8話目 そして鍾乳洞へ
「さて! あなたの魔力の核を探すわよ! ――何よ。返事は!?」
「おー」
「よろしい」
ゴブリンを食ってご満悦のお嬢様は、さっそく紫色の光を出した。
「これはね、【魔力感知】っていう呪文よ。あなたの砕かれた骨は、親指の先っぽね? 今は砕けたままだけど、さっき、あたしが残らず回収しといたから、魔力の核を取り戻せば再生するハズよ」
「ハズ?」
「多分……、きっと」
「頼もしいお答えですね。涙が出そうです」
「あんたはスケルトンでしょ!」
知ってる。
「ときに、スライムさん。生きてる者を食すことは出来るんですか?」
「ダメ。生命エネルギーの抵抗って、スッゴク強固なの。寝てても気絶してても、全然食べらんないから」
ああ、これはやったコトある言い方だな。それで、ダメだった、と。
「お嬢様の食へのこだわりは、無条件に信じましょう」
「――なんか、さっきから、ほんのりとバカにしてる?」
「いえいえ、まさか」
食については絶大な信頼を寄せてると思って欲しいね。
他? 聞くなよ。
「分かったわ。あなたの魔力核の位置が」
お嬢様は、にゅい~っと義肢を伸ばして指し示した。
「向こうよ、向こう」
「牢屋ですね」
「違うわよ! も~っと向こう! 決まってるでしょ!!」
はいはい。
しかし、アレだな。向こう、ということは、おそらく戻ることになる。
巨大な鍾乳洞へ。
生誕の地へ戻ってきた。
「お嬢様、遅いです」
「いや……。あ、あんたが、速いのよ……」
ブルブルと震えるスライム。息を切らせているのだろう。移動が最大の敵とか、お前は生前の私か。
お嬢様の速度に合わせて、 優雅に歩くことしばし。
鍾乳洞の中ほどに、場違いな梁がかかっていた。
「えっと、あなたの核は、あの横に通ってる柱? だかの根っこ部分にあるわ」
地上から10mのところを水平に通る梁。キレイな直方体で、人工物のようだ。
梁の端っこを見ると、そこには穴が開いていて、少し光が漏れていた。
「なんだ? 建物……か?」
どういう造りなのかサッパリだが、核があるというのなら行かねばならない。
「カァー!!」
む? また出たか!
大ガラスの鳴き声が洞窟に響く。今度はゴブリンのショートソードで牽制したら、カラスはバサバサと途中で反転し、梁の端の穴へと入っていった。
「――なるほど」
なんとなくだが、見えてきた。
カラスは、光るものを集める習性がある。
私の核も、スライムのお嬢様のように赤く光っていたのであれば。
「あいつが犯人だ」
さて。どう攻略するかな。
「お嬢様。一応聞きますが、何か飛べる魔法はありませんかね?」
「あったら、ここまで飛んできてると思わない?」
うん、そだねー。
なら、数撃ちゃ当たるでやってみるか。
私は頭を取り外して、梁の上に放り投げた。乗りさえすれば、リセットで呼び寄せられる。
「おっと」
意外にも、1オンに成功してしまった。よし、じゃあ……。
「カァー!」
その途端、カラスが頭めがけて突っ込んでくる。うぉっ! はじき飛ばされた。
落下しながら、カシャカシャカシャーンと組み上がる私の胴体。
おー、全部組めた。スゴいなー。
――むなしい。スゴくむなしい。
ガラガラガシャーン!
私はバラバラになった。