100話目 冥土? ――否、天国!
私はダークエルフ爺さんの机に近寄った。
「B班が要ですよ」
「フン。じゃあ、1分に4回だ。歩止まりは95%でいける」
「――断言されましたね」
「前はこれだった」
あ、左様で。
B班1440
→4コ×60分×8時間×0.95=1824
「はい、お嬢様。また要になりました」
「もうムリよ! 人、人を雇うわ!」
「では、1人雇いましょう。50個プラスと」
魔力込め班1582
→1632
「レオンさん。今度はC班が要です」
「――クールタイムを短くする方法なら、ある」
おっと。
「興味深いですね」
「青キューブで冷やせば、1時間が10分になる」
「それは、何個いりますか?」
「色によって変わるな。最も高温の赤を冷やすなら、青が5個必要だ」
「紫キューブ換算だと……」
「10個だな」
「使いましょう」
C班1600
→400×5回=2000コ
「お嬢様。また来ました」
「またなの~!?」
うん、「また」なんだ。済まない。
「ちょっと~、みんなもアイデア出して! 他の班もスグ来るわよ!?」
そんな感じで、流れは加速していき。
魔力込め班1632
→4人増やす。+200で1832
B班1824
→1分で6個出来ると豪語。歩止まり90%。
→6×60×8×0.9=2592
魔力込め班1832
→さらに4人増やす。+200で2032
C班2000
→6回に増やす。400×6=2400
魔力込め班2032
→+8人。+400で2432
「はい、大変お待たせしました、A班のオラースさん。ようやく一巡しましたよ」
「んだ。やっとだべ」
「ですが、在庫がいっぱい余っているので、当座はこれを処理するのに手一杯でしょう」
「んだな」
「ガイ! それ、ズル~い!!」
うるさいね、お嬢様は。せっかくヒイキしているというのに。
「この、極悪スケルトン! あ、分かった! 本名ゼッタイこれでしょ!」
ははは、私の名前はガイギャックスです。
以下、更に加速していき。
C班2400
→7回に。400×7=2800
魔力込め班2432
→+8人。+400で2832
「さて、ベルトランさん。再びB班が要になりましたね」
「――ニィさんよ。こっから先は、歩止まりが急速に悪くなる。1分に10個も作ったら、67%だ。3個に1個は不良品だぜ」
試してはみたんだな。
「儂は職人だ。こんな数字で穴開けたくねぇ」
「気持ちはよく分かります。――が、必要なものは数です。今までは、要でなかったゆえにOKでしたが、要となった以上は動いて下さい。B班が動けば、工場全体がパワーアップするんです」
「チッ……仕方ねぇ」
B班2592
→10コ×60分×8時間×0.67=3168コ
「さて、レオンさん。またC班ですが」
「同じだな。青キューブで短縮だ」
「残念ながら、8回目の考慮時間はありません。9時、10時10分、11時20分、12時半、13時40分、14時50分、そして16時の7回です」
「む」
「さて、2800個でいいですか? では、ここが要で……」
「いいや、まだだ」
おや。
「もう1個、C-3を増やす」
おっと……。やって来たな、9分の船を導入するようなアイデアが。
「たしかに、それなら最大5600個となりますね。完全決め打ちも必要ですから、実際はいいトコ5、6回でしょうが……」
「2つにするなら、青キューブもそれほど使わずに済む。導入しない手はない」
「待ち給え、レオン。工場には金もないぞ」
ジェラールが告げた。
「そんなものを買う金がどこにある」
「買わないさ。交換だ」
そこでおカミさんが閃いた。
「レオン! あんた、A-5と変えるんだね!?」
「ああ、そうだ」
「馬鹿な!」
ジェラールが机を叩いた。
「誰が持っているというんだ!?」
「ソネの大工場だ」
レオンは、後ろで立ってるC班の1人を叩いた。
「こいつが気付いたんだ。『俺たちの所ですら、愛着ある以前の機械を置いていた。広い向こうだったら、なおさら自社倉庫に置いてるだろう』ってな」
――なるほど。
「くわえて、向こうは全部4型に揃えてたハズだ。なら、A-5とC-3の交換にも乗るだろう」
それを聞くと、ベルトランも黙っていない。
「フン。儂ンとこも当然、そいつを導入するぜ。一気に2倍だ」
「オラもしたいだよ」
はい。B班、A班も導入と。書き書き。
私は、全て変更した数字を見せた。
A班
285×8時間=2280(4560)
※在庫20000
B班
10コ×60分×8時間×0.67=3168(6336)
魔力込め班
25人雇う。2832
C班
400×7回=2800(5600)
※青キューブ5コ×6回
「導入はまだ調べてないのでカッコ書きですが、同じ社内で最新型と型落ち品の交換なら、1対3でも楽勝だと思いますよ」
一部のモブエルフが、「出来るのか……?」とか、「地獄のはじまりだ……」などと言ってるが、とんでもない。
アイデアが満載だった。とくに、最後の「2台にする」など、皮膚があったら鳥肌ものにシビれたよ。
まったく……ここは天国である。
お読みいただき、ありがとうございます。
100話という節目を迎えられることが出来たのは、ひとえに皆様のおかげです。
今晩は、もう1話投稿する予定です。
101話からも、どうかお楽しみ下さい。