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85話目 スゴい機械

 茶番の時に、お嬢様の護衛としてモーフィーの顔合わせは獣人派と済ませていた。まさか立場をスイッチするとは思っていなかったが、結果的には良かったな。


 エルフの工場は、城下町の路地裏にあった。


「これがルカヌカ商事・イェーディル工場よ」


 オレンジのつなぎを来たお嬢様が、誇らしげに紹介してくれる。部屋から出る時点で着替えていたあたり、気合い入ってるな。

 9時の始業開始とともに、同じくオレンジのつなぎを来たエルフの人たちが、横開きの扉を開けた。

 まずは、内側の入り口近くにあるキューブをどける作業から始まる。


「お嬢様。なぜどけているのですか」

「もちろん、中に入れないからよ。雨の日は上にカバーも掛けるわ」


 前世でも、道のギリギリまで移動式ラックを出してる店などあったが、あのノリだ。違うのは、このキューブを直接販売するわけではないことだが。

 私も、外に出すのを手伝った。


「このキューブを出す作業、ずいぶんと手間が掛かってますね。よそに倉庫を用意して、入れておけませんか?」

「すでにやってるのよ、実は」


 やっててコレなのか。


「貸倉庫2つ目は、さすがにダメって判断らしいの」


 あー、婆さんの冷凍庫もそんな感じだった。フツーの冷蔵庫だけだとスグ満杯になって大変だからというので、冷凍庫を1台買ったら、そちらも満杯になってたな。ロクに使えていないのに、さらに「もう1台ほしい」と言っていた。もちろん却下だったが。


 10分ほどかけて入り口近くのキューブを出し終わると、いよいよ工場内に入っていく。


「あたしは作業があるから、ここからは工場長のマケールさんにお願いするわ」


 ああ、最初の工場見学で出てきたおじさんか。工場長だったんだな。小柄で優しそうな人だ。


「ガイギャックスさん、よろしくお願いします」

「こちらこそお願いします、マケールさん。それと、私はガイで良いですよ」


 私はマケールさんに手順を見せてもらうことにした。

 扉の脇に工場の図面が貼ってあったので、軽く調べておく。それによると、タテヨコに9×9マスで区切られており、正方形の工場のようであった。

 地面を眺めると、たしかに黒いテープが貼られている。1マスはおよそ5m×5mというところか。巨人が人間将棋を出来そうである。


 マケールさんは、人やキューブの山をすり抜けるようにして奥へと進んでいった。


「まずは、ドロドロの粘土を、キューブの形に固めます」


 ふむ、大きな機械があるな。自陣の王様のあたりから入ったとすると、敵陣の王様のあたり9マスを占めるほどか。工場で最大の機械だろう。


「動いてませんね」

「今は……周りにいっぱいありますので」


 ああ、そりゃ不要だな。


「マケールさん。この巨大さでしたら、量もさぞかしたくさん作れるのでしょうね?」

「ええ、そうです。この『かためる君A-5型』は、いっぺんに1000個も作れるうえ、燃費も大変いいんですよ」

「なるほど。スゴいですね」

「はい。実は、セレーナ王女様が導入に掛けあってくださいまして」


 ――なに?


「作業効率も、1番良くなるように組んでくれたんですよ」

「ほほお、それはそれは」


 ――セレーナの置き土産、というわけか。


 私は、冷え冷えとした鉄の塊を見上げた。

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