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私はコレでやせました(300kg→3kg) ~悪役令嬢、育成計画~  作者: ラボアジA
6章 VSサバ軍団編

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122話目 青く塗られた青の中で、ボッてボラれて生きるのさ

「馬鹿な!」


 ジェラールが吠えた。


「黒キューブの製造は大侵攻の前までだ! 我らが今作っているのは、赤と茶色だけであるぞ!」

「で・す・か・ら。『黒を製造していない』保証として、有資格者の監督が必要なのです。お・わ・か・り?」


 サバ社長は、子供に言い聞かせるかのように指を振った。


 ――ダメだ。完全に建築の時と流れが一緒だ。あのときはトカゲ師匠を連れてくれば良かったが、今回は違う。コイツの自信からして、町の資格者は押さえている。


 もっとも、引き下がるつもりは全くない。この手の輩が資格者に「交渉」を持ちかけたのなら、私も彼らと「お話」すればいい。


 そんなことを思っていた時期が私にもありました。


「オーッホッホッホ!」


 突如、お嬢様が高笑いを始めた。――なんだ、バグったか?

 お嬢様は、前に出てきて私の立ち位置と変わるさい、「任せて」と耳元でささやいた。――分かった、任せよう。


「サーバ社長」


 悪役令嬢モードを絶賛発動中のお嬢様は、つなぎ姿のまま、羽付き扇子をファサッとあおいだ。


「お仕事を肩代わりするご提案ですけど……話になりませんわ」

「あら、スラヴェナ王女様」


 大物が釣れたと知って、サバは眼鏡を光らせた。


「わたくしども『出目ピン』は、善意の申し出を致したまでのこと。おイヤなら、もちろん拒否なさってよろしいのですよ?」

「善意? 相手の弱みにつけ込むのは悪意と申しますわ。ヴェスパーのお国ではどうか知りませんが、ここはイェーディルですの」

「あらあら……これは失礼。商売をやっていると、どうにもスレてしまいまして。王女様、ご容赦くださいな」


 サバは丁寧に膝を折った。サバ折り。


「ですが……王女様、本当によろしいのですか? マルヨレイン王妃の新店舗用に加え、王家の新年祝賀パーティーにもキューブはご必要なハズ。どちらも先延ばしに出来ない、重要事項でしょう?」


 だよな。とくに新店舗は、早く作ろうとしたのがアダになるとか、なんて皮肉だ。


 しかしお嬢様は、余裕たっぷりの様子だった。


「サーバ社長。資格のお名前、なんて言うのでしたかしら」

「ええ、魔道危険物取扱士ですわ。略は……」

「マキトリ」


 お嬢様が、セリフを奪った。


「2級の1次試験は、高等教育を卒業、もしくは卒業予定であれば免除となりますわ。教育費は高額でしたが、ありがたいことにお父様から出していただきましたの」

「――は?」

「2次は、『やきやき君』の温度に泣かされましたわね。出題範囲が幅広くて、2回も落ちましたっけ」


 サバ社長は口をパクパクさせている。おう、魚人はみんなコイか。

 つまり、お嬢様は……。


「3回目で取りましたのよ、マキトリの資格」

「なっ!?」


 サバは慌てて両脇の黒服を叩いた。


「ボサッとしてないで、調べなさい! ウ、ウソに決まってるわ!」


 お付きの1人が魔具で連絡を入れた。しばらくして、愕然とした顔になる。


「も、持っているそうです……」

「はあ!? なんでよー!」


 お嬢様は、ニッコリほほえんだ。


「お・わ・か・り?」


 今日もノリノリだね、お嬢様は。


 サバは指の爪を噛んだ。


「さ、先ほど王女様は、後ろでゴソゴソされてましたわね……」

「ええ、それが何か?」

「お父様に頼まれたのですね?」

「は?」

「ですから、持ってることにしてくれと……」


「無礼者!!」


 お嬢様は扇子でビシッとサバを指した。


「そんな配慮が行われたことなど一度もないわ!」

「ヒィッ!」

「資格制度……いえ、国への侮辱よ!!」


 震え上がるサバをよそに、私はお嬢様をなだめに掛かった。


「お嬢様。そろそろこの方々にはお帰り願いましょう。工場の仕事を行いますので」

「そうね、ガイ。――サーバ社長。申し出は一切不要! お引き取りを」


 サバ一味は逃げるように出て行った。トッつぁん警部だけはサッと敬礼して去っていく。


 彼らが消えたのち、工場は賞賛の嵐だった。


「なんで持ってたんですか、王女様ー!?」

「スゲー!」

「2級でもメチャクチャ難しいのに!」


 一方、王女様は私の肩に縋っていた。


 ――ああ、よく頑張ったよ。


 みんなを仕事へと促すさなか、お嬢様が呟いた。


「ブノワ老師がね……。この資格を持っておくと、将来黒キューブ絡みの《魔力視覚》も出来るからって……。魔力が少ないと思われてたあたしにも、魔法の仕事に携われるようにって……」

「はい」

「あたし、2次のみでも3回かかったわ……。トゥーサンさんもスゴいし、マケールさんはありえないほどスゴいのよ……」


 彼らは当然1次試験からだ。資格を取ったからこそ、スゴさを実感しているのだろう。


「お嬢様」

「なあに?」

「つかぬことを伺いますが、なぜもっと早くおっしゃらなかったのです?」

「ええっと……」


 途端にお嬢様の目が泳いだ。


「あたしね。ずっと、『マキトリ』で覚えてて、正式名称だとピンと来なかったのよ」

「ああ、それを後ろで確認しておられたのですね」


 ――自分の資格ぐらい覚えとけ!


 しかし、これを持っていたことはグッジョブだ。

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