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私はコレでやせました(300kg→3kg) ~悪役令嬢、育成計画~  作者: ラボアジA
8章 選挙劇場編

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155話目 北の国から来たスパイ

 その後も、ざっと取り決めた。以下は一例である。



・たすきを掛ける

・服を統一する

・ボランティアを受け入れる

 →敵の工作員が紛れ込んでいると思え

 →セレーナ様を支えるのは自己責任



 また、各所にセレーナが候補者となる報告を魔具でおこなった。どこも友好的で、むしろ「変わって良かった」と喜んでくれる人もいたほどだ。

 ドン・マウロにも、カジノ構想案についてと、ネガティブキャンペーンは仕掛けない旨を伝えた。


「ほっほ……塔が血なまぐさくては敵わぬでおじゃるからの。暴力的な揉めごとは任せるでおじゃる。なに、警察を押さえておるでのぉ。向こうが暴れたら『暴行罪』、こっちのは『正義』でおじゃるよ?」


 うわぁ、レモンの代紋つよーい。

 味方としては、実に頼もしいお言葉だ。

 ――ああ、そうだ。ダメ元で聞いてみるか。


「ドン・マウロ。新聞はツブせませんかね?」

「やってもいいでおじゃるが、『権力の横暴』と喚き立てて、ゲリラ的にバラまくでおじゃるな」


 だよな、うん。それに携わる人間ごとツブせないと意味ないんだ。そこまではムリ、と。


「それとのぉ、奴らは今月と来月の新聞代をタダにする気でおじゃる。早くもセレーナ殿対策を打ってきたでおじゃるな」


 やれやれ、紙面に何を書かれるやら。


「ドン・マウロ。叩かれることが基本の、しんどい選挙になります。覚悟して下さい」

「おっほっほ……ギャング相手に覚悟を説くでおじゃるか? 裏社会では大ウケでおじゃる」


 ああ、釈迦に説法だった。






 その日から、みんな病院で寝ることとなった。セキュリティが1番高いらしい。


 翌朝、大女のシビッラに呼び出される。何の用だろうか。


「フン!」


 大振りパンチの一撃。先んじてバラバラになったが、何するかね。


「実は敵でしたか、シビッラさん?」

「フザけるな!」


 おう、病院内で大声出すなよ。


「骨め! 貴様、セレーナ様の出馬を止められただろう!」

「今更ですね。トゥーレイトです。そもそも、なぜ昨日咎めなかったんです?」

「――そのせいで、セレーナ様が死ぬと言われたのだ」


 なに?


「先ほど、ブリジッタ様から連絡があった。ミシェルというダークエルフの悪夢が変わったとな。選挙で負けたセレーナ様は、ネクロ信者の暴走を止められずに殺害されたらしい。骸骨王の復活も早まったそうだ」


 ロクでもない夢だな。


 私は速やかにリセットで体を戻した。


「言いたいことはそれだけですか?」

「当然、まだある」


 シビッラは、私の肩甲骨をつかんでニラみつけてきた。


「セレーナ様を……助けてくれ」


 おや。


「嫌っていたのでは?」

「当たり前だ。――だが、今わたしが護衛をしても足手まといだ。そもそも、選対の指揮など出来ん。――骨がセレーナ様を勝たせてくれたら、運命が変わる。どうか……頼む」


 歯を食い縛って、それでもお願いするんだな。


 ――お前もお付き、か。


「分かりました。もとより、そのつもりです」


 シビッラは頭を下げた。






 セレーナは、普段どおりだった。


「ガイさん、この記事見てちょうだい。『ノヴェッラ婆がついに引退すると言ったら、今度は孫への世襲!』ですって。そのスグ裏で、『ディアマンテ候補はノヴェッラ婆の孫で期待が持てる』って載せちゃうとか、なかなか笑えるわよ?」

「――話は伺いましたよ、セレーナ様」

「あら、シビッラが喋ったのね? お母様といい、深刻に捉えすぎよ」


 苦笑しているが、もし他の人間がセレーナの立場に置かれたら、親身になるのだろう。


「不器用な方ですね」

「軽い男ね、ガイさんは」


 セレーナは、ぐっと声をひそめた。


「口は重くしといてね。でないと、シビッラみたいにあなたへの怒りが増すだけよ?」

「心得ました」





 外に出て早速選挙モードに入ったが、すかさずヤジが飛ぶ。


「売国奴ー!」

「島から出て行けー!」


 すぐに護衛が捕まえにいくが、クモの子をちらすように逃げていく。


「セレーナ様。彼ら、何か持ってましたね」

「そうね」


 そもそも近寄れない。ならばと演説をしようとするも、売国奴コールが激しくなる。

 ネクロ教団のような狂気を感じないから、一般人だろう。


「お~? アンちゃんやー!」


 上空からの声に空をあおぐと、ピルヨが新聞の束を抱えて飛んでいる。


「いやー、号外配ってる言うから、もろぅて来たんやけど……。王女様、めっちゃワルモンにされとんで? ほい」


 素早く目を通す。


「なになに……『北の国から来たスパイ!?』」


 ふむ。「?」がイイ仕事してるな。


 今回の号外は、セレーナの出馬と、その売国奴っぷりに紙面が割かれている。


「ワテの家族は、みんな違ういうン分かっとるけど……。これはマズいんちゃうか?」


 ああ、マズイな。そのまま放置すれば。


「しかし、悪名は無名に勝ると言います」


 新聞を手の甲で叩いた。


「せっかく宣伝してくれてるんです。――セレーナ様、レッテルを貼られたら、修正して利用しましょう」

「分かったわ、ガイさん。勝つためなら何でもします」


 ん?

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