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98話目 使う以上に稼ぎましょう

 A班

 300−15=285

 285×8時間=2280コ


 B班

 1分3コ×60=180

 180×8時間=1440コ


★魔力込め班

 10コ×(18人-1人)×5時間=850コ

 10コ×12人×1時間=120コ

 テオくん5コ×6時間=30コ

 合計1000コ


 C班

 400×4回=1600コ



 ★が付いている班が一番数字が少ないので、「要」となります。

 現在は、ここを重点的に改善しようというお話です。

 結論から言うと、変更は大成功だった。


「スゴいわね、テオって」


 アンリが手渡しと粘土でフタする作業を買って出てくれた。


「25個も魔力込めてたわ、嬉しそうにね」


 テオ君のクセっ毛をなでると、彼は幸せそうに笑った。


 私はメモの数字を書き換える。


「これで、テオ君の生産力が5倍になりました」

「おいおい、待ち給え」


 ジェラールが制した。


「アンリの手が塞がっているではないか。その生産力の分を減らすべきだろう」

「いいえ、減ってません。彼女は、魔力の尽きた1時間を、テオ君のお手伝いに回したんです。次の1時間からは、また別の人がサポートに入れば、生産力は落ちませんよ」

「粘土を運んでくる人数が足りなくなるぞ?」


 かためる君の原料か。フタにも使っているアレだな。


「ジェラールさん。店の人に運んでもらうと、運送料は紫キューブ換算で何個分ですか?」

「5個だ。――ガイギャックス氏よ、コストを切り詰めるために魔力の尽きたエルフで運ぶのだ。これは正しいぞ?」


 ふーん。


「マケールさんにお聞きします。この工場では、キューブを作ると紫換算でいくら儲けが出ますか?」

「紫キューブで1/4個、他の色は1/2個です」

「――紫以外が断然トクですね」

「ええ、ですが色が揃わないと、やきやき君のムダが多いので」


 なるほど。


「ガイさん。エルフは緑と紫の魔力を誰でも持っているので、紫で合わせて、お城で買い取ってもらってるんです。紫なら万能なので、時期を問わず買ってもらえますから」

「ふむ。ともあれ、エルフの皆さんの労働力で紫20個以上の生産力アップなら、運んでもらった方がいいですね」


 私はジェラールを見た。


「これはとても大事なので強く言いますが、コストを切り詰めると数字は簡単に改善します。ですが、切り詰めた以上に儲けが減ったなら、コスト削減は大失敗なんです」

「むう……し、しかし……」

「逆に、コストが増えても、それ以上に稼げたなら、どうでしょう?」

「それならば……良い」


 良く出来ました。


「さて、テオ君の改善で仮に25個生産が6時間続いても、120個の上昇です。まだ魔力込め班が要ですね」


 今度は、同じく月に魅入られた子として、ミシェルさんが改善候補に上がった。


「え……? わ、私。寝ないで頑張りたい、とは思うんです、けど……」

「いいえ、眠くなったら無理せず寝て下さい」


 月に魅入られた子の特性というべきか、猛烈な眠気に襲われて眠ったあとは、たとえ短期間でも、通常の眠りと同様に魔力が回復するという。


「ミシェルさん。これは、魔力込めをやるにあたり、ものすごく有利な特徴です。――彼女の粘土作業も、誰か魔力の尽きる人がやって下さい」

「あ、それなら俺が」


 モブエルフが手を挙げた。


「あと、いっそ、魔力込めと粘土の班に分かれちまえば?」

「そりゃいい。粘土班が4人でいいか」

「キューブも、各自に渡す係が欲しいぜ」

「全部離れちまったもんな」

「2人ぐらいで、みんなにキューブを渡していく係な」

「それで、ABC各班の人間を、前倒しで魔力込めに参加させればいいさ」


 ふむ、次々アイデアが出てくるな。

 3人寄れば文殊の知恵。30人いれば文殊10人分か? ――おや。


「はいはーい、オジさんが来ちゃったよ~?」


 オジさんが到着だ。


「ドワーフ工房に、赤を380ね~」

「はい、みんな聞いた? 赤を380! すぐ取り掛かって!」


 休憩の終わったエルフらが続々と作業に戻る。赤を生産できる人間はそれを、そうでない者は紫を。


「マケールさん。作業しながら聞いてください」

「はい、ガイさん」

「魔力を込めてフタをした状態のものは、置いておけませんか?」

「ダメですね。やきやき君で焼き付けておかないと、せっかく入れた魔力が漏れ出しちゃいますので」

「それは、どのくらいの時間で?」

「半日も置いたら、使い物になりません」

「つまり、仕事中は作り置き出来ても、残った仕掛かり状態のものは……」

「明日になったら、込め直しですね」


 とすると、確定したな。


「現状、まだ魔力込め班が要です。外から人を雇うべきですよ」

「うーん、そうは言っても、他種族の紫を使える人は押さえられてしまってますし……」


 じつは昨日、マケール工場長とオジさんとともに、人材紹介ギルドへ行って確認した。

 紫は有用らしく、他のエネルギー会社に取られている。


「大丈夫です。私が探すのは、【魔力譲渡】の使えてコストの安い人ですよ」








「どうもー! ワテはハーピーのピルヨですわ。ヨロシク頼んますー」


 彼女は、翼を包帯でぐるぐる巻きにしていた。冒険者としてやっていたが、重傷を負ったらしい。


「あ、これは安い【再生】で頼んだダケで、心配いりまへん。2ヶ月ぐらい掛かる言うてましたわ、あははー」


 濃いな。エルフの皆さんも呆気に取られてる。

 対照的に、男のハーピーは無口だ。


「ほら。あんたも、なんか言いなはれや」

「ん」

「カー! これでギャラはおんなじ! やってられまへんわ」


 ――濃いな。

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