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会議終了





また視線が俺に集まった。

雰囲気を読んで2度目の自己紹介と、ここに来た目的を話す。


「さっきも言ったが朝霧 陽、元勇者だ。ここには、まあ有り体に言えば仲間になりに来た」


面と向かって仲間になりに来たって言うと恥ずかしいな。


「信用できる仲間は大歓迎だから、今からハルは私達の家族」

「………………いきなり近すぎじゃないか?」

「……?」


魔王様ぁ…………

信用できないんじゃなかったのかよ…………

戦争ではあんなにカッコよかったのに、素は天然で方向音痴とは思わなかったよ。


「と言うか……え?俺の話これで終わり?アッサリしすぎじゃない?」


魔王城がほのぼのしすぎてヤバイ件。

とても滅亡に追い込まれている種族とは思えない。


「じゃあ解散」


そう言ってみんな次々と会議室を出ていく。


「あ、あれ?」


…………………。



……………あ、思考停止に陥ってた。


想像とだいぶ違う………


第一印象的な意味でがつんと何かするつもりだったのに、がっつりあっちのペースに飲み込まれてしまった。


王国の勇者召喚の話も、もっと盛り上げるつもりだったのに、ワイワイやってる奴らがシーンとなってむしろ申し訳なくなっちゃったし。


…………何故こうなった?


ちょっとしたプチ反省会を頭の中で繰り広げていたらクーナに肩を叩かれた。


「ボーッとしてないで行くよ」


会議室にはもう俺とクーナしかいない。

クーナを除けば誰もいないのに寂しい感じかしないアットホーム魔王城に戸惑いが隠せない。


「どこに行くんだ?」

「父さんの部屋」

「………会議室の後にそんなこと行くのか?」

「行くの」


俺、面白いくらいクーナに振り回されてるな。

それにしても父親いたのね。

いやまあ、当たり前か。


…………待て、クーナの父親って200年前くらいに初代勇者に殺られた魔王の事か?


え?なに?そんなとこ行くの、俺?


……………マジで?




▽▽▽




……………来てしまった。


予想はついたがクーナの止まった扉は、他と変わらないごく普通の扉だった。


「クーナ、本当にここなのか?」

「失礼、間違えるはずがない」


会議室行くとき間違えてただろ。


「…………会議室は最近出来たから間違えたの」


顔に出てたようだ。


部屋の中は魔王と言うより社長の仕事部屋と言った感じで、スマートな書斎だった。


「あれ?ベットは無いんだな。寝室は別にあるのか?」

「魔族は高位になるほど生理現象が無くなるの、だからベットも寝室も無い」

「寝なくても大丈夫なのか?」

「そう、空腹も無くなる」

「……人生の大半を損してるな」

「人じゃないから」

「確かに」


キョロキョロ物珍しそうに部屋の中を見る。


この部屋に住んでいたと言った、クーナの父。

もし俺が思った通りの人なら、その人は世界最強と言われた魔王だ。


約200年前に初代勇者に殺された魔王。

名をイシュグナー、特別な力や魔法は無く剣のみで最強と呼ばれた男だ。


特殊な歩法で滑るように移動し、細長い双剣で正確に急所を突く姿はまるで死神のようだったらしい。


特殊な歩法による移動や高度な剣術による斬撃に音がしないところから『音無しの死神』と言う通り名が有名で、次点で『静謐な悪魔』や『無音の死』と、基本的に中二病まっしぐらな命名をされている。


カッコいいけどね。


そんな最強の魔王を殺した初代勇者は、化け物のように強かったと思われがちだが調べてみると実はそうでもない。


実際に殺したのは初代勇者で間違いないらしいが、どうやって殺したのかは結局分からなかった。




「ハル」

「どした?」


名前を呼ばれ反射的に顔を向けると、クーナが部屋の本棚を見ていた。


「見て欲しい物がある」

「……?」


そう言ってクーナは本棚から1冊の赤黒い本を取り出し、それを床に置く。


次に腰の剣で手を切り、自分の血で濡れた剣を本に刺した。


剣は何の抵抗もなく根本まで刺さり──いや刺さったと言うより、まるで本も床もすり抜けたようだ。


そのままクーナが剣にゆっくりと魔力を注いでいるのが分かる。


するとだんだん真っ暗で底の見えない穴が開いていった。


「……………これは?」

「父さんの残した物がある部屋への道」


クーナは俺の質問に答えながら手の傷を魔法で治す。


そして穴から剣を抜き腰に刺しながら、穴に足を突っ込んだ。


「…………まさか……」

「行くよ」

「マジで?」

「まじゅで」


言えてない…………言えてないよ魔王様………


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