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殺意のペン~第4話~

更けた夜、佐久間は、自宅で「殺意のメス」の執筆に励んでいた。ずっと考えていた完全犯罪の方法が遂に完成した。

あらすじは、とある女医があることを理由に脅されており、その男を殺す話、完全犯罪はロープを首に巻きつけて、ルンバに付け、動くと同時に首が絞まり、死亡する手口、これだとアリバイは確実、あとは自殺に見せかけてしまえば、こっちのものという話

良い話だと、人一人殺した自分が言う事かいと、自分の中でツッコミを入れていた。すると、家の呼び鈴が鳴り、家政婦が出ると、女性の声だった。佐久間はすぐに察した。高田だと、年配の家政婦緑山珠樹が


緑山「先生、警察の高田さんという方がお見えです」


やはりだ、よし、対決のお時間ですか、そう思った。


佐久間「お上げして」


緑山「分りました」


しばらくすると、高田が部屋に入ってきた。


高田「先生、突然すみません」


佐久間「急にどうしたんですか、こんな夜に」


高田「実はお話したいことがありまして、あっその前に」


高田は鞄の中から、一冊の本を出した。それは「殺人の列車」だった。


高田「サインください」


佐久間は驚いた。いきなりサイン?!、どんな神経してるんだこの刑事、そう思いながらも、本にサインをした。


高田「ありがとうございます」


佐久間「で、高田さん、話というのは?」


高田「実は今日、大川さんのご自宅に行きました。家政婦の方と編集者の方とお話をしたのですが、どうも今日朝の大川さんの行動が不自然だったらしく、とても記憶に残っていると」


佐久間「へぇ、気になりますね」


高田「恐らくですけど、大川さんはきっと誰かと会う予定だったんです。だからあの別荘に訪れた」


佐久間「なるほど」


高田「それに、編集者の方が言ってたんですが、突然約束をドタキャンされたと」


佐久間「ドタキャン?」


佐久間はそれは知らなかった。何故なら大川はそんなこと一言も言ってなかったからだ。


高田「はい、そんなこと一度もしない人だったのに、驚きがさらに増したそうです」


佐久間には分った。この女、私を疑っているなと、そう思ったのか、つい口から


佐久間「面白いですね、あなたは私を疑っているのですね」


高田「わ、私そんなこと」


佐久間「自分には分るんですよ、あなたの考えてることぐらいね」


高田「私はそんなつもりは」


佐久間「とりあえず、私は忙しいんです。お引き取りを」


部屋を出ようとする高田、だが、後ろを振り向き


高田「あと一つだけ」


佐久間「なんですか?」


高田「検死解剖の結果、死因は即死でした。それに、一発で仕留めてましたから、男性の犯行に近いということです、それでは」


佐久間は高田が何を考えているのかさっぱりだった。だが、今の質問には必ずしも意味がある。自分への挑戦状だ、そう思っていた。

高田はそのまま、部屋を後にした。しかし、このまま帰るわけにはいかず、緑山に話を聞くことにした。


高田「つまり、午前中は休みだったと」


緑山「そうです。午後からこちらに参りました」


高田「そうですか、それで佐久間先生に少し変わったことはなかったですか?」


緑山「そうですねぇ、特には」


高田「そうですか、ありがとうございます」


高田はそう言い、家を後にした。

場面は変わり、早朝

警視庁で考え事をしていた高田に、西蔵がやってきた。


西蔵「高田さん、一体誰を疑ってるんですか?」


高田「一番怪しいのは、あの作家先生、でも一番引っかかるのは、何故直木賞のトロフィーを凶器に使ったのか、だってそれがきっかけでブレイクした訳なんだから、それで人を殴り殺すなんて、なんか気になるのよね」


西蔵「あっ」


高田「なに?」


西蔵「いや、さっき大川さんの出版社に行ってきたんですよ。そしたら、大川さん明日あたりに、マスコミを集めて緊急の記者会見をするって言ってたらしいんですよ」


高田「会見?、何を話すつもりだったんだろう」


西蔵「分りません、でも今日はいなかったんですけど、詳しいことを知っている人物がいるらしいんです」


高田「誰?!」


西蔵は必至な声で言った高田に、ただ教えるしかなかった。


西蔵「恋愛作家の樋口強志朗です」


高田「なんで恋愛作家が?」


西蔵「昔からの親友らしいですよ、ほら樋口先生が恋愛作家でブレイクする前に、推理作家で直木賞寸前までいった人ですから」


高田「なるほど、で今日はお出かけかなんか?」


西蔵「えぇ、山中湖近くにある別荘にいるみたいですよ、家族で」


高田「分かった」


高田はそのまま、部屋を出て行った。西蔵は突然の事で、どこ行くかは聞けずじまいだった。

山中湖でのんびりしていた樋口は自然の音、そして鳥の鳴き声を聞きながら、小説の執筆にあたっていた。今回は警察の内部の恋愛事情を描いた作品、タイトルは「恋の手錠」、もうすぐ恋のラストシーンにまでたどり着いていた。しかし、突然の呼び鈴、家族は今日は富士山に登っている最中帰ってくるにしても早すぎる。そう思い、インターホンの電話を手に取った。


樋口「どなたですか?」


高田「あっ、警視庁捜査一課の高田と申します」


高田?、捜査一課?、自分何かやったかと頭の中でめぐらせた。だが、思い当たる節はない、そう思いつつも玄関の中を恐る恐る開けた。そこには、スーツを着た女性が立っていた。樋口は疑心暗鬼になりながらも、部屋に入れた。そして高田に、お茶を差し出した。


高田「そんなのいいですのに」


樋口「いや、折角遠いところから来てくれたので、で、私に用とは?」


高田「実は、大川先生の事で少しお聞きしたいことがありまして」


樋口「あぁ大川君ね、知ってるよ、殺されたってね」


高田「はい」


樋口「びっくりしたよ、まさか殺されるなんて、彼とは昔からの親友でね、よく二人で小説を書いたよ、まぁ芥川賞には届かなかったけど」


高田が喋りたそうに樋口を見ていて


樋口「あぁすみません、本題に入ってください」


高田「すみません、で、大川先生は明日あたりに記者会見を開くと言ってたらしく、一番詳しいのは先生だと耳に入れまして」


樋口は少し顔を暗くした。そのことは誰にも言わないと、彼と約束をしたからだ。


樋口「その件ですか」


高田「お願いします。この事件が解決するいいチャンスかもしれません」


樋口はそれを聞いて、少し口を開こうとした。もし親友である大川の事件が解決するならばと思ったからである。

樋口からすべての話を聞き、全ての真相を暴こうと、高田が向かった先は佐久間の家である。




第4話終わり

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