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183話目 希望の灯

 ドラゾンだかギガゾンだか知らないが、骸骨の竜は堂々たる巨体だった。体のあちこちにある頭蓋骨の数が、冒涜さを際立たせている。


「ワン……骨には負けないワン!」


 近くで骨の爆発を食らったモーフィーだったが、果敢に立ち上がってドラゾンの尻尾をかわす。

 ピエールが杖を掲げた。


「【ホーリーライト】!」


 対アンデッドの鉄板魔法に、ドラゾンの動きが少し鈍った。実は私も鈍くなっていたりする。


「ふぉっふぉふぉ、威勢が良いのぉ~。では、もう1体召喚じゃ~」


 手袋に覆われた指に、黒い光が集まる。発動したら支えきれない。

 お嬢様がサッと杖を向けた。


「【中止呪文】!」


 ドラゾンの体がスカスカだったのが幸いした。体ごしにダ=ダンザの魔法を打ち消す。


「あたしの前で魔法が使えると思わないことね!」

「ふぉっふぉふぉ、お~、そうじゃった。王女様は魔道大会を準優勝しとったのぉ~!」


 相手の呪文を次々と【中止呪文】で止めるお嬢様。《二重魔法》で【排水】も狙っている。攻撃と思われぬ程度に水を奪うようだ。

 モーフィーとピエールでドラゾンの相手をしているし、私は飛び道具を警戒してお嬢様の前に【力場】を張った。ナイフ1本程度なら止まるぐらいには強化したから、盤石の体勢である。


「ん~、流石に強いの~。ワシ、負けそうじゃ~。――なんちゃって」


 なに?


 次の瞬間、魔法陣が急激に光り出した。お嬢様たちが悲鳴を上げて膝をつく。


「お嬢様!?」

「ガ、ガイ……。なんか、魔力が急になくなって……」


 すぐさまクソ爺に目をやる。


「どういう事だ!」

「ふぉっふぉふぉ~、みんな魔法陣に足を乗っけたじゃろ~? そこから全ての魔力を吸い取ったんじゃよ~。あ、ドラゾン君からは取れんよーにしといたからの~」


 なるほど、それで私は無事だったのか。


 すぐに指と頭をダ=ダンザにブン投げた。


「リセット!」


 余裕ぶった今なら隙だらけだ。骨をめり込ませる!


「ふぉ~、ムダじゃ~」

「なにっ……?」


 その途端、私はドラゾンに吸い寄せられた。ガシャガシャンッと、肋骨の1本にひっつけられる。


「くっ……!」

「お主の産みの親じゃぞ~? 対策はバッチリじゃわ~い」


 強烈な磁石でも背負ったかのように引きはがせない。


 これは……骸骨竜のリセットか!


 モーフィーとピエールは、お嬢様を助けてなんとか魔法陣の外まで脱出したものの、魔力は依然戻らないらしい。


「王女様……手持ちのキューブも吸われたようです……」

「ふぉっふぉふぉ。いや~、ゆかいゆかい」


 ハゲ爺だけ楽しげなのが腹立たしい。


「そもそも、なぜワシが、お主らの来るのを待っとったと思う~?」

「頭がオカシイからでしょ!」

「ふぉっふぉふぉ~。王女といえど、やはり凡人じゃわ~い。ワシの高尚な考えには辿り着けんのぉ~」


 辿り着きたくもないが、あえてネクロ教団の思想で考えてみた。

 奴らの場合、生け贄を捧げることで何かを成し遂げようとする理念があった。船の爆破もそうだったし、船長の【活力奪取】も、見方を変えれば生け贄である。


 生け贄……?


「――まさか!」

「おー、ガイコツ君は気付いたようじゃの~」


 ダ=ダンザは大喜びで手を叩いた。


「そ~うじゃ。この洞窟に入っておる全員を、落盤事故で生け贄にするんじゃよ~!」


 ――こいつは、なんて事を思いつくんだ。

 1000匹のゴブリンは、そのためか!


「ワシの爆発魔法で、お主らの後ろを吹き飛ばす。あとは連鎖反応で、洞窟は崩壊じゃ~。それもこれも、王女様が魔力を提供してくれたおかげじゃよ~」


 くそっ、フザけるな!


 私はなりふり構わずバラバラになろうとしたが、ドラゾンの力は圧倒的だ。巨大なリセットによって、コバンザメのように張り付いてしまう。


「ふぉっふぉふぉ~、ムダじゃムダじゃ~! さてさて、素晴らしき絶望も捧げるとしよう。鍾乳洞には、い~っぱい人もおるようじゃしの~」


 ――王族は、ミーケ以外全滅して、骸骨王が復活。

 悪夢の筋書きどおりだ。


 私はガックリと肩を落とした。


「人がどれだけ抗おうとも、運命は変わらない、か……」

「ふぉっふぉふぉ~、ガイコツ君はお利口さんじゃわ~い」


 ダ=ダンザは、巨大な赤魔法を準備した。


「今日は、イーディアス様の2度目の生誕祭じゃ~! そーれ、【爆発】~!」












「【中止呪文】」


 その瞬間、クソ爺の赤魔法は掻き消えた。


「ふぉっ? ありゃ、ど、どうなっとるんじゃ?」

「見ての通り、あたしが消したのよ」


 スラヴェナお嬢様が、爺に杖を向けていた。


「言ったハズよね? 魔法は1つも使わせないって」

「バ……バカなー!?」


 初めてドワーフ爺が慌てふためいた。


「ま、魔力はスッカラカンになったハズじゃー!」

「ええ、あたしはね。――だけど、お喋りな外付け充電器が仲間にいるの」


 お嬢様は、反対側の小指の先を、部屋の壁づたいに上へと伸ばしていた。

 その義肢の先には。


「どもー。ワテ、ピルヨって言いまんねん。【魔力譲渡】1丁、ヘイお待ち~」

「ふぉっ!? ク、クソ鳥がぁー!」

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