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140話目 そこはセンジョウ

 素早く宿を引き払ったつもりだったが、ノォ婆の護衛チームにセレーナの護衛まで含めると、他の評議員たちより遅れた船の便となった。平日だが、結構混んでいる。


「もらって来といたでー」


 ピルヨが、配られていた号外を1部見せにきた。4部か5部はもらっていたハズだが、「おとんが号外集めンの好きやねん。チャンスあったのに取らへんかったらムッチャどやされるわ」と、他のは仕舞っていた。保存用がいっぱいあるんだな。


 見出しには、「トモダチ解散!!」との文字がデカデカ踊っていた。おおかた、議会の外でマリーノ評議長が答えているのを即座に文字起こしして新聞にしたのだろう。イェーディルへの協力法案が否決だったからというので、「困ったときに友を救わない自分たちはなんだ」ということで解散にした旨が記されている。――ふむ、引きずり下ろされそうになってから解散という形になるのを嫌って、素早く伝家の宝刀を抜いたわけか。


 その下には、議員名と年齢、この法案に賛成したか反対したかが書かれている。



 北 マリーノ 47 ――

 南 ガブリエーレ 48 反対

 南 ノヴェッラ 61 賛成

 北 サルヴァトーランジェロ 27 反対

 南 フェリーチャ 50 賛成

 北 ロッセッラ 26 反対

 北 トビア 29 反対

 南 ジャコモ 19 反対

 北 テレーザ 18 賛成



 ――ん? フェリーチャ議員、ごじっさい……。


「50才!?」

「あはは、アンちゃんもビックリしたやろ? せやでー、あの船のネーちゃん、50の大台やねん」


 うぅ~む、ロッセッラと同じぐらいだと思っていた。魔女だな、魔女。

 っと、いかんいかん。真に聞くことは別にある。


「ピルヨさん。ここに書かれた北と南は、選出場所でよろしいのですか?」

「せや! 北の大陸組が5人で、南の島組が4人やで。それぞれのエリアで多く票取ったモンから議員になるわけやな。ネズミの学者センセーが決めたから、チュー選挙区制言うらしいわ」


 ふむ。偶然だろうが、とある国にかつてあった中選挙区制に似ているな。


 ノォ婆の護衛の一人に尋ねてみた。


「つかぬことをうかがいますが、公職選挙法とか、政治資金規正法といったものは……」

「なんだ、それは?」


 だよなー、うん。気に食わない候補者を物理的に排除する国で、なんとも愚問だった。一応、クスリの所持、使用は警察が取り締まるって聞いただけでもホッとしたよ。


 む? いかん、また鼻がムズムズする。客船でも、屋内だとダメなのか?

 その時だった。


「ああああいあー!!」


 突然、すぐ近くにいた客が暴れ出した。


「ゴブリンゴブブブリンどもー! どっから出やがったー!」


 はあ?

 と思ったら剣を抜こうとし始める。――おいおい。

 すかさず襟首を絞め、剣を掴む手をギリギリと締め上げるも、目が完全にヤバイ。


「モンスター野郎がー! くんじゃねー!!」


 ああ、否定はせんが落ち着け。

 ウェイトがないので、寝技が極まらない。激しく抵抗されるので、こっちも必死だ。


「アンちゃん!」


 ピルヨの加勢でなんとか取り押さえた。やれやれ、荒事の専門家がいっぱいいる中で、何も私の所で起きなくてもいいのにな。そう思いつつ顔を上げると。


『うああああー!!』

『なんだァー、お前らー!!?』


 見ると、至る所で暴走した客が。


 なっ……コイツだけじゃないのか!?


「テメーら、ヤク中どもを落ち着かせな!」


 ノォ婆の護衛連中が、すぐさまジャンキーたちを取り押さえていく。一般客は悲鳴を上げて、ノォ婆の後ろへ。セレーナも、次期候補とかいうバンビーナとともに、後方で控えている。


「ったく……、カタギを巻き込むんじゃねェよ」


 ドスッ。

 そのとき、逃げてきた客の1人がノォ婆にブツかった。パニックは分かるが、落ち着け。


 ――ん?


「ぐっ……う、ぐぐっ……」


 ノォ婆は、そのままズルズルと倒れていった。客の手には、血塗られたナイフが。


 ――マズい!


「はははははは! 骸骨王さまバンザーイ!!!!」

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