表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/188

94話目 4そうの船と、3人の管理者

 エルフの皆さんの手によって、工場中央には、少しだけ離して置かれた2台の机がセッティングされた。

 片方の机には、4つの灰色キューブが置かれている。


 セレーナは、アゴに手を当てた。


「今の所、動いたのは机とキューブだけですわね」


 おう、あとお前の口パクもな。


「セレーナ様。私はこれから、2つの問題を出します。これにお答えいただけたら、私は負けを認めますよ」

「あら、そう? では、どうぞお出しになって」


 私は、1辺10cmのキューブが乗った机を指差した。


「こちら岸には、船が4そうございます。向こう岸までの所要時間は、それぞれ、1分、3分、9分、27分。ロープで結ぶことによって、2そう同時に運ぶことができますが、その場合、速さは遅い船に合わせます」


 私は肋骨を叩いてみせた。


「今から私は、川の向こう岸まで全ての船を運びたいと思います。戻ってくるさいの時間も考慮にいれたとして、最短で何分になるでしょう? ただし、ロープの付け外しや、私が船を乗り換える時間は無視します」


 セレーナは、指でゆっくりとほほを叩いていた。

 対照的に、お嬢様はちょいちょいキューブを行き来させる。


「ガイ。つまり、このキューブが船で、机が岸なのね」

「そうです」

「えーっと、じゃあ……あ、これって、あたしが解くとマズい?」

「この問題は大丈夫ですよ」

「あ、そうなの? じゃあ、1・3で行って、1で帰ってきて、1・9で行って、1で帰ってきて、1・27で行くと……オジさん、何分?」

「はいは~い。41分だよ~、スラヴェナ王女様」

「ありがと、オジさん。でも……う~ん、こんな素直な問題じゃないわよね。ガイが出してるし」


 よく分かってるじゃないか、お嬢様。


「――なるほどね」


 セレーナはキューブに近寄った。


「ガイさん。手順を示してもよろしくて?」

「どうぞ」

「ではまず、1・3で行って、1で帰ります」


 3を向こう岸に置いたセレーナは、続いて1のキューブもこちら岸で離した。


「次に、9・27の船で行きます」


 モブエルフがざわざわする。


「そして……船を乗り換える時間はゼロなのね? なら、『3』の船で帰ります」


 モブエルフのざわめきが大きくなる。


「最後に、残った1・3で行きます。――以上、合計37分ですわね」


 したり顔のセレーナに、うやうやしく頭を下げてやる。


「お見事。正解です」


 ――そう、37分が最短だ。




こちら岸    向こう岸



    1・3

     → 

27


    ※3分



     1

     ←    3

27


  ※3分+1分=4分



   「9・27」

1    →    3


  ※4分+27分=31分




1   「3」

     ←

          9

          27


  ※31分+3分=34分



    1・3

     → 

          9

          27


  ※34分+3分=37分



「ほど良くヒネってありましたわね。途中、9・27で行くことと、3で帰ってくることが重要……時間の掛かる船は、まとめて運んだ方がいいってことですわね?」

「左様です」

「あら、早くも1問解いてしまいましたわ。ガイさん、今なら謝罪を受け付けますわよ」


 寝言は寝て言え。


「では、セレーナ様。次は条件を変更します。先ほどは私1人で船を行き来させておりましたが、今度は1往復ごとにそれぞれ管理者をおきます。最後の人は船を持って行くだけですが……そうですね、1人目の管理者はオジさんに」

「ありゃ~? ガイ君、オジさんでい~の?」

「ええ、大丈夫です。2人目は……スラヴェナお嬢様に」

「分かったわ」

「3人目は……レオンさん。お願いします」

「――ああ」


 うまいこと観客を巻き込むのは、手品のときに培った手だ。


「ではセレーナ様。他の事情はすべて一緒なので、どうぞ、船をお運びください」

「――え?」


 セレーナはパクパクと口を開閉させた。


「船の速度は一緒なんでしょ? じゃあ、さっきと同じように運ぶわ」

「残念。その場合、船はスラヴェナお嬢様が最初におっしゃった運ばれ方をしますので、41分となります」

「はぁ? ガイさん、どういうことかしら? この方たちが不マジメだったって言うの?」

「いえいえ。お嬢様たち3人は、とてもマジメでしたよ? それぞれが最短時間を心掛けましたから。――オジさん、最短でいけるよう、お願いします」

「オッケ~。オジさん、1・3で行って、1で帰っちゃうよ~ん」


 セレーナもうなずく。


「では、次はお嬢様。最短でお願いします」

「分かったわ」


 お嬢様は、1・9を持って、9だけ置いて1で帰ってきた。


「はい」

「ちょっと、スラヴェナ! ズルいわよ!?」

「なんで、お姉ちゃん? どう見てもコレよ」

「あなた、さっきの正解を知ってるでしょ!? 9・27で行って、3で帰る方が早いじゃない!」

「うぅん。それは30分・・・・・・かかるもの・・・・・

「――えっ?」

「あたしは、10分で往復できたのよ? それだと、3倍もかかっちゃうわ」

「あっ……!」


 分かってきたようだな、セレーナ。

 私がお前に、何を言わせたいか・・・・・・・・

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ