表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/188

14話目 部外者は去るべし

 カラスめ! どこまでも邪魔してくれる!


 頭を振った私は、スライムのお嬢様に向き直った。


「その核のヒビですが、治せますか?」

「う~ん、難しいわ。こんな事例は初めてだもの」


 漏れている魔力が、依然としてゴウゴウ燃え盛って見える。


 ――命の尽きるさまを見せつけられるのは、さすがにキツいな。


 たまらず、【魔力視覚】をオフにしてもらった。玉を返してもらい、頭蓋骨の中にしまう。


「お嬢様。玉の魔力は、どのくらい保ちますか?」

「10時間ぐらいだと思うわ。――ごめんなさい」


 心なしか縮こまるスライムのお嬢様。


 ああ、腹をコワしたせいで時間が減ったと思っているんだな。


「悪気は無かったので、OKです」


 知らなければ、回避しようもない。


「それより、直せる方に心当たりは?」

「あたしのパパなら確実に直せるわ」

「そこまでの道のりは?」

「洞窟から出ないと分からないわね」

「ならば出ましょう」


 私も、知ってそうな奴に1人だけ心当たりがあった。

 カーマインを飼っていた爺である。


 ――もっとも、あいつに直してもらった場合、館からは決して出られないと思うがな。


 万一出られたとしても、その存在は「今いる私」じゃないだろう。


 先ほどのゴブリン達の居住区を抜け、ダンジョンの出口を目指す。


「む」


 後ろのお嬢様を手で制す。


「なに?」

「新手です」


 手短に答える。

 全部で4体。まだ気付かれてはいないようだ。

 そのうち1体は、さっきのボスよりもデカく、いい武具をつけていた。


 ――なるほど、コイツが真のボスか。


 その周りには、胸のふくらんだゴブリンが3体。女だろう。それぞれ、赤、銀、白の頭飾りをつけている。

 奴らは、まっすぐ向かってくるようだったので、迂回して出口を目指す。

 幸い、鉢合わせすることなく回避できた。


「ギェ!? ギェ、ギェギェ~!!」


 背後から、甲高い叫び声がした。仲間の遺骨に、女ゴブリンの誰かが気付いたらしい。


 ああ、恨みはなかったが、すまんな。

 部外者は速やかに去る。また一族を増やしてくれ。






 私とお嬢様は、奴らに気付かれぬように洞窟の入り口から出られた。

 出た先は、森の中。山の斜面である。

 木々の切れ間から、ふもとの町が見える。町はそれなりに大きいようで、中央には教会のような建物がそびえ立っている。


「あの大聖堂は、ソネの町!」


 お嬢様が興奮して跳ねた。


「良かった、知ってる所よ!」

「お父様も、そちらに?」

「いえ、パパはイェーディルのお城……城下町にいるわ」

「そちらは、どのぐらい離れてますか?」

「えーっと……6時間ぐらいかしら」


 不測の事態を考えたら、相当厳しいな。

 だが、行くしかないか。


 スッと動いた、そのときだった。


 ボシュッ!


 火の玉が襲ってきた。


「なにっ!?」


 たまたまあのタイミングで動き出したため、回避できた。そうでなければ直撃だっただろう。

 慌てて周囲を見回す。


「あ、あそこ!」


 義肢の先へすぐさま目をやると。


「ギェギェ……! ギェギェギェ!」


 20m後方の木のカゲから、赤い頭飾りのゴブリンが杖を向けていた。


「なっ……!」


 道らしき道などなかったぞ。なぜ正確に、私達を追ってこれたんだ……?


 バレたことが分かったのだろう。先ほどのゴブリンどもが4体、勢揃いで出てきた。


「ギェ~ギェ~!」


 銀の飾りをした女ゴブリンが、杖に銀色の光を集める。

 すると、私の背負い袋がぼんやりと光り出した。


「あぁっ……【追跡】!」

「なんです、それは?」

「愛用の品を対象にするとね、その物のありかが分かるの!」


 ふむ。それで背負い袋が光った、というわけか。

 途中で捨てることもないだろうし、対象に取るにはちょうど良い品だな。チッ。


「ギェギェー!!」


 ボスが咆哮を上げた。ショートソードを打ち捨てると、背負っていた棍棒を両手持ちにして、前に出てくる。


「敵討ちってわけか……」


 どうやら部外者は、去れ、ということらしい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ