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私はコレでやせました(300kg→3kg) ~悪役令嬢、育成計画~  作者: ラボアジA
1章 出会い編

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16話目 骨の名は

「それにしても、お嬢様。私がリセットを狙ってることによく気付きましたね」

「何度も見てたしね。あと、あなたの骨を持っておけば、あたしが攻撃されたときのお守りになるかなって思ったのよ。戻す骨が選べるってのは初めて知ったけどね」

「ははは……私も初めてです」

「えぇ……ウソォ」


 他愛ない話をしながら、ふもとの町までの道なき道を下山していた。

 ワザと、明るい口調で振る舞うお嬢様。正直、深刻にされるよりもありがたい。




 残された時間は1時間を切っていた。

 リセットを使いすぎたらしい。




 戦闘のあと、すぐにお嬢様は調べてくれた。

 どうあっても間に合わない。

 それが分かったあとは、不思議と穏やかになれた。

 お嬢様がゴブリン4体を食べたそうだったときも、「どうぞ、お召し上がりください、お嬢様」と勧められたぐらいだ。

 むしろ、食べるため、生きるために相手を殺したと言い訳ができる。ありがたい。

 おかしなものだ。前世では、牛や豚を何匹も食ったというのに。


 意外な収穫もあった。

 ボスの革鎧だが、私が着けてみると、しっくりきたのだ。

 正確には、やや大きかったのだが、肉と皮があれば、ジャストフィットした感触がある。

 おそらく、鍾乳洞でこの世界の私は死んだ。その鎧を、ゴブリンが剥ぎ取ったのだろう。


 革鎧の内側部分には、名前が書かれていた。


 ガイギャックス。それが私の名前らしい。


「ええ~、カッコ良すぎない? それに、ちょっと長いし」

「普段はガイでいいですよ、お嬢様」


 ボスの持っていたショートソードも、他のゴブリンの物とは違ってしっかりした作りだった。杖や髪飾りに価値はないとのことなので、剣と鎧だけもらって下山する。


 歩かないという選択肢はなかった。

 歩ける事が嬉しかったから。


 その後、足取りが重くなってきても、少しずつ下山していた。

 遠かろうと、一歩ずつ歩く。

 お嬢様の父親がいる城下町はおろか、ふもとの町にすら辿り着かないが。


 半分ほど来たところで、お嬢様が止まった。


「ガイ……あなたの魔力が、もうすぐ底をつくわ……。ねえ、休みましょ……」

「いえ、私はまだ……」

「あ、あたしが休みたいの! こ、こんなに歩いたのは久々だし!」

「――分かりました」


 スライム様に配慮されてしまった。

 そう、配慮だ。

 私にも分かる。何せ、お嬢様より遅くなってしまったから。


 ふふっ……。私がこの世界でしたことは、カラスを追い払って、ゴブリンを倒して、スライムを助けただけか……。


 お嬢様は、横たわる私の側でじっとしていた。


「なんで……なんでガイが、こんな事に……?」

「分かりません。ですが……お嬢様を助けるために遣わされたのかもしれません」


 そう。助けられたのはスライムのお嬢様だけだった。


「行ってください、お嬢様。そして、あなたが活躍したとき、変なガイコツに助けられたという話をして下さい。それで誰かを笑わせられたら、幸いです」

「そんなのは……ダメよ」


 お嬢様は、私を上部に乗せて、そのまま歩き出した。


「ガイは、あたしが助けるわ」






 すぐバテた。


「ぜーっ……、ぜーっ……」

「フフフッ……。これに懲りたら、少しはお痩せください」

「もう……ほっといて、よ……」


 張り切って進むから、すぐ息が上がるんだよ。

 先ほどもゴブリンを食べたしな。お嬢様の戦闘力は53貫です。

 いえ、 53ゴミです。


「ちょっと……、何が面白いのよ」

「いえいえ、滅相もない」


 まあ、つかのま楽しめた。

 賑やかなお嬢様が黙ってしまうと、途端に静かになる。


「お嬢様、何か喋ってくださいませ」

「――ねえ」


 お嬢様は、いつになく真剣な声色だった。


「あたしは……スラヴェナ」

「存じておりま……お嬢様?」


 お嬢様は、自らの核を取り出した。


「ガイギャックス……あなたが生きるべきよ」

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