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私はコレでやせました(300kg→3kg) ~悪役令嬢、育成計画~  作者: ラボアジA
6章 VSサバ軍団編

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114話目 こいよ、ゴブリン! 魔法なんか捨ててかかってこい!

 建築チームの尻を叩いてきた旨をマルちゃんに報告した。

 その後、エルフ工場に戻ると、ちょうど休み時間だったようで、お嬢様がテオ君とお話ししている。


「テオ君は、お昼休みの間に、キチンと食べ終わりたいのね?」

「そうなのです! テオは、少しでも早く食べきりたいのです!」

「ん~。じゃあ、魚の骨をより分けるのは……」

「あれは楽しみなのです! ヨジヨジ分けるのです!」

「そっか。じゃあ、その食べ方は残そうね」

「はいです!」


 テオ君、嬉しそうだな。


「ん~っと、口はひとつで、食べる能力には限界がある、と。なら、テオ君? 最初にサラダを食べるといいわ」

「分かったです!」

「それで、モグモグ食べてる間に、魚の骨をヨジヨジ分けるの。で、口の中がカラっぽになったら、また、ご飯やサラダを食べるといいわ。それで早くなるハズよ」

「はいです!」


 あー、小骨を取ってる間、テオ君の口は止まってたからな。

 ――っと、お嬢様が気付いた。


「ガイ、お帰り~」

「ただいま戻りました、お嬢様」


 私は歩み寄った。


「テオ君から、食事時間の改善をお願いされていたようですね」

「えへへ……見よう見マネだけどね」


 お嬢様はほほを掻いていた。


「なんかね、呪文とか資格とか、遠回りなことばっかりやってたけど、結局ガイからの指導が一番役立ってる気がするわ」

「評価していだたき、ありがとうございます」


 私は深く頭を下げた。


「ですがお嬢様、急がば回れとも言いますよ? 呪文も、《魔力視覚》に【排水】と、大活躍だったではないですか」

「ん~、まあね~」

「頭の中に入れたものは、荷物になりません。持っておけばおトクですよ」

「ガイが言うと重いわね。体は軽いのに」

「ははは」


 ナイス、骨ジョーク。


「でもね~、時間がね~。おんなじやるにしても、あたしがやってた事ってチグハグだったし、損したかもな~って」


 ああ、費用対効果の話か。


「お嬢様、まっすぐな道はツマラナイですよ?」

「でも、ガイってば、マルヨレイン様の新規店を早く作らせようとしてるでしょ? キューブのときもそうだったけど、効率のいい方が、やっぱりいいんじゃないの?」


 おっと、これはなかなか深い質問だ。


「お嬢様。効率の良さを知るのは、いいことだと思います」

「ほらね」

「ですが……たとえ効率が悪かろうと、自分の好きなことは行いますよね?」

「んー……そうね。夢王子シリーズとか、『面白い』以外の役には立たないわ。だけど、新刊が出たらやっぱり読みたいし」

「それは続けられて良いのですよ。――要でない所は、余裕がありますから」

「意外~。てっきりガイってば、効率を追求すると思ってたから」

「全体を見るのが大事です。――なんのために生きるのか。その目標さえキチンとあれば、少々雲が出ても、必ずその星を目指して進むことができます。晴れた日には寄り道して、『やる気』の回復を図って下さい。そして、嵐の日には全力で立ち向かうんです」

「分かったわ。そうよね、何があっても立ち向かう」


 お嬢様は力強く頷いた。






 仕事が終わって城に戻ると、ダークエルフ女史のピエールがお嬢様の部屋を訪ねてきた。


「スラヴェナ王女様。ゴブリンの大侵攻が確認されました」

「ふぇっ!?」

「アルノルト隊長率いる偵察隊は、急ぎ戻るそうです」

「ええ~っ!? しょんな~!」


 お嬢様。自室だからって、妙な声を出すな。


「ちょっと~、ピエールさ~ん。今年中に来るって、かなり早くない? いつもは、あっても年明けぐらいでしょう?」

「はい。ですが、事実です。誘導部隊によると、2週間ほどでここに来るようですね」


 ハーピーや竜人などが、つかず離れずの距離を保ったまま、ゴブリンの好きな匂いで誘導するそうな。王都に引き寄せるのは一見怖いが、兵站へいたんや医療サポートの充実を考えると、実は一番効率が良い。

 頭を抱えるお嬢様の代わりに、私が質問した。


「町の外で撃退するんですね?」

「ああ、もちろんだ」


 ピエールは、私相手にはこの口調である。


「今回は北から来るようなので、そちらに軍を展開する」

「戦いの際は、志願兵などもいると聞きましたが」

「うむ。比較的、戦いのユルい場所に配備されるな」

「――お嬢様も?」

「強制ではないが……あの魔道大会の戦績で引きこもっているようでは、大減点だろう」


 まあ、そうなるよな。


「あたし、ヤダー! 勝てないんだってば!」

「お嬢様。私が守ります」

「何百匹も来るのよ!? 魔法だってバリバリ使ってくるのよ!? 当たり所が悪かったら、死ぬのよ!?」


 まったくもってその通りだが。


「ではお嬢様。誰かが守ってくれるのを見てますか?」

「――ねえ、ガイ」

「はい」

「本当に、守ってくれる?」

「必ずや」

「うん……なら、やる。ガイが守ってくれるのを見て、あたしも戦う」


 ふふっ……。まあ、よく言ったよ、お嬢様。

 しばらく、戦いとは無縁の生活だったからな。


 私も、よりお嬢様を守れる術を身につけよう。

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