表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私はコレでやせました(300kg→3kg) ~悪役令嬢、育成計画~  作者: ラボアジA
5章 路地裏ロジスティクス編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

88/188

88話目 12人の怒れるエルフ

 マケール工場長がトップだと思っていたが、彼は上と工場の声を相互に届けるだけの伝達役コーラーだった。

 実質的なリーダーは……明らかにオジさんである。


 エルフの罵声を受けて、ミスを噛み締めた。

 このオジさんは、自分だけ説得することを許さない。だから、全員いる場でブチまけた。

 見た目とは裏腹に、相当のキレ者である。


「みんな、聞いて!」


 お嬢様が立ち上がった。すかさず悪役令嬢モードに入る。


「このガイギャックスは、あたくしの命を救ってくれました! また、あたくしがヤセられたのも、魔道大会で準優勝できたのも、彼の功績です!」


 堂々とした振る舞いに、エルフはざわつく。


「また、直近では、犬人派の懐柔も行っていたわ。結果はご承知の通りよ!」


 一通り浸透するや、周囲をぐるりと見回す。


「ですから、お願いです。――彼の話を、まずは聞いてもらえませんか?」


 そう言ってからニッコリするお嬢様に、モブエルフたちは。


「あ、悪魔の微笑み……」

「ザ・デス……」


 おいおい。

 しかし、これでイキナリ吊し上げの線は消えたな。


 優雅に着席したお嬢様は、小声で告げる。


「ね? 成長してるでしょ?」

「おみそれしました」


 絶妙のタイミングだったよ、お嬢様。


「ひょえ~、おっかな~い」


 オジさんはお手上げのポーズを取った。


「んじゃあ、役職を持った人だけで聞きましょ。王女様も、それならOKかな~?」

「ええ」

「そんじゃあ、決まり」


 オジさん、すかさずリカバーするね。


 まあ、役職持ちはそう多くないだろう。






 甘かった。

 私とお嬢様を除いて、12人も残った。


 総勢30人よりは減ったが……なぜ多い?


「ニュフフ。責任者、ちゃ~んと書いてあるよ~?」


 オジさんは、見取り図の脇を指差した。



  工場長 マケール

 副工場長 トゥーサン

 班長A班 オラース

   B班 ベルトラン

   C班 レオン

 メシ炊き バルバラ/カミーユ

   営業 オジロン

   清掃 アンリ

 特別職長 ジェラール

  特別職 ミシェル

  特別職 テオファヌ



 くそ、やられた……だが待てよ?


「特別職、とは……?」

「トクベツにエライのだ!」


 ジェラールが、なぜかふんぞり返っていた。


「貴族の私にふさわしい役職だな!」


 あー、うん。そだねー。


 ミシェルという、3年前に入った女性も、「月に魅入られた子」だそうな。彼女の場合は、急に眠気が襲ってくるらしい。

 そして、副工場長だったお父さんの息子のテオ君がいる、と。


 オジさんはアゴをさすった。


「ガイ君、納得してくれた~?」

「――ええ、非常に」


 食わせ者だよ、あんた。




 会議しやすいようにロの字型に机を並び替えるや、さっそくマケール工場長が切り出した。


「では、今の時点でA-5を捨てることに反対の方は、挙手をお願いします」


 いきなり決を採られた。もちろん全員手を挙げる。とことんアウェーだな。


 ――いや待て、1人挙げていない。


「テオ? ほらほら、お前も聞かれてるよ」

「……」


 テオ君は、一心不乱に魚の骨を取り除いている。


 ジェラールが指で机を叩いた。


「いつまでご子息は食事しているのだね? サッと手を挙げるダケだろう。トゥーサン氏よ、早く言い聞かせてくれ給え」


 尊大だな、コイツ。


 お父さんは、テオ君に優しく聞いた。


「テオは、あの機械を処分することに賛成かな? 反対かな?」


 ようやく小骨を取り終わったテオ君は、満足げにうなずいた。


「テオは賛成なのです!」


 ジェラールは大げさにため息をついた。


「何も分かってない」


 お父さんはもう一度テオ君に聞いた。


「テオ。あの大きな機械だよ? 捨てちゃうんだよ?」

「ジャマなものはポイするのです! テオは、ゴミをきちんと捨てられるのです!」


 会議に「やれやれ」といった空気が出てきたが、とんでもない。


 私は立ち上がった。


「彼は、物事をスナオにとらえています。A-5という機械は、高価だったかもしれませんが、そのせいで工場がうまく回っていないのであれば、捨てるべきです」

「あたしも賛成」


 お嬢様も立ち上がった。


「えっと、以前はうまいこと理論立てて言えなかったけど、つまりガイの言うとおりよ」

「やれやれ……たとえ王女様といえど、これは話になりませんな」


 ジェラールは首を振ったのち隣を見た。


「どうかね、ベルトランよ」

「フン」


 筋肉質なダークエルフの爺が鼻を鳴らした。


「クソ貴族と同じなのは気に食わんが、機械ってのは職人の片割れだ。しゃしゃり出てきてスグ捨てろなんぞ、聞く耳持てねえな」

「決まりだ」


 ジェラールが手を叩いた。


「マケール氏よ、どうだろう。そこのご子息以外が廃棄に反対だったら、工場の総意は反対ということで」

「うぅ~ん、ジェラールさんの言うとおり、それで」


 おいおい、工場長。


「じゃあ、捨てるのに反対の方は挙手を」


 どうにもシンドイね……おや。


「手は10本。挙げていないのは……?」

「アタシよ、クソ貴族」


 ロングの髪を紫とオレンジに染めたエルフが、尖った耳をピンと引っ張った。


「清掃班から言わせれば、あんなモン粗大ゴミよ。処分しちゃいましょ。ついでにアンタもね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ