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115話目 強い守りはガイ次第

 翌日。意外な所から防御力アップのワザが聞けた。


「ガイさ~ん」


 笑顔のトカゲ建築家、イスマイルだ。今日はせっせこレンガを作っている。


「イスマイルさん。今日はコタツはよろしいので?」

「ちょっと暖かさが戻ったので」


 ふむ。小春日和の今日も入ってたら、冬はコタツ生活確定だったな。


「ガイさん。今回のゴブリン襲撃は早いですね」

「ええ、そのようです」


 国王からお触れがなされたので、みな知っている。もちろん、対策も万全だし、年末のチャリティオークションも予定通り行うとアナウンス済みだ。


「ボクの方に、国から特製レンガを作ってくれと依頼が来まして。すみませんが、こっちを先にやってます」

「ええ、お構いなく」


 人命を守るためなら、そちらが優先されるべきだろう。


 イスマイルは、練り合わせたペースト状のものを魔法で真空状態にしていき、これまた魔法で小さなレンガブロックに成型していた。ある程度まとまった数が出来たら、魔法で熱風を吹かせて乾燥させたのち、数名の作業員が次々とそれを台車に乗せて運んでいく。

 イスマイルが、視線に気付いてほほえんだ。


「ガイさん、気になりますか」

「ええ。鮮やかです」

「照れますね」


 じっさい、手際がよかった。ゆっくりに見えるが、達人の動きにはムダがない。

 今も、茶色のキューブを使い切ったと見るや、スムースに次の物へと持ち替えている。


「建設関係は、茶色の使える人って多いですよ。【力場】で物理的な壁を作ったりとか、【空気】の逆呪文で真空状態を作ったりとかで」


 ――ん?


「イスマイルさん。【力場】の壁、とは……」

「え? ああ、通り抜けできない半透明なフィールドを作るんです」


 強い。強すぎる。


「イスマイルさん。私もそれを覚えたいんですが」

「はあ。ですが、魔力が何種類もあると、まずは回路をつなぐ所から……」

「運の良いことに、茶色だけです」

「おお、なら大丈夫ですね」


 渡りに船とはこのことだ。

 イスマイルは、レンガを作りがてら教えてくれた。


「このペーストも、【力場】で囲ってるんですよ。ガイさんは茶色の特化型ですから、ちょっとやり方を覚えれば、【力場】も出せると思います」


 頼もしいお言葉だ。


「出す際は、『壁』をしっかりとイメージして下さい。『ドーム』や『部屋』はその後です」


 ふむ。


「両手を開いてみるといいですよ。ちょっとやそっと押してもビクともしないレンガが目の前に表れたイメージで」


 なんだかパントマイムみたいだな。――っと、指の骨がアツくなってきた。


「お、茶色く光ってますよ。もうちょっとで出ます」


 む~~~~ん。


 パンッ!


 茶色の光が弾け、目の前に大きな金の壁が出た。


「ガイさん。出ましたね」

「ありがとうございます」


 恐る恐る触ってみる。半透明の金色で、トカゲ師匠の【力場】とは少し違う。


「より透明に近づけたりも出来るんですか?」

「練習あるのみですね~。【力場】は極めると自在に動かせますから、重宝しますよ」


 トカゲ師匠は、小さな【力場】を直方体のように展開して、レンガになる前のペーストをギュッと押さえ込んでいた。


「ここに【空気】の逆呪文を撃っていくと、うまいこと真空状態になるんですよ~」


 ――ほほお。


「つかぬことを伺いますが、【力場】で人を全方向から囲んだあとに【空気】を消していったら……」

「おぉっと、発想が怖いですよ~?」


 師匠はどこまでも笑顔だった。


「一応言っておきますと、生物がいる【力場】の空間は、圧倒的にその生物の魔法抵抗力がありますからね。【空気】をなくしたり、あるいは【水】で攻めたりとかは、メチャクチャ時間が掛かりますよ~」


 チッ。生きた魚をそのまま真空パックは無理か。お嬢様が死んだゴブリンしか食べられないのと同じだな。


「それと、ガイさん。物理的な壁って言いましたけど、実は思ったほど強くありません。たとえば、今ガイさんが出した【力場】なら、ノック3回ぐらいで壊れるハズですよ」


 え?


 コンコンコン。


 パリーン。


「――脆いですね」

「魔力をこめれば、もうちょっとは強くなりますが……。基本、生き物を閉じ込めて何かするのは無理ですね」


 残念。

 しかし、レンガの成型ならうってつけだし、【力場】内で風を吹き付けるにも向いている。なるほどな。


 私は、師匠に【空気】と【風】も教えてもらった。


「ガイさん、特化しているだけあって、飲み込みが早いですね」

「教え方が上手だからですよ」


 実はガラにもなくワクワクしていたりする。少しとはいえ、魔法が使えるようになったのだ。


 ――密かに練習してもダメだったんだが、イスマイル師匠は要点を心得ていたのか、すぐに使えるようになった。プロのプロたる所以だな。


 そんな師匠は、全然偉ぶらなかった。


「ボクは、ガイさんってもっと怖い人だと思ってました」

「おや、なぜです?」

「スラヴェナ王女様とか、オジロンさんとか、あんまり良くないウワサを聞く人のカゲによくいらっしゃるので」

「誤解ですよ」


 悪いウワサだね。

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