殺意のペン~第1話~
とある日のことだった。人気小説家の佐久間雄一はいつも通り新しい小説を執筆していた。彼は推理作家であり、2000年「殺人の列車」で直木賞を受賞、それからも執筆した本は、全部で100本以上を超え、その半数以上は映像化されている。今は、新しい本「殺意のメス」を執筆中であった。佐久間は初の倒叙ミステリであり、少し気合が入っていた。犯人の職業は医者、あとは完全犯罪を考えるだけだ。しかし、今の自分には、小説など書いている暇はなかった。あの男を殺すまでは・・・
翌日、佐久間は家政婦が居ない午前中を狙い、山梨の別荘に向かった。そこには自分ともう一人、大川武雄の姿があった。彼は芥川賞・直木賞の常連審査委員の大物小説家で、佐久間と同じ推理小説家だ。そんな男となぜ会っているのか、それは直木賞を取った19年前に遡る。実は大川は佐久間と協力し、他の審査員に極秘で金を渡しており、票を佐久間に入れる様に指示をし、そして直木賞を受賞した。つまり不正を二人で働いていたことになる。しかし、19年後の現在、そろそろ次の直木賞を受賞するための不正を働こうと、大川に提案をしたが、すぐに断られてしまう。それどころか審査委員を降りるとまで告げられていた。それに大川はこの不正をマスコミにばらすまで告げていたのだ。実は最近はどの作品もヒットせず、次ヒットしなかったら、作家をやめるとマスコミに言ってしまったのだ。そのためにこの男を殺す決意をしていたのだ。
そして、佐久間は大川にコーヒーを渡す。
大川「で、私に話とはなんだ?」
佐久間「頼む、次の直木賞の件なんだが」
大川「それは君に言ったはずだよ」
佐久間「頼むよ、このままじゃ俺は自滅だ」
大川「見させてもらったよ、記事を」
佐久間「は?」
大川「自業自得じゃないか?、そんなこという立場でもないだろ」
佐久間「仕方なかったんだよ、それを言うしか、それにこんなにヒットしなきゃ、こっちだって結構くるにきまってるだろ」
大川「しかしな、例え君が今の仕事をやめようがやろうが、僕には関係ないけどね」
佐久間「頼むよ、次の直木賞前の通りに受からせてくれよ」
大川「無理だな、自分の力で行くんだな」
佐久間「なんでだよ」
大川「考えろ、30作連続で売り上げが1万部にも届かない、そんなやつがいきなり直木賞を取るなんて、あり得ないに決まってるだろ、普通に考えてみろ。それにマスコミに話す気持ちは変わらないからな」
佐久間はトロフィーを手に持ち、覚悟を決めた。こいつを殺す覚悟を・・・
佐久間「なぁ大川さん、今完全犯罪考えてるんですよ」
大川が恐怖の表情を浮かべながら、佐久間の方を向く
佐久間「大川さんには、ありがたいです、今まではね」
佐久間はそう言い、トロフィーを大川の頭目掛けて降ろした。大川は倒れ込み、そのまま力尽きて死亡した。佐久間はそのまま、すぐに物を荒らし、強盗に見せかけた。そのまま自宅に戻った。時刻は12時丁度、20分後家政婦が戻ってきた。これで佐久間の完全犯罪は幕を閉じた。