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院長の壁~第4話~

その日の夕方

林は、手術室の中にいた。肝臓がんの開腹手術のため、長くかかり、既に5時間はかかっていた。


林「うーん、かなり腫瘍が広がってるわね、これはいずれ他のところに転移してもおかしくないわね、メス」


男性助手がメスを渡し


助手「どうします。閉じますか?」


林「私に閉じるという言葉はないの、取るわよ」


助手「分かりました」


一時間後

無事手術は成功し、ゆっくりと白衣に着替え部屋に戻っていった。するとそこには、高田の姿があった。何故にこの部屋にこの女がいるのか、不思議だったが、驚く暇もなく


林「何してるの?」


高田は驚きながら振り向き


高田「すみません、大城さんから先生は今手術中だと聞いたので、ここにいれば大丈夫って言われたもので」


林は心の中で、余計なことを言ってと思いながらも


林「まぁ良いわ、それよりあなたも知ってるけど、私は手術後で疲れてるの、聞きたいこのがあったら手短にね」


高田「分かっています。先ほど、院長の山口先生から話を聞きましてね」


いずれ山口院長には話は聞くだろうと思い、さほど驚きはせず


林「へぇ、で、何か収穫は得たの?」


高田「いえ、聞いたのは次期院長候補に岡部先生を指名していたことしか」


林は驚いた。今の言葉は絶対に嘘だと思う。何故なら確かに岡部は自分で指名されてたことを言っていたが、それは真っ赤な嘘だと信じ、彼を殺したわけだから、絶対に嘘であると思い


林「嘘よ」


高田「はい?」


林「そんなの院長が勝手に言っている嘘よ」


高田「どうして嘘だと?」


林「それは言えないけど、あの男に院長なんてなれるはずがない、だって女癖が悪いのに院長になる資格なんてないもん」


高田「そうですか、しかし院長の言い方だと、決定事項のように言ってましたけどね」


林「まぁいいわ、今疲れてるし、何も言いたくない、帰って」


高田は部屋を出て行った。あの先生何かを隠していると思い、病院の中を歩いていると、向こうから西蔵が走ってきた。


西蔵「高田さんここにいたんですか、探しましたよ」


高田「どうわかった?」


西蔵「えぇ分かりましたよ。あの外科部長先生、とても評判悪かったみたいですよ、内科だけならともかく、外科の医師や看護師にもとてもじゃないほど悪口言われてましたよ」


高田「例えばどんな噂?」


西蔵「えっとですね、一番ひどかったのは内科の話は基本禁止とか、手術の執刀医は基本自分で、他の医師は助手とか」


高田「まるで独裁国家ね」


西蔵「だから、あまりよく思っていない人たちがほとんどでしたよ」


高田「なるほどね、ますます気になってきた」


西蔵「あっそれと、院長の山口さんから聞いたんですけど」


高田「それは私聞いたからいいわよ」


西蔵「あっいえ、恐らく高田さんの事だと思うんですけど、女性刑事に言い忘れてたことがあるって言っていて」


高田「私に?、なんだろう」


西蔵「実は、以前山口院長は林外科部長にも、院長にならないかと勧めたそうなんです」


高田は一瞬目を輝かせた。今の言葉はあの林が嘘だと言い続けていたのと辻褄が合うからだ。でも気になる点がある。なぜ山口院長は岡部先生に院長の座を譲ろうとしたのか、高田はそう思い


高田「でも、何故林先生から岡部先生に変えたの?」


西蔵「それにはちゃんとした理由が」


高田「なに?」


西蔵「実は、大きな事件が関係してあるんです」


高田「事件?」


西蔵は一冊のノートを取り出した。そこには一枚一枚に新聞紙が張ってあった。


高田「こ、これは」


西蔵「この病院創設して初めての医療ミス」


高田は驚いた口調になった。それはそうだ。こんな事件聞いたこともないし、ましては扱ったこともない。


高田「そんなことが」


西蔵「えぇ、まぁ高田さんが驚いても無理ないですよ、だってこの事件、このとある人の圧力で一切報じなくなりましたもん」


高田「圧力?」


西蔵「えぇ、林外科部長です」


高田「やっぱりね、その事件詳しく教えて」


西蔵「はい、この事件はですね・・・」


???「あの」


二人が振り向くと、そこには内科看護師の室田が立っていた。


高田「あら室田さん、どうかされたんですか?」


室田「実は気になったことがあって」


高田「気になったこと?」


室田は頷いて


室田「はい、岡部先生の最後の電話で気づいたことがあるんです」


高田「何?」


室田「これ別に勘違いだったらいいんですけど、テレビの音が聞こえたんです」


西蔵「テレビの音くらい、するんじゃ」


高田は西蔵の口に軽く手を出し


高田「まって、でそれで」


室田「あの声とナレーションだと、私分かったんです。さんま御殿です」


西蔵「さんま御殿って、明石家さんまの?」


室田「えぇ、おかしいなって思って、だって昨日は木曜日ですし」


高田「確かにおかしい、さんま御殿は毎週火曜日なはず、ということは」


西蔵「ということは?」


高田「あれは録音、ねぇ室田さん」


室田は少し声が裏返りながら


室田「はい」


高田「今週の火曜日でもいいから、岡部先生の部屋に入った人だれか知らない?」


室田「うーん、分かりません、でも思い出したら連絡します」


高田「お願いね、警視庁捜査一課の高田警部って言えば分かるから」


室田「分かりました」


高田と西蔵は、翌日の朝まで警視庁にいて、西蔵から林が起こした事件を聞くことが出来た。

事件は一か月前、当時胃がんで入院中だった尾川真尋という若い女性が、林が執刀した手術で誤って血管部分を切ってしまい、当然大量出血で尾川は死亡してしまった。当時マスコミは手術直前に大量の飲酒をして手術を執刀してしまった為、医療ミスが発生してしまったと大々的に報じたが、林の一方的な圧力のため、報道は自粛ムードになってしまったという事件だ。

高田と西蔵は尾川真尋の実家がある東京の三鷹市に向かった。出迎えてくれたのは真尋の父親と母親だった。高田と西蔵は居間へと案内され、四人は畳みに敷かれてある座布団に座った。まず口を開いたのは西蔵だった。


西蔵「あの、娘さんの事なんですけど」


父親「どうやら、あの病院で自殺騒ぎがあったらしいじゃないですか」


高田「それで、林外科部長先生が関わってる可能性がありまして」


父親と母親は向き合い、すると父親は拳を握りしめながら


父親「あの女は最低です、娘が死んだときだって、自分の飲酒が原因だって認めればいいのに、金を渡して、最善を尽くしましたと言って、まるで娘の死は無かったかのように言われ、とても腹立たしかったのを覚えています」


高田「そうですか」


父親「あの女を逮捕してください」


高田「全力を尽くします」


父親「ありがとうございます」


両親二人は泣いていた。高田は決めた。あの女を必ず逮捕すると、証拠をそろえれば、すると、高田の携帯の電話が鳴った。






第4話終わり

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