ確かにそれはそうかも。んじゃ何なんだ? その実例とやらは。弟でも神隠されちゃったの?」

「はい……そうですご名答です。よく分かりましたね、当てられるとは私も思ってませんでしたよ……」

あれ? やらかした? 当てちゃったよ……

「嘘ですよ、こういう事は簡単に信じますね楽さんは、あははは」

 大きく口を開けて高笑い

こいつ将来モテそうだな……

「本当に消えたのはみーんなに慕われてた近所のお姉さんです」

「消えた?」

「はい、消えました。消て無くなりました、いえ『消えて亡くなりました』かな?」

「その言い分だと未だに出てきてないって事なのか?」

「はいそうです、もう40年前の話みたいですけど……」

「ん? ですけどって、聞いた話なのかよ」

「ええその通りです。実は私も半信半疑だったりして、」

「『隣のクラスのあいつ、もう5人とやったらしいよ』みたいなもんか……」

「……」

殺すぞ、と言わんばかりの表情でこちらを

睨みつけてくる。

「殺すぞ…」

言われた!言われてしまった。

まさか、嘘だろう? 本当に言われるとは、最悪だ……

ギャップが凄すごくて怖い! 九は怖い!


「ともかく! そんな感じです昔からの言い伝えと言いましょうか、あんだけ大口叩いといて私も実は半信半疑だったんですけど」

「ですけど?」

「これは、私が初めて楽さんに会った時の事です。私はあの時暗闇に一人立ってましたよね、あれ私『寒河江 九』は()()()()()()そこにいました」

「……」


 もう、この領域まで来てしまったのか。

これを鵜呑みにしないとやっていけない領域まで……正直九が夜この中にいたのは僕と同じくここに夕方から閉じとめられていた、

か家出少女がここに居座ってて、だとか。

比較的現実的な事訳があっての事だと――

思っていたのだけれど。


「でもっ、それっておかしくないか。いや色々おかしいのは分かっているけど、ご都合主義よろしく考えないとすると……

僕の場合自転車を漕いでいたら偶然ここに流れ着いた『だけ』だ言ってしまえば運が悪かった。でも、九の場合何かここに居ることが必然の様な――絶対的に運命られているかの様な。もし九の言っている()()()()()()ここに居たってのは回避仕様が無いじゃないか。だって僕の場合は……」

「楽さん!」

両手で僕の肩を強く握り僕の言葉を遮る。

「論点ズレズレです。論点が泣いちゃってます」

「……まぁ確かに、今考えるべき事はそこじゃ無いんだろうけど」

 良いんだろうか、これで。

単純な思考放棄してしまって。

何か繋がる気がするこの摩訶不思議な状況を説明できる何かに……無駄っぽい、だから考えないと深く深く思考しないといけないのかも――しれない。

この違和感と矛盾点だらけの空間をそんな単純な理由だけで、片付けてしまって良いんだろうか……

この違和感と矛盾点だらけの存在から

そんな単純な理由で目を背けてしまっても良いんだろうか、

「……楽さん? 人が目の前に存在してるんですし会話をしましょう。と言うか、して下さい気まずいです。勝手に何処か違う世界へと行かないでください」

「あ――確かに。ごめん考え過ぎてた」

「えっと、何だっけワープしてここに来たんだっけ?」

「え? そうですけど……吹っ切れました?」

「うん、もう僕達は神隠しされてるとしか思えなくなってきたよ」

「……だとしたら話しやすいです」


 ここから僕達は、各々が持っている疑問点について解釈を付けていく作業。信じるとは言ったものの不明瞭過ぎるこの状況についての解釈。

そして何よりも、ここから()()()()()()()正直この摩訶不思議な状況の解釈も、九のワープ現象さえも、消えたという近所のお姉さんも。

ここから出てまたいつもどうりの日常生活を送れればどうでもいい。


 そこは満場一致だった(2人だけど……)

そして、ここからどう出るかそこに重点が置かれ会話は再び始まろうとしていた。

結果、始まらなかった。

結果、始めさせてくれなかった。

結果、始めようという気持ちまで失われた。

結果、鼓膜を突き破るかの様な爆発音と共に僕らの思考は消え去った。








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