表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
182/188

182話目 あれも死体、これも死体

 薄暗い部屋のなか、そのドワーフは目を爛々と輝かせていた。


「おぉ、おぉ! カーマインめ~、一足先にイーディアス様の元に行きおったわ、ふぉっふぉふぉ~!」


 親しい生き物の死も喜びになるらしい。


 お嬢様が油断なく杖を構えた。


「あなたがダ=ダンザね?」

「そ~ぉとも、王女さま~。ワシの素晴らしい研究成果を味わいに来たのかのぉ~?」

「フザけないで!」

「ふぉっふぉふぉ~、ワシは大まじめじゃ♪ なにせ異界から、強い生命体を呼び出してカーマインと融合させたのはワシじゃからの~。天才たるワシには、不可能などないわ~!」


 なるほど、それでヴァンパイアが現れたのか。


「おぉ! そうそう、ガイコツ君や~?」


 イカれたドワーフが私を指差した。


「元はお主も、ワシの研究成果じゃよ~?」


 ――なに?


「ふぉっふぉふぉ~。イーディアス様の復活方法を探っておったときにのぉ~、『反魂の法』とかいう、ステキな教えを見つけたんじゃ~。クスリ漬けで保存しとった死体の肉を取っ払っての~、みずみずしい骨なら魂を宿せるというんで、早速やってみたんじゃよ~。思い立ったら即実行じゃ~!」


 うわぁ……。薄々そうなんじゃないかと思っていたことが、確定したよ。


「ワシは、失敗かと思って捨てといたんじゃが、成功しとったんじゃな~。いや~、カーマインが喋ってくれたわ。いい子じゃったよ、カーマインは~」


 以前、この体にいた人物は、魔法陣の対岸でハシャいでいるドワーフに殺されたらしい。その後、骨にされて突っ込まれた魂が私、と。


「おぉっと、もちろん、素材には磨きをかけたぞ~? 黒魔法が強い相手ほどお主に親しみを感じるようアレンジしたし、邪な土を敏感にかぎ取ってもらえるよう、茶色の魔力が豊富な骨にしたわ~い。それもこれも、すべては骸骨王さまをお迎えするためじゃ~」


 ああ、すべてお前の仕業だったのか。

 なぜ私が悪党に好かれるのか疑問だったが、イーディアスの依り代の練習用だったんだな。


「さて、ガイコツ君以外は、みんな献体かの~? ふぉっふぉふぉ、嬉しいぞ~い。実験はトライアンドエラー! 犠牲がつきものじゃ~!」


 たわ言はもうゴメンとばかりに、ピエールが爺の防御魔法を【魔法霧散】で引き剥がした。すぐさま、お嬢様が【排水】を放つ。いい連携だ。

 しかし、必殺と思われたお嬢様の青魔法は、魔法陣に吸い込まれてしまった。


「ふぉっふぉ~! 引っ掛かりおった~!」


 魔方陣は、エネルギーを吸収すると、ボワッと発光した。


「相手を攻撃するための魔法は無粋じゃからの~! すべてイーディアス様を復活させるパワーにさせてもらうわ~い!」


 すかさずモーフィーが爺に向かってダッシュした。


「なら、拙者が切るまでだワン!」

「ふぉっふぉふぉ、元気じゃの~」


 ダ=ダンザがスイッチを押すと、天井が開いて、大量の人骨が降ってきた。


「犬人は骨が好きじゃろ~? ワシの最高傑作と、たっぷりお遊び♪」


 モーフィーと爺の間に骨の壁が築かれた。構わず刀で一閃して吹き飛ばすも、すぐにまた元通りになる。


「ワン!? ならば、もう1度だワン!」


 骨の壁が光りだした。モーフィーは斬りかかろうとしている。


 ――マズい!


「みんな、伏せろ!」


 骨の壁が爆発した。お嬢様たちの絶叫のなか、骨の壁は次々と別の形に組み上がっていく。


「ふぉっふぉふぉ~、爆発はロマンじゃが、これで倒すのもまた無粋。キレイな献体が手に入らんからの~。――おおっと、完成したわい。最高傑作のドラゾン君じゃ♪」

 

 巨大な竜の骨格に再形成されたソレは、荒々しく咆哮した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ