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私はコレでやせました(300kg→3kg) ~悪役令嬢、育成計画~  作者: ラボアジA
9章 真相編

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176話目 ホーリーライト

 私は、兵士が集合するまでの間に、洞窟の内部情報を国王たちに書いた。


「なるほど。以前聞いていたのがここか」

「はい。私は奥の鍾乳洞に倒れていました。梁があったのはこの辺です」


 7ヶ月前、おかしなドワーフとニアミスし、そして今、吸血鬼が発生した。

 偶然とは思えない。


 山ほどのキューブを【軽量化】してもってきた兵士たちは、続々と補助呪文で固めていった。

 みなが集まったのち、国王が告げる。


「白魔法が攻防で重要だ。兵士たちはいつも以上に白魔道士を守れ」

「はい!」


 マルヨレインとブリジッタも、白のエキスパートなので駆り出されている。ドロテーは自分の母親を助け出すためモチロン来ているし、お嬢様も青の使い手として来ている。城に残っているのはミーケ1人だ。


 ――ここで全滅したら、悪夢の再来だな。


 内心鼻で笑う。ダークエルフのミシェルは、セレーナが協力法案を可決させて以来、夢を見ていないらしい。

 姉のピエールは、モーフィーやピルヨとともに、お嬢様を専門で守るチームに入っている。


 便りのないのはよい便り。悪夢が消えたのは吉報だと願おう。


 各自【解毒】薬を服用し、対吸血鬼用の注射セットも持つ。三文判ほどの大きさで、グッと押し込むと、少し針が出て薬が注入される仕組みだ。

 効くかどうかは分からない。だが、始めから諦めるなど論外だろう。


「作戦開始だ!」

「はい!」


 部隊がすぐさま洞窟へと突入した。





 入り口にあるゴブリンの住居エリアでは、吸血鬼の兵士と散発的に出会った。


「【ホーリーライト】ザマス!」


 マルちゃんが杖を光らせるや、吸血兵がのたうち回る。――おお、強いな。

 壁際に追い詰めたところで、【解毒】のアンプルを素早く注射。吸血兵はうなり声を上げたのち、ぐったりとした。

 ブリジッタが【生命感知】を使う。


「陛下。彼らの反応が、正常に戻りました」

「よし……まずは一安心だ」


 非情な決断を強いられるおそれもあったからだろう、国王は安堵の息をついた。


「この調子で、どんどん治療だ!」


 【ホーリーライト】や【神聖武器】、【神聖防護】を駆使し、鍾乳洞の入り口までを制圧する。


 しかし、順調なのもそこまでだった。


「ブリジッタ。ヴァンパイアは近くにいるか?」

「いえ、陛下。みんな奥の方にいます」


 指差した先には、【闇】が広がっていた。吸血鬼の状態でも呪文が使えるらしく、こちらの【光】が届かない。


「ふむ。向こうも我々の出方をうかがっていたか」


 ――敵味方、探知系の呪文が大活躍だな。


 吸血鬼と化したのは、コルネリア王妃やアルノルト衛兵隊長を始め、錚々たるメンバーだった。無論、中には【生命感知】の使える者もいる。

 おそらく、先ほどまでの兵士は捨て駒だったのだろう。【生命感知】は状態の変化も分かるので、ヴァンパイア化が急に収まったのなら、向こうも気付く。単独でノコノコやってくることはあり得ない。

 向こうはじっと、時が経つのを待てばいいのだから。


「ヴァンパイア化が進んでいる以上、踏み入らねばならないか」

「はい」


 切り傷も、直後であれば【治癒】で元通りになるが、時間が経ったあとでは、痕が残る。その痕は、【治癒】では治せない。

 国王は、黒キューブを掲げた。


「【無の領域】! 対象は、青と白魔法以外すべてだ!」


 その途端、吸血兵たちの【闇】が吹き飛んだ。こちらの補助魔法はほとんどその2色だったため、影響は軽微である。

 国王は、すぐさま【無の領域】を止めた。


「突撃!」


 戦いが始まった。相手の動きを白魔道士の【ホーリーライト】で制御しつつ、【解毒】の薬を使っていく。

 吸血軍団は、噛みつきが通じないと見るや、こちらを昏倒させようと狙ってくる。


「ほほほ……妾にその程度か」


 ――この声は。


 合戦の最中、こちら側の衛兵を尻尾で弾き飛ばす漆黒の王妃がいた。


「ヴァンパイアの力……気持ち良いぞ? 皆もなると良い」


 国王も他の王妃らも、他で大激戦を繰り広げている。

 お嬢様が振り向いた。


「ガイ、モフモフ! コルネリア様を押さえて!」

「はい!」

「承知したワン!」


 2人がかりで挑もうとするが、まずはモフモフに猛ダッシュして尻尾アタック、そのエネルギーを利用して私に回し蹴りを入れる。


「ホホホ……殺しに来れぬ相手など、妾の敵ではないわ」


 ピエールの【ホーリーライト】も、すかさず【闇】で潰してくる。お嬢様目掛けて一直線だ。


「マーサの娘よ。お主なら、少しは妾を楽しませてくれるかえ?」

「うぅっ……」


 マズいな。模擬戦の時より動きにキレがある。まともに接近戦が出来そうな人間は、軒並み吸血鬼だ。並みの人間が相手をすると骨が砕け散るぞ。


 ――私が行くしかない。


 リセットして体を再構築していると、金色の拳法着を身にまとった女が、コルネリアの前に立ちはだかった。


「ガイ、スラヴェナ。――ここは、あたいが行くよ」


 ドロテーが、拳をパシンと叩いた。

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