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163話目 あかるいせんきょ

 選挙の中間情勢が記事になった。

 2週間後には結果が出るため、あからさまなウソは吐かないだろうが、書き方1つでいくらでも大衆を操作できるのがマスコミだ。「勝ち馬に乗れ」と言わんばかりのバンドワゴン効果や、「こんな奴に負けちゃいそうですよ」と訴えるアンダードッグ効果など、手段は様々なので、十分注意して目を通す。



 ◆南部 定数4

 ガブリエーレ、フェリーチャ、ジャコモ前議員らが当選圏内。

 セレーナ、ディアマンテ候補が、ノヴェッラ議員の引退した枠をかけて激しく争う。

 アンジェロ候補が猛追。

 ヴァンダ候補は独自の選挙で戦う。


 ガブリエーレ 90000

 フェリーチャ 90000

 ジャコモ 70000

 セレーナ 70000

 【当落ライン】

 ディアマンテ 60000

 アンジェロ 50000

 ヴァンダ 10000




 ――ふむ。こちらが掴んでいる内訳と、さほど差はないな。


 新聞記事を見て、選挙スタッフや護衛はみな喜んでいるが、首をひねる。


「ヴァンダ候補は、ドン・ガブリエーレの娘ですから、最終的には彼の票になります。同様に、アンジェロの票が、ジャコモとディアマンテに流れますね」


 ボードに「最終予想図」を書き込む。


 ガブリエーレ 100000

 フェリーチャ 90000

 ジャコモ 90000

 ディアマンテ 90000

 ―――――――――――――――

 セレーナ 70000



「あと2万票です。気を引き締めて頑張りましょう」

「はい!」


 護衛チームから良い返事が聞けた。

 うむ、最初に票の横流しについて触れていたから、ショックも少ない。アイドル&悪役令嬢効果でじわじわと票も伸びているし、なんとか戦えるだろう。


 それよりも、気がかりなのは北の情勢だった。南にかかりきりで、北の情報はほとんど手つかずである。




 ◆北部 定数5

 マリーノ前評議長は盤石の戦い。

 クリスティアーナ、セコンド、マッダレーナの3新人とトビア前議員が当選圏内か。

 ロッセッラ、サルヴァトーランジェロ、テレーザ前議員らが後を追う。


 マリーノ 120000

 クリスティアーナ 60000

 セコンド 60000

 マッダレーナ 60000

 トビア 60000

 【当落ライン】

 ロッセッラ 50000

 サルヴァトーランジェロ 50000

 テレーザ 50000




 この3新人とトビアについて、市長に確認を取ってみた。


「ドン・マウロ。もしかして、彼らは……」

『うむ。ガイ殿の懸念どおり、評議長以外の4枠は、クスリの息がかかっているでおじゃるな』


 1対4か。これはキツい。

 賛成票を入れてくれたテレーザ議員に票の横流しをしても、2対3か。


「詰んでますね」

『猿とピンクは、今さら事情を察したようでのぉ。泣きついてきたようでおじゃる』


 ははっ、ザマァ……と、単純に言えないのが、政治の怖いところだ。

 そいつだけが沈めば万々歳だが、そんなことはあり得ない。

 ヴェスパー丸の船員を国民全員で選ぶのが選挙だ。そのとき、選ばれた船員の大半がヘッポコだったら、ヴェスパー丸すべてが沈没する。


“お前を選んだ覚えなぞない!!”


 こう、いくら喚こうとも、誰かが・・・選んだのだ・・・・・

 パープリンだろうと賢者だろうと、1人1票が絶対である。ヘッポコを選んだパープリンのツケは、国民全員がズッシリと負うのだ。まったく、素晴らしき制度である。


『おっほっほ……トビア以外の前職4議員で集まったさい、評議長がキビしい脅しを入れたようでおじゃるな。当選しさえすれば、協力法案に賛成するであろ』

「当選すれば……ですか」


 1万数千票ずつ横流ししてもムダだ。相手も同様に、1人の票を他の3人に分配する。


 2対3……。「反ドラッグ」対「ドラッグ」で見たら、27万対24万なのだ。ガッチリ組めば、3対2に出来るハズ。

 なのに、出来ない。


「ドン・マウロ。『反ドラッグ』陣営は4人ですが、議席が足りません」

『ほっほほ。北は大丈夫でおじゃるよ。ヒゲの議長は、やると言ったらやる。過半数を取ると言った以上、たとえ我が身が砕け散ろうとも取る。――そういう男でおじゃる』

「絶大な信頼を置いているんですね」

『若い頃から、難事件を1人で解決してきたでおじゃるよ、あやつは』

「分かりました。信じましょう」


 もとより、他に道はない。南だけで手いっぱいだ。




 翌日、今度はフェリーチャ船長から連絡があった。


『当病院にて、セレーナ候補と、クスリ撲滅のための懇親会を開きたいのですが』


 ――来たか。


 折り返し連絡すると言って通話を切ったのち、作戦タイムに入る。


「ガイさん。護衛の一件で、船長はすでに怪しんでるわよね?」

「はい。ですから、セレーナ様が敵地に行くのは絶対にダメです」


 それこそ、戻ってこれないだろう。


「でも、行かないと知識層の支持が減るわね」

「私が代理として行きます。やることがすでに定まった現状、参謀が一番フリーですからね」

「ガイさん……」

「なに、心配ないですよ。私はネクロ信者から覚えがめでたいそうですから」


 ちょっと中身が変わる程度で済むだろうよ、多分。

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