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184話目 骨の器

 ――オイシイ奴だよ、お前は。


 骸骨竜にへばりついたままハーピーを見上げた私は、内心苦笑した。

 偵察役のピルヨは、戦いだと役に立たないので、いち早く天井の隅へ。あとはひたすらお口チャックして気配を消していたと。

 【魔力譲渡】も接触が条件なので、お嬢様は気付かれないよう義肢を伸ばしていた。注意がそれるよう、私も真ん中で三文芝居をやってみせた。

 それぞれが、出来ることをした結果である。


「ほい、ネーちゃん!」


 ピルヨは、前抱えにしたナップサックから、白キューブを投げた。ピエールはしっかりキャッチするや、その魔力を使って【ホーリーライト】を放つ。再びドラゾンは弱体化だ。

 モーフィーが、精神を集中させ始めた。


「はあぁぁ……!」


 カッと目を見開くや、巨大なドラゾンの顔に向かって飛び上がる。


「ハァッ!!」


 気合い一閃。周囲の骨ごと、巨大な核を真っ二つにした。ドラゾンは、その体を維持できなくなり、無数の人骨がバラバラと魔法陣の上に落ちる。私もその中に混ざってしまったので、速やかにリセットで再構築した。


 やれやれ、やはり自由に動けるのはいいな。


 ダ=ダンザは派手にうろたえていた。


「お、お主ら~! ワシの夢を壊して、そんなに楽しいか~! 王族が庶民をツブすなど、横暴じゃぞ~!」

「よく言うわね。あなたこそ、大勢の人を亡き者にしようとした大悪党じゃない」

「何を抜かすか~! ワシの頭脳は偉大なんじゃ~!」


 うわあ、これはイカれてますな。


 ダ=ダンザは、自身の後方にある扉から逃げようとした。今更である。


「ふぉっ?」


 しかし扉は、ビクともしない。


「た、立て付けが悪くなっとるのか!? ええい、このクソ扉め~!」


 いやいや、お前の頭が悪くなってるんだと思うぞ、クソドワーフよ。


 時間は山ほどあったしな。ピエールが魔法で【施錠】したまでのことだ。気付けよ。


「ふぉっ……ふぉ~っ!?」


 爺がもう一度振り返る頃には、モーフィーが詰め寄っていた。


「観念しろだワン! 怪しい動きをしたら、拙者が斬り捨てるワン!」

「ふぉっ、ふぉっふぉふぉ……どうやら、ワシの野望は終わったようじゃのぉ……」


 そう嘯くダ=ダンザは、なぜか笑みを浮かべていた。


「ところで……ガイコツ君や~? 1つの計画がダメになっただけで全てが終わりとか、そんな奴はパーじゃろ~?」

「そうだな」

「ふぉっふぉふぉ~、そ~じゃろそ~じゃろ。並行して別の作戦も行うのが高尚なワシじゃよ」


 ダ=ダンザは両手を高々と上げた。


「プランB、【自爆】じゃ~!!」


 爺の両手の間に、赤魔法の光が集まる。なるほど、自分の身を使って洞窟を崩壊させる気か。


「【中止呪文】」


 はい、なんとかの一つ覚え。


 ダ=ダンザは、絶叫してモーフィーに襲いかかるが、軽くいなして終わった。モーフィーとピエールがしっかりと取り押さえる。


「ふぉっふぉふぉ……ダークエルフよ。ワシらが憎かろう。殺さんのか?」

「時代錯誤も甚だしいな」


 ピエールは一蹴した。


「ネクロ教団の組織がどうなっているのか、疑問は山積みだ。その後は裁判にかけてやる。お望みの極刑だろうがな」

「ふぉっふぉふぉ、そりゃ光栄じゃ。じゃが……ちぃーとばかり、時間が掛かるのぉ~」


 ダ=ダンザの口から、血が垂れる。


 ――なっ? 毒か!?


 同様に思ったらしいピエールが、すぐさま【解毒】を用いるが、ダ=ダンザは鼻で笑う。


「ム、ムダじゃ……。これは契約の一種……イーディアス様を顕現させるまでには至らなんだが……ふぉっふぉふぉ……。器なら、……」


 血を大量に吐き出しながら笑いかけてくるダ=ダンザ。


 ――私か!?


 モーフィーがすぐさまダ=ダンザの首を刎ねた。捧げられる前に始末するという発想は嬉しかったが、そんなに生易しいものでもないらしい。


「ふぉふぉ……。イ、イーディアス様……万歳……」


 爺が事切れるや、魔法陣の紋様が黒がかった金色に輝きだす。


「ガイ! 魔法陣から離れて!」


 お嬢様が叫んだ直後。

 私に向かってドス黒い奔流が押し寄せてきた。


「ガイーッ!」


 私の意識は、急速に闇へと呑まれていった。

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