3話目 骨リセット
転生早々、しゃれこうべだけをカラスに持ち上げられてしまった。
首から下と泣き別れ。せっかく軽くなったのに、またもやロクに動けなくなるのはツラいな。
私は念のため、右手の指を立ててみた。0、3、0、3。よし、私の体で確定だな。
ふむ、では何か投げる物を……むう、カラスが飛び回って、視界が酔う。石があっても、これでは拾えないぞ?
いや、待て。
ちょうどいいものなら、あるじゃないか。
私は肋骨を一本外し、上に放り投げた。当たりはしなかったが、カラスは頭蓋骨を放す。
――あ、砕けたらマズイ。
大あわてで下を見る。うっ、もうちょい右! じゃない! 逆だ! クソッ、滑り込め!
ズザァッ!
ガチャンガラガラガラーン!
私はバラバラになった。
あと、頭蓋骨は勢いよく地面と激突した。
気を付けよう。骨で骨は止まらない。
「何か、いっぺんで戻る方法はないものか」
頭蓋骨こそ割れなかったものの、これを元どおりにするのはいかにも骨である。
どうしようかと地面でカタカタ揺れていると、ふと、リセットという感覚が沸き上がってきた。
どうにも妙な心地だが、骸骨のクセに見聞きできる時点で、今更である。どうせやってみるなら、早い方が良い。
「リセット」
その途端、ふわ~っと散らばった骨が浮いたかと思うと、急速に私の周りへと集まってきた。足、腰、胴、腕、首、そして頭が、ふわりと所定の位置に納まっていく。
ふう……、戻った。おっと、肋骨を一本取って、と。
私は頭上のカラスを牽制すべく、ブンブンと振りつつ鍾乳洞を歩き回った。
「おや」
奥に細い道が続いている。本来は出口側かもしれないが、気分の問題だ。
天井は、2mちょっとか。一気に低くなったな。ここなら大ガラスも入ってくるまい。
私は肋骨を構えつつ、慎重に進んでいった。
やがて、何者か達の巣穴といった場所に入ってきた。簡素な机や椅子、そして木の器がある。スープを入れる食器だろうか。スプーンはないあたり、それほど精緻な技術はないのだろう。
妙にすえた匂いがするが、ガマンできぬほどではない。人間だったら耐えられないかもなという感覚はある。
つまり、ここの住民は人じゃない。
「ねえ」
唐突に声が聞こえた。女の声。むう、人じゃないと予想した直後にコレはウマくない。
いや待て。とらわれの身ということもあるか。私が動き回る気配を聞きつけ、一か八かで声を上げたというパターンもありうる。
「誰、そこにいるの?」
しかし参ったな。今の私はガイコツだ。ハダカ以上に全身をさらけ出している。「きゃあ」で済まないかもしれない。
とはいえ、実態を確認せねばなんとも言えないのも、また事実。
私は、声のするほうへ歩いていった。すると、居住エリアの端っこの部屋で、鉄格子のはまった牢屋を発見する。
「あ! あんたスケルトン? お願い、助けてよ!」
――これは、たまげたな。
私は首を傾げた。
牢屋の中には、女性……といっていいものやら。
大きなスライムが入っていた。