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私はコレでやせました(300kg→3kg) ~悪役令嬢、育成計画~  作者: ラボアジA
9章 真相編

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177話目 母娘の戦い

 ドロテーは、衣装と同じく金色の手袋をつけていた。


「お袋。あたいは竜人のジジババに鍛えてもらったぜ? もう、昔のあたいじゃねえ。どっからでもかかって来いよ」

「ほほほ……では遠慮無く」


 一瞬で間合いを詰めたコルネリアは、ドロテーにミドルキックを決めた。


「どうじゃ? 妾のスピードとパワーは更に上がってしもうたのぉ。ドロテー、お主もヴァンパイアになると良い」

「ハッ、ごめんだね!」


 ドロテーがお返しにハイキックを放つも、コルネリアはミリ単位で回避する。


「甘いのぉ!」

「そうだなっ!」


 ゴスッと鈍い音がした。コルネリアは呻き声を上げてその場に膝をつく。


「いつもギリギリでかわすもんなあ、お袋は!」


 ドロテーは、高々と上げた足を、踵落としへとつなげていたのだ。


「コンビネーションってのを覚えたんだよ!」

「ほほぉ……小賢しいのお」


 コルネリアは犬歯をむき出しにして笑うと、パンチの連打を繰り出した。


「そんな技、妾の圧倒的な強さの前には無力じゃ!」

「ぐぐっ……ナメんじゃねえ!」


 ドロテーも殴り合いに応じた。高さを取った方が有利なのだろう、ブワッと翼を広げ、お互い激しく体勢を入れ替えて空中格闘を披露する。


「ほほほ、終わりじゃあ!」


 黒いオーラをまとったコルネリアが、ドロテーの胴体に尻尾を叩き込む。


「うおおー!」


 ギリギリで、翼を羽ばたかせて地面との激突をさけたドロテーだったが、押され気味なのは否めない。


「ちぃっ、この衣装って、銀糸に黄色を塗ってるって聞いたんだけどな……」


 いや、待て。いろいろ待て。


「ドロテー様。少なくとも、その衣装一式に銀は使われてないです」

「ウソだろ!?」


 こっちの台詞だ。


「ともかく、あたいがお袋の動きを止める! そしたら注射してくれ!」


 依然としてコルネリアとの戦いは不利だった。他に吸血鬼は多いため、お嬢様たちはそちらの戦線を手伝っている。ピエールの【ホーリーライト】は有効だが、やはり【闇】で消されてしまう。決定打にはなり得ない。


「お袋! これで勝負をかけてやる! ジジババに習った最強の絞め技、ドラゴンテールチョークだ!」


 ドロテーはコルネリアにタックルをかけ、寝技に持ち込んだ。縦四方固たてしほうがためのようなマウントポジションを取って、尻尾で首を押さえつける形である。


「終わりだ、お袋ォ!」

「抜かせ! お主の技は、すでに妾も修得済みじゃ!」


 コルネリアは激しく体を揺すり、タイミングよくひっくり返した。


「うっ!?」

「のお、ドロテーよ! ドラゴンテールチョークとは、これの事じゃろ!?」

「あがが……!」


 一転、今度はドロテーが押さえ込まれた。このまま、意識をなくしたら終わりである。


「ほほほ、他愛もない……」

「ぐ、くそっ……」

「無駄じゃ、ドロテーよ! 妾が全神経を集中すれば、お主にひっくり返す術なぞないわ!」

「か、必ず返す……!」

「ほほ、強情じゃのぉ! 次に目覚めたときは、みなヴァンパイア……じゃ……」


 コルネリアは、急にフラつきだした。ドロテーへの押さえ付けも弱まっていき、いつしか最強の絞め技は解ける。


「へ、へへっ……。よお、ガイ……。よくやってくれたぜ」

「いえ、ドロテー様こそ」


 コルネリアの首筋に、私がワクチンを注射した。

 尻尾まで使った絞め技は、完璧に極まれば脱出不可能だが、それはあくまで1人の場合だ。


「多人数戦で、背中を見せるのは自滅ですね」


 ドロテーが、ぐったりした母をどかして立ち上がった。


「お袋の弱点は、あたいが技をかけたら、可能な限りその技で返してくることだ。つまり、あたいが絞め技をしかけたら、お袋も絞め技で返してくる」

「ドロテー様が技を狙った時点で、目的はほぼ達成していたというわけですね」


 目的は、倒すことではない。治療だ。


「頭脳プレー、お見事でした」

「へっ、言っただろ? あたいはコンビネーションを覚えたってよ」


 かつてのドロテーなら、最後まで1人で倒そうとしただろう。

 今は、自分が至らないことが分かったら、しっかりと切り替えた。


 ――殻を破ったな、ドロテー。


 黄金色の王女は、すぐに次の戦いへと身を投じていった。

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