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私はコレでやせました(300kg→3kg) ~悪役令嬢、育成計画~  作者: ラボアジA
1章 出会い編

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11話目 軽い存在

 おい、カラス! どこかへ行け!


 祈るような気持ちだったが、カラスは無情にも「カァー!」と鳴く。


「ん~? そこかのぉ~?」


 爺が壺をグラリと傾けた。危ない!


「いや~、おらんぞ~?」

「カァー!」

「ほっほほ~! 覗いてみたがおらんわい~!」


 のぉ~、ほ~れと、壺を軽々持ち上げる。


「なんせ、ワシの目は【魔力視覚】が入っとるからの~。どんな擬態をしようが、見えさえすれば逃さんワ~イ!」

「カァー、カァー!」

「ふぉっふぉふぉ~! ん~、部屋におるんじゃな~? むふ~、ネズミか~? ゴキブリか~? 安心せ~い、今、【毒霧】を焚いてやるからの~ぉ。ほ~れ~!」


 爺が叫んだ瞬間、匂いが変わった。ピリつくような刺激臭。


「ふぉふぉふぉ~、一息吸えばカラダが痺れ、二息吸えばたちまちあの世行きじゃ~!」


 ――この爺、なんて呪文を使いやがる。


「カァー、カァー!」

「うんうん~。カーマインには、耐性をつけとるからのぉ~? そーでない奴はイチコロじゃ~」

「カァー!」

「おぉ~、ワシが上機嫌が理由か? ふぉっふぉふぉ~! 近々、巨大なスライムの検体が入るからじゃよ~! どっかの貴族とかいう触れ込みじゃがの~。な~に、ワシにとってはデカさが大事じゃ~!!」


 ――その検体、心当たりがメチャクチャある。


「そもそも、スライムというのはのぉ~。よく反応してくれて、実験には持ってこいなんじゃが、いかんせん、弱い個体が多くての~ぉ! 今度のは、相当デカいらし~から、ウデによりをかけて、イ~ッパイ試したいんじゃ~! 複合毒の検査ができるぞ~?」

「カァー、カァー!」

「おお、そうか、うん~! カーマインも嬉しいか、のぉ~?」


 そのとき、遠くで「イ゛ェアアアア!」という呻き声が聞こえた。


「お~っと、イカンイカ~ン。薬物実験の途中でのぉ、薬を投与しっぱなしじゃった♪」

「カァー!」


 どうせロクでもないことだろう。


「お~、そうじゃ。カーマインも見に来るか? もうじき、楽しい痙攣が見られるぞ?」

「カァー!」

「そうかそうか。ではおいで~」


 爺は扉を開けた。


「しっかしのぉ~。この壁も、【石柱】で開けたはいいが、色々入って来とるからのぉ~。そろそろ塞ぐか」

「カァー」

「ほっほほ~。今度からは、お外でお遊び♪」


 バタン!


 扉が閉まり、爺の足音が遠ざかっていく。戻ってくる気配はなさそうだ。


「――ふぅ」


 私は、厚手の黒い布を取り払い、自分の骨をポイポイと壺の外に出していった。

 薄暗い中、ロクに壺を覗き込まれなかったのが幸いした。持ち上げられたときは肝を冷やしたが、元々が重い壺である。3kg程度では気付かなかったらしい。


「それにしても」


 【魔力視覚】に、【毒霧】だと……?


 最初は、カラスの集めたドクロに紛れようかとも思ったが、見られていたら危なかったワケか。

 また、呼吸をする生物でも、生きてはいなかった。


 体重も軽ければ、呼吸もしない、軽い存在。


 くそっ。


「バケモノめ」


 リセットして体を再構築すると、すぐに穴から出て飛び降りた。





「あ、良かった~」


 落ちた際に再びバラバラになった私は、スライムのお嬢様を見上げた。


「なんか、上の方で変なお爺さんが叫んでたでしょ? すっごく不安だったのよ」

「それはそれは。ご心配をお掛けしました」


 チラリと、先ほど落とされた人を見た。

 見事に、私と同じ白骨死体になっている。


「食事が、ノドを通るぐらいの『不安』ですか?」

「いや……だって、まだお腹空いてたし……」


 空いてたのかよ。さっき6匹食ったよな、おデブ。


 私の存在は、やはり軽いらしい。

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