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私はコレでやせました(300kg→3kg) ~悪役令嬢、育成計画~  作者: ラボアジA
5章 路地裏ロジスティクス編

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92話目 判決、そして控訴

「決まったか。なら従おう」


 大男のレオンが、ぶっきらぼうに言った。


「だが、所詮は他人事だ。イザとなったら逃げるだろうな」

「いいえ。実は、一蓮托生なのですよ。スラヴェナ王女様がいるときに閉鎖の話が出たためにね」


 レオンは、ただじっと聞いている。


「人の失敗談は、とかくウワサに乗りやすいものです。ましてや、王女様の失敗などはね。――婚約破棄されたゴシップを、どれほど耳にされました?」


 モブエルフとおカミさんを始め、反応は上々だったが、レオンは冷静だった。


「この工場の閉鎖は、王女と無関係だ」

「ええ、運ですね。――ですが、難癖をつける輩は、そういう事こそ吹聴するのです。『王女様が関わったら案件がダメになるぞ』などとね」


 私はゆっくりと工場を見回した。


「この工場、必ず救いますよ。信用いただけましたか?」

「――これから次第だな」


 現状は受け入れてくれたらしい。

 あとは、クソ貴族のジェラールを除けば、ミシェル1人である。

 私が視線を送ると、ダークエルフの女性はびくりと震えた。


「あ、あの……えぇと……」

「ミシェル」


 アンリが優しくほほえむ。


「大丈夫よ。気になること、質問しちゃいなさい」

「じゃ、じゃあ……」


 ミシェルは胸に手を当てた。


「なにか、不安なんです」


 ――なるほど。

 この説得は、結構大変だ。


「ミシェルさん。不安の要因について、具体的に何かございますか? それを取り除いて差し上げますよ」

「え、えぇと……」


 ミシェルは私を指差した。


 ――おっと。そうきたか。


「す、すみません……。あの、王女様からは、骨のお付きさんがスゴい話を、よく聞いていたんですけど……。で、でも、実際お会いするのは初めてですし、それで、何か急に色々と変化を迫られるのが、こ、怖くて……」


 ――ああ。それは……あるな。よく分かる。

 初対面の相手が親切にしてきた場合、勧誘か、あとで見返りを求められるか……まあ、ロクなことではあるまい。そういう警戒心か。


 ならば、答えは1つだ。


 私はお嬢様の手にタッチした。


「お願いします」

「まかせて」


 お嬢様は、ゆっくりと立ち上がり、ミシェルの席に行って両手を出した。


「ミシェルさん。立ち上がって下さい」


 おずおずと立ったミシェルを、お嬢様はギュッと抱きしめる。


「あ……」

「不安だったときは、母がよく、抱きしめてくれました。あなたは1人じゃないのよって、いつも言ってくれてました」


 理屈では埋められないミゾがある。

 お嬢様が築き上げてくれた1ヶ月という時間は、それをしっかりと埋めてくれたらしい。


「ごめんなさい。年下の王女様に、ご心配をお掛けしてしまって……」

「大丈夫です、ミシェルさん。みんなで頑張りましょう」

「――ありがとうございます。王女様に、すべて託します」

「託されました」


 正直、モブエルフにとっても、私の理論より王女様のハグの方が効いたらしい。


「うわぁ~、お、俺も不安になろうかなあ……」

「尊い……」

「あぁ~、抱きしめてほし~……」


 おお、ベルトラン爺さんあたりに頼め。しっかりシメてくれるぞ。


「うぐぐ……。クソッ……!」


 これで、ジェラール派は1人になった。


「孤立無援ね、貴族サマ」

「アンリ……! ち、違う! セレーナ王女様の理論は、とても優れていたのだ! あのときは、全員認めただろう!?」

「ええ。でもね、それじゃ上手く回らなかったのよ」


 アンリはマケールを見た。


「どう、工場長? 彼以外が捨てるのに賛成だったら、工場の総意は賛成ってことで」

「そうですね」


 やられた事はキッチリお返しか。


 そのとき、テオ君が魚を食べ終わった。


「テオは、食事がおわったのです!」

「エラいわ、テオ。じゃ、A-5を捨てるのに賛成の人、手を挙げて」


 12本挙がった。テオ君が両手のためである。


「はい。決まりね」

「なっ……納得いかん! セレーナ王女様に説明してもらいたい!」


 ムチャを言うな、クソ貴族。


「あら、呼びましたかしら」


 ――は?


 背後からの声に、思わず振り向く。


「みなさま、お久しぶりです」


 そこにはセレーナがいた。


「先ほど、名誉貴族のジェラールさんから連絡を受けまして。近くにいたので、立ち寄りましたの」


 連絡だと……?

 なるほど、トイレで席を外したときか。


「なんでも、工場で機械を捨てられるとか……。いえ、判断は一任しておりますわ。ですけれど……、わたくしも、あの時点で最高の組み方をいたしましたの。いったい、いかなる進化を遂げられたのか、そのご高説を賜りたいと思いまして」


 ――ああ、この女。

 構築した理論に絶対の自信をもってるな。


「ガイ……」


 不安げなお嬢様の手を、周りに気付かれないようにそっと触る。


「お任せ下さい」


 私は立ち上がった。


「セレーナ様。不肖私めが、ご説明させていただきます」


 余計なことをしたな、貴族サマよ……ありがとう・・・・・


 欠席裁判は……ツマラナイと思っていた所だ。

 ジェラールよ。大好きなセレーナ様の理論と顔が、粉々になる所を堪能するといい。

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