院長の壁~最終回~
夜、林は自分の部屋でパソコンを使い、ひたすら論文を書いていた。
この論文は、自分が医療界を変える極めて重大なものだった。これを今度の学会で発表すれば、院長の席は確実。そう思いながらパソコンを打ち続けていた。
すると、ノック音が聞こえ、返事をすると、高田と西蔵が入ってきた。
林はうんざりした顔で
林「高田さん。今度は何ですか?私忙しいんですけど」
高田「これで会うのは最後にします」
林は少しホッとした顔になり
林「そう、ならいいわ。で、何しに来たの?」
高田「岡部先生を殺害したのは、林先生あなたです」
パソコンを打つ手が止まった。そのままゆっくりと高田の方を見て
林「今なんて言った?」
高田「ですから、岡部先生を殺害したのは林先生しかいません」
林が立ち上がった。少し怒りを感じてたからだ。
林「根拠は?」
高田「根拠はあります」
林は少し下目で見ながら
林「聞かせなさいよ」
高田「あなたは、岡部先生と度々喧嘩をしていたとか。殺害された日もあなたは岡部先生と、次期院長の件で言い合いをされてたとか」
嘘でしょと思った。でも情報をリークした人物はすぐにわかり
林「由美ちゃんから聞いたんでしょ?」
高田「由美ちゃん?」
林「大城由美。私とよく一緒になる看護師よ」
高田「あぁ、そんなお名前でしたね。確かにその人に聞きました」
林は少しため息をつき
林「確かに、岡部先生とは喧嘩もしてました。次期院長のことでも言い合いはしました。でも殺すまではいきませんよ」
高田「いえ、あなたは事前に録音していたテープと遺書を使い、室田さんに内線をかけて、自殺を装ったんです」
林「そんなの勝手な想像でしょ?」
高田「えぇ、ここまでは憶測です。ですが、ここからが本題です」
林「え?」
高田「まずは、この映像を見てください」
西蔵は林にパソコンの映像を見せる。
それは今週の火曜日夜中、岡部の部屋近くの監視カメラの映像だった。そこに林の姿が現れた。
だが、林は自信があったため、笑いながら
林「知ってます?この先に喫煙所があるんです。だから夜中には必ずタバコを吸いに行くんです。ちょうどこの日も吸いに行ってました」
高田は既にそのことは知っていた。そして最終手段に出る。
高田「あの少し聞きたいんですけど。岡部先生が亡くなった時、ずっと部屋にいたんですよね?」
林「そうですけど」
高田「あっ、踊るさんま御殿のゲスト、アンジャッシュの児嶋さんともう一人誰でしたっけ?」
林「えっと、カンニング竹」
一気に言葉が止まった。高田が笑顔になり
高田「確か、調べましたけど。林先生の部屋ってテレビありませんでしたよね?それに、その時間帯って、タバコ吸いに行ってたんですよね。それなのにあなたはどうして、踊るさんま御殿のゲストを知ってるんですか?」
少し強めにいう高田。
林は少し動揺しながら
林「そ、それは」
高田「あなたが、あの部屋にいたという証拠です。それ以外考えられない」
林「録画してたのよ」
高田「最近家に帰ってないそうじゃないですか。はい、これが決定的証拠です」
林は黙っていた。自分は負けてしまったのだ。
高田は続けて
高田「あなたは院長候補にはなれません」
林「え?」
高田「あなた一回医療ミスを起こしてますよね。それの対応が院長にはふさわしくないと決定づけたらしいです」
林「でも私言われたのよ。ふさわしいって」
高田「それは院長が勧めた、ある意味の退職勧めです」
林「え?」
高田「あなたは、院長候補から外れると、多分この病院にも居づらくなる。これが院長の策略だったらしいです」
林「これが権力ね」
林が微笑み落胆する。
そのまま、高田に勧められ、パトカーへと向かっていったのだった。
最終回終わり