18話目 スバらしきかな、クソ親子
実力差は一瞬で分かった。
おそらく、何か刺激しただけでも、骨まで灰にされるだろう。
「ふふふ……全力だ……。永遠の責め苦にさいなまれるがよい……!」
訂正。これは死ぬことも許されない。
私はベストな手段を考えた。
結果、のべ~っとしたお嬢様の上に、核を置く。
「降参します。お嬢様と、どうかお幸せに」
「はっ?」
私はさっさとバラバラになった。
永遠の責め苦はダメだよ。殺し文句だ。
「パパのバカーッ! ガイが死んじゃったじゃなーい!!」
「いや……、スラちゃん、あのな? だって、状況だけ見たら真っ黒だったワケだし、あれは、誤解するなって言うほうがムリ……」
「違うもん!! ガイは真っ白だもん!」
「あー、うん。色白だねー。なんせ骨だしねー」
「パパは腹黒だもん!!」
「こらー! ダークエルフ差別はダメー!! パパ許しませんよー!?」
――なんだか、愉快なコントをやっている。
私は、横たわっていた体を動かした。
「あっ、ガイが動いた!!」
「な? な? ほ~ら、だからパパが言ったとおり……」
「パパは黙ってて!」
「はい」
しょんぼりする国王をよそに、すぐさまスライムのお嬢様が寄ってきた。
「良かった……あ、パパにはキツく言っといたから。ゴメンね?」
「いや~、ハハハ。ガイギャックスくんだっけ? 娘の命の恩人なんだってね~! いや~、ホンットごめん!」
「パパー、いつ喋っていいって言ったー?」
「ごめん。――あ、ガイ君もごめん!」
さっきまでの感動を返せ、クソ親子。
「いえ、ダーヴィド国王陛下。お気になさらず。誤解がとけて何よりでした」
言えるワケがなかろう、クソ親子。
私は体を起こした。少し動きが軽くなっている。
くいっ、くいっと手足を回していると、不敵な笑い声が聞こえてくる。
「ふふふ……驚いたかな~?」
スライム娘に弱い国王は、人差し指を立てた。
「僕の【完全修復】だよ。核はもちろん、骨にも微細な傷が多かったからね。お詫びついでに、キレイにさせてもらったのさ」
「ありがとうございます」
これはスゴいな。白骨が新品のようだ。
「う~む。さて、と」
背伸びをする国王。
「ガイ君も起きたことだし、町へ繰り出そうか。お祝いのためにね、うん」
「えー? パパ、本当は自分が楽しみたいんでしょ?」
「ははは、当然!」
否定しろよ。
「あ、そういえばパパって、【高速飛行】で飛んできたんでしょ?」
ほー。すごいな、魔法。驚かされてばかりだ。
「あたし達にかけてくれれば、ビューンって行けるじゃない。ね~、かけてよ~」
「いーや、飛ぶのは危険だからダメ。アヤしい輩がすーぐ【魔法霧散】で叩き落としてくるから」
「パパだって一緒じゃない!」
「国王だからいいの」
「ズルい! 飛びたい!」
「あのね~、スラちゃん? 少しは歩きなさい。文句言うなら、パパ、町に行くの止めちゃうよ?」
「行く!」
行くのかよ。
「ねえ、ガイも行きたいでしょ~?」
「私は、生まれたばかりのため、よく分かりません。町へはこの姿でも大丈夫なのでしょうか」
「ははは、だ~いじょうぶ! イェーディルの国は寛容だからね。人種のるつぼさ! まあ、ジャスティア国あたりだと、埋められるかもしれないけど」
いきなり詰む国もあったのか。危なかったな。
「陛下。それでは、ジャスティアからやって来た人の場合、私に不快感を持つおそれも……」
「ああ、あるかもね。だけど、郷に入っては郷に従えさ。イェーディルで勝手なことはさせない。万一アバれたら、ソイツを埋めるから」
さりげなく物騒だな、この人。
3人は町へ向かった。
歩き始めてスグ、お嬢様がバテる。
「パパー、疲れたー」
「お~、頑張ったな~! はい、【高速飛行】~!」
おいコラ、クソ親子。