表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/188

43話目 新たなる修行

 舞踏会での宝石事件は、お嬢様を一気に話題の中心へと押し上げた。

 一方、ゴミの始末だが、「修行」と称してジャスティアへと戻されたらしい。


「申し訳ございません、国王陛下! 愚息は、ドワーフの工房でみっちり性根を叩き直させますので、平に、平にご容赦をー!」


 ジェレミー貴金属店の店長が、地面に頭をこすりつけて謝罪したとのことだ。


「スラちゃん。こう言ってるけど、どうする?」

「あたしはもう全然平気よ、パパ」

「だってさ。良かったね、店長。これからも、いい製品を作ってくれるかな?」

「は……はい。今後ともよろしく……」


 笑顔とは、本来攻撃的なものらしい。

 魔王様の笑顔は、それはもうステキだったそうな。


 いったん全部引き上げるように見せてから、関係を再構築する。ゴミは片付いたし、落とし所としてはこんなものであろう。


 それもこれも、お嬢様が変わったからこそである。

 そのまま宝石店を切り捨てたところで、単なる報復止まり。事によっては、心が狭いなどという悪評もついたであろうから。


「いや、ガイ。もうホントに大丈夫よ?」


 スッキリした顔で答えているあたり、ゴミ処理については心の整理がついたのだろう。


 今、お嬢様は部屋でストレッチをしている。

 舞踏会では、美の女神を降臨させるため、いわば前借りをしていた状態なのだ。ダイエット作戦は継続中である。


「ママのドレスに、いつまでも頼ってちゃいけないものね」

「左様でございます」


 そのため外では、スライム時も人間時も大きく見せている。


「セレーナお姉ちゃんが、食事会で言ってきたわ。『スラヴェナ。その……や、やせた姿にしないの?』って」


 こら、コイの口パクをやめい。


「お嬢様は、なんとお答えに?」

「ミーケがビックリいたしますから、と」


 ああ、たしかにミーケは見てないものな。

 ミーケにしてみたら、一夜にして「フツーのお姉ちゃん」の評価が激変しているのだから、キツネにつままれたようなものだろう。


“見たいニャ、見るニャ、見せるニャ~!”


 こんな様子が、目に浮かぶようだ。


「まあ、今後は何が起こっても大丈夫よ。あたしは変われる。変わってみせる!」


 自信満々のお嬢様だった。




 昼食後。


「うわ~ん、ガイ~!」


 どうしたよ、スラヴェ太くん。君の顔にメガネが見える。


「あのね~? 朝はあたしの話題で持ちきりだったんだけど、お昼はドロテーお姉ちゃんがチラシを持ってきたのよ~!」

「チラシ?」


 ああ、それはもしかして、一般職員の食堂でも見たアレか。


 お嬢様が渡してきた紙は、武道大会&魔道大会のお知らせだった。


「あ~ん! 忘れてたわ~! これ、王族は全員参加なの! あたしの天下、半日だったわ~!」


 ベッドに突っ伏すお嬢様。――お前、変われるんじゃなかったのかよ。


 日付を見ると、武道大会が1ヶ月後で、魔道大会はその翌日だ。


「お嬢様は、どちらに出られるおつもりで?」

「あたしが武道で勝てると思う!?」


 何を切れてるんだ。


「あぁ~……。ミーケの奴が、またエラソーに言ってくるのよ? 毎年あたしに勝ってるからって」


 ミーケ。それは姉に勝てる妹。


「お嬢様」


 私はヘタに落ち込ませないよう、優しい声とともに肩を叩いた。


「諦めましょう」

「そこは『修行しましょう』でしょ!?」


 ああ、そうだよ。試したんだよ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ