表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
99/188

99話目 立ってる者は限界まで使って寝かせる

 A班

 300−15=285

 285×8時間=2280コ


 B班

 1分3コ×60=180

 180×8時間=1440コ


★魔力込め班

 50コ×16人=800コ

 12コ×12人×2時間=288コ

 テオくん25コ×6時間=150コ

 王女様25コ×6時間=150コ

 合計1388コ


 C班

 400×4回=1600コ



 ★が付いている班が一番数字が少ないので、要となります。

 現在は、ここを重点的に改善しようというお話です。



 工場の時間割

 9時から9時10分までミーティング。

 そのあと、

 9時10分から10時、

 10時10分から11時、

 11時10分から12時、

 13時から13時50分、

 14時から14時50分、

 15時10分から16時、

 16時10分から17時

 という7時間労働です。

「ほいで、ワテらは王女様に【魔力譲渡】すればええんやな?」

「そうです、お昼にピルヨさんが渡して、おやつタイムにイーッカさんが渡して下さい」


 お嬢様は魔力込めが速い。ならば、魔力を回してしまえばいいのだ。


「ガイ……あたしを使い倒そうとしてない?」


 気のせいだ。


「お嬢様? ハーピーさんは、1人1日、紫キューブ8個分で雇いました。お嬢様の生産量84個が、150個に増えるので、雇うノルマはクリアです。あとは、朝から粘土でフタをする作業もやってもらうので、そこが純粋にプラスですね」

「ガイってば、錬金術師になろうとしてるわね」


 さらなるお金はこれからだよ。


「テオ君の魔力がどれほどで尽きるのかは不明ですが、尽きしだい【魔力譲渡】の人員を雇います。これで確実に150個確保ですね」


 彼が本当に楽しそうにやっててくれて良かった。


 さて、お昼を食べ終わった面々を前に、再び臨時ミーティングである。


「マケールさん。人はほぼ限界まで活かしました。しかし、まだ魔力込め班が要です」

「じゃあ、さすがにもうムリなんじゃ……?」

「問題ありません。我々には、四次元があります」


 私は、腹のポケットから砂時計を出した。


「ヨコ、タテ、高さ……そして、時間ですよ」

「ど、どういうコトですか?」

「私は前から、この工場に違和感を覚えておりました」


 ぐるりと周りを見渡す。


「スッキリした姿を見て確信しましたが……この工場、以前はもっと人がいましたね?」

「え、ええ、はい」


 そうなのだ。灰色キューブが消えると、工場が閑散として見える。倍は入るだろう。


「ですが、仕事もないのに人を雇う余裕もないと、本部から……」

「ふむ。そして、クビを切ったと?」

「ええ……。あのときは胃が痛かったです……」


 完全にコストの罠にハマってるな。


 私はオジさんを見た。


「生産力があれば、もっと仕事は取ってこれますか?」

「軽い軽~い。今、カレー関連の会社がキューブをやたら欲しがっててさ~、結構売り手市場だから」


 工場長は驚いた。


「じゃ、じゃあ、人を辞めさせたのは……」

「いや~、アレはオジさんもしょうがなかったと思うよ? 本部の頭はカチコチだから」


 そうやって慰めつつ、オジさんは困ったような笑みを浮かべていた。――内心、忸怩たるものがあったんだな。


 要の生産力を減らしたら、全体の生産力が下がってしまう。オジさんなら、仕事が取りづらくなったことはスグ分かっただろう。

 しかし、覆せなかったのだ。


 オジさんは頭を掻いた。


「ま、騒音法がイタかったよね~。去年決まってさぁ、あれで『やきやき君』が夜使えなくなっちゃったから」


 そうだったのか。


「マケールさん。働く時間をズラせませんか?」

「えぇっ? 機械の時間は固定ですよ」

「では、人の時間ならどうでしょう」

「ひ……人?」

「そうです。ABCの機械は、いずれも音が出ます。ですが、魔力込めと粘土でフタをする作業ならどうでしょうか?」

「む、ムリですよ。法律で、9時から17時までと決まってます」


 私は首を傾げた。


「マケールさん。それは、法の責任者にお聞きになられたことですか?」

「いいえ。で、ですが……絶対なんです。砂時計の砂が落ちるのと同じように」


 ほぉ。


「たしかに、零れ落ちてますね」


 死ぬ間際に、割れた感覚も抱いたな。


 私は、サラサラと落ちている砂時計を、ひょいと横倒しにして止めた。


「あっ……」

「絶対なんてこんなものです。――聞いてみましょう」







『大丈夫だよ~、スラちゃん』

「ホントに、パパ!?」

『うん。だって、ドワーフ工房も朝早いしね。機械を動かさないってダケで、その下準備は相当前からやってるよ』

「ありがと、パパ!」

『一応、許可は取りに来てね? それと、朝3時とかはダメだよ~?』

「アハハ、それは大丈夫よ!」


 お嬢様は和やかに魔具を切った。


「OKよ、ガイ」

「ありがとうございます」


 これほど確実な責任者もいるまい。


 ジェラールが自分の腕をトントン叩いた。


「ガイ氏よ。時間をズラした所で、人の使える魔力量は変わらぬぞ?」

「いいえ、違うわ」


 お嬢様は気付いたらしい。


「あたしとテオ君が、本当に時間いっぱいまで魔力込めが出来るのよ」

「なるほど……そういう事か」


 そういう事だ。

 今までは、「やきやき君」のラストオーダーに間に合うよう、16時までで生産を止めていた。

 1時間前倒ししたら、仕事が8時から16時までと、フルで行えるのだ。


「あたしが使い倒されてる気がするけどね……」


 モチロン気のせいだ。

 むしろ、みんながさらにお嬢様を輝かせるため、縁の下の力持ちになっているのだよ。


 私はみんなを見回した。


「これが、お嬢様とテオ君、そして12人チーム側の真の限界です」


 メモを書き直す。合計欄は、25+25+144を足して、1582だ。


「さて、とうとう要が移りましたね、ベルトランさん」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ