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私はコレでやせました(300kg→3kg) ~悪役令嬢、育成計画~  作者: ラボアジA
7章 ヴェスパーの悪夢編

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148話目 おかんとピルヨと、時々おとん

 私たちは市役所をお暇することにした。


「ほっほ……食事は中央エリアなら『ルイーザの酒場』が良いでおじゃる。あそこはマリーノ評議長の妹殿がやっておるチェーン店でのぉ、ギャングもあそこでは暴れぬでおじゃるよ」


 うむ、安心して食える店は重要だな。


 礼を述べてドン・マウロと別れたのち、私たちはその店でようやく食事にありつけた。パスタと赤ワインが美味い大衆酒場である。

 なお、セレーナ付きの護衛は、それでも立ったまま周辺を警戒していた。食いっぱぐれは大変だな。モグモグ。


「ガイさん」


 周囲が騒がしいなか、セレーナがスプーンで私を指した。


「その薬、食後に飲めと『船長』から言われましたけど、飲みますの?」


 めちゃくちゃトゲがあるね。


「飲みますよ」


 フェリー女を敵だと言われて気分を害するのは分かるが、可能性は高い。島はドラッグマネーに溺れる寸前だよ。


 私は食後に白い錠剤を飲んだ。


「うっ!」

「ガイさん!?」


 私は体を震わせつつセレーナを見た。


「――ウマい」

「殺すわよ」


 なんだよ、良薬口に苦しというじゃないか。ウマかったらビックリするだろう?


「こぉんばぁんはー!」


 その時、どこかで聞いた鳥のイントネーションとともに団体が入ってきた。


「あー! アンちゃんやー!」


 うわー、ピヨちゃんだー……って、ウソだろ?


 後から入ってきたハーピーたちも、私たちのテーブルの近くにやってくる。護衛がサッと構えるが、私に近づく40代女性については見事にスルーした。


「どーも、おニイさん。うちのピルヨが、ほんまお世話になっとりますわ」

「あ……え?」

「え~ぇ、そらもー、羽根を折って羽根伸ばそうみたいな子でっから、よーけ迷惑をかけとるんやおまへんか?」

「いえ……そんなことは」

「はー、ありがたやありがたや。あ、ウチらはピルヨのこと、盛大に送り出したんがつい昨日みたいやわーとか少~しお喋りしてたら、なんや渇き覚えたさかいな? ノドに魔力補充ですわー」

「おかん!」


 ピルヨが慌てて引き剥がしにきた。


「余計なこと言わんといて!」

「アホ! 王女様とお近づきになれたんやろ? お礼やお礼!」

「ありがとーだけでえーねん!」


 なお、他のハーピーはすでにビールを飲んでいる。はいはい、ピルヨの帰ってきたお祝いにかこつけて飲みたいんだな。


「あ、そういえばそっちのおネエさんは、どっかで見たことあるんよねー。どこやったかなー、んー、なんやノドまで出かかってるんやけどなー」

「セレーナ王女様や」

「あーっ! せやせや! どーも、ウチの子よろしく頼んますー」

「アカンて! その王女様はちゃうねん! 3女、3女! スラちゃんの方や!」


 おう、一気にカオスだ。


 セレーナが小声で言った。


「ガイさん、そろそろお邪魔のようだし引き上げましょう」

「いえ、島の話を聞くいいチャンスです。それに……彼らも1票を持っておりますよ」


 私は立ち上がった。


「お近づきの印に、今いる方の酒代を1杯ずつ奢ります!」


 すぐにどよめきと拍手が巻き起こった。


「このおニイちゃんは、えーニイちゃんやで~!」

「ほな、こっからここまで全部!」


 待てコラ。


「1杯ですよ、1杯!」

「せやでー? い~っぱいやろ?」

「ジョッキ1つ分!」


「「「ケチー!!」」」


 まあ、ステキな人たちだこと。




 ガソリンも入って舌も滑らかになったのか、バンバン情報が聞けた。


「なるほど。ヤケクソ解散……ですか」

「せやで」


 ピルヨのおとんやと自己紹介してくれたハーピーさんが、新聞について話してくれた。


「ワシャ号外好っきゃから、よーけ集めんねん、北も南もな。ほいたら、どーも同じこと言ぅとるハズなのに、印象が違うンや」

「ははあ、今回のは、北だとトモダチ解散でしたね。友がピンチの時に助けないのはどういうことか、みたいな」

「せやろ? 南では、法案が否決されたから、評議長がだだっ子みたいに解散させおったでーみたいな言い分やねん」


 うわぁ、新聞をやられている。テレビもあったら完敗だったな。


「せや、アンちゃん。おたくの子鹿ちゃんも言われとったで? ヘタレのバンビーナって」


 ぐっ……話題を変えよう。


「ピルヨさんのお父さん。これは内緒の話ですよ?」

「お、なんや、えー話か? ――よし、みんなー、今からガイくんが、ナイショの話するでー!」


 本当にノリいいな。みんなが聞く姿勢になった。


「実は、トモダチ解散の方が実態に近いんですよ」

「お? なんでそないな事が言えるんや?」

「その場にいましたので。ねえ、セレーナ王女様?」

「ええ」


 セレーナはうなずいた。


「イェーディルから、協力法案についてお願いしに来ましたの」


 あちこちから、「あー、そらそやわー!」「確定やん!」と声が上がる。


 まずは、一矢を報いたか。






 翌日、二日酔いになった。


「うぅ……」


 ああ、【解毒】の薬と酒は……相性が良すぎたな。というか、血液も脳もないのに、ドコで酔ってるんだ私は。あぃたたた……。


 ふと肋骨を1本外してみると、白くなっている。


 よし……反撃開始だ。

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