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145話目 もうヤダ、この島

 カレーのスパイスまでフツーに存在する世界で、クスリの製法だけ違うとはな。予想外も甚だしい。


 セレーナは、フェリーチャ船長からノォ婆さんの体を心配されていた。


「まあ、それではノヴェッラ様は、かなり危なかったのですね。やっぱり、こちらで診た方がよろしいのでは?」

「申し出は大変ありがたいのですが、お婆様たちも、他の患者さんに迷惑が掛かるからと」

「そんなことないですのに……。なんにせよ、ご無事で何よりでした」

「ありがとうございます」


 セレーナは頭を下げていた。


「ただ……お婆様は、次の選挙がキビしい情勢ですね」

「それでは、バンビーナさんが立候補のご予定で?」

「はい。彼女以外では、おそらくお婆様もお認めにならないかと」


 うぅむ、あの子鹿を立たせるのか……。

 そもそも、なんで婆さんは彼女に白羽の矢を立てた。鬼畜以外の理由はあるのやら。


「へ? ああ、アンちゃん、知らへんかったんか」

「どういう事でしょう」

「あのバンビちゃん、コロッセオ魔法部門のチャンピオンやで」


 ――え、マジで?


「大マジや。ワテ、こんな笑えへんウソはつかん」


 イェーディルの魔道大会にあたるもので、最年少優勝したらしい。えー、あのヘタレ具合で?


「そらまー、大会では命の奪い合いとかせぇへんからなー」


 なるほど……その差か。

 いくら大舞台とはいえ、安全に十分配慮された競技と、本気で殺しにきている実戦とでは、勝手が違うよな。


 おそらく婆さんは、精神さえ鍛えれば何とかなると踏んでいたのだろうが……ぐっと予定が早まったぞ。間に合うのか?


 セレーナと船長の2人は、今度は選挙戦について話していた。


「フェリーチャ船長。たしか、議員の死亡時に備えて、後継者を指名しておく制度があったハズですが」

「ええ、抗争防止法ですね。総選挙から3ヶ月以内に当選者が殺された場合、予め選んでおいた後継者が代わりにつきますわ」


 物騒なルールだな。

 セレーナは、自分でメモを取ってる。優等生だな、偉いぞ。


「では、選んでなかったり、なれない事情があった場合はどうなりますか?」

「1人だけでしたら、そのまま空席ですね。2人以上の欠員が出ると、補選が行われます。空席状況によって、北だけ、南だけ、あるいは全部となりますね」


 なんか、敵よりも味方の裏切りが増えそうな仕組みだ。


「それとセレーナ様、これ以外の理由で、総選挙から3ヶ月以内に議員資格を喪失したときは、次点の候補が繰り上がり当選します」

「長期間にわたって欠員が出たり、頻繁に補選となるのを防ぐためですね」

「はい」


 ふむ、その辺は中選挙区でも似たような仕組みがあったな。


 船長にクスリ……じゃない、普通の【解毒】と【呪い解除】の薬をもらった私たちは、彼女の当選を祈願して病院をあとにした。




 次は、婆さんたちのいる病院にやってきた。せっかく南の島に来たのに、やっていることが病院のハシゴか。いや、いいんだがね。

 ちなみにピルヨは、ギャング絡みの病院と聞いたら「ほななー」と言って、ピューと去っていった。――お前、1人は死亡フラグじゃなかったのかよ。


 病院に入ってすぐの待合室にて、強面な魚人たちの中、大女のシビッラがいた。


「セレーナ様」


 包帯でウデや肩をぐるぐる巻いており、傷の深さがうかがえる。


「ノヴェッラ様が、ギャングへの挨拶を頼むとのことです」

「分かったわ」


 支持者への挨拶回りが、この島ではギャングというわけか。


 セレーナは、辺りを見回した。


「ところで……候補者はどこに?」

「ここで囲うそうです」

「なるほど。彼女まで襲われたらオシマイですものね」

「いえ……性根を鍛え直すと」


 虎の穴ならぬ、魚の穴かい。


「公示日までに仕上げるそうです。生き残れるように」

「そう」


 私の知ってる選挙とは、チト違うな。





 今度は、ドンの居場所を知っているという、島のエラい人に会いにいった。

 タテに長いハンバーグ型のシニャーデ島。その中央にある市役所の受付で、市長のアポを取る。


「お婆様の名前を出したらスグだったわね」

「そうですね」


 市長とギャングも繋がりがあるのな。はいはい。

 SPからボディチェックを受けたのち、市長室へと通される。


 そこには、公家のような眉をした魚人の優男が、市長のイスに座っていた。


「よく来たでおじゃるな、セレーナ王女殿。我はマウロと申す者。シニャーデ島の市長をやってるでおじゃるよ」


 マウロ市長はにこやかに出迎えてくれた。


「ささ、王女殿。なんでも言うでおじゃる」

「では単刀直入に。お婆様の支援をしているという、ギャングのドンに会わせていただきたいの」

「ほほぉ……では、少し待つでおじゃる」


 市長は机の端っこに置いてあった魔具を起動させた。電話で連絡するのかと思ったが、どうやらそうではなく、盗聴防止らしい。

 もう1個、今度は引き出しから小箱を取り出した。優雅にフタを開け、レモン型の金バッジをつける。


「お待たせしたでおじゃる」


 まあ、ステキな島だこと。

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