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戦争の理由





クーナ真剣な顔を見て、俺も気を引き締めた。

しかし、会議を始める前に言わなければいけないことがある。



「なぁ……俺の席が無いんだけど、これはどうすれば?」

「男の子でしょ、立ってなさい」

「疎外感が半端ないわ。はぁ仕方ない、作るか」


ミーアの提案を断り、異空間から銅のインゴットを取り出す。

それを皆と同じ形の椅子に加工し、そのままでは重いので重量軽減の魔法を付与してからクーナの隣に座る。


「器用ね」

「物作りだけな」


…………あれ?ここでもよかったよね?

魔王の隣ってか、偉い人の隣って座っちゃダメだったっけ。


「……?」


クーナを見てたら不思議そうな視線を向けられてしまった。

…………まぁいいか。文句言われないし、もう座っちゃったし。


「後、も一ついい?」


そう言ってみんなの注目を集めてから本当の疑問を聞く。

椅子の話はより自然な反応を見るための布石だ。


「俺が来ること知ってたの何で?」


…………………なるほど。


俺のこの発言に反応したのはプラム、オーリン、ミーア。


驚いたのがマルメロ。


見事に無反応なのがフィリール。


リアムは…………天然のようだ。


概ね予想通りだが、アーティが予想外の反応をした。


アーティは、無反応だった。


フィリールが無反応なのは、単に元々感情が顔に出にくいんだろう。

加えて隠す気も無さそうだ。だから無反応、興味が無い故の反応。


この場合の無反応とは、無視とは違い普段通りのいつもと同じ反応と言うことだ。

寡黙なら寡黙。元気なら元気。


自己紹介を見た限り、フィリールの反応は十分らしい反応だ。


アーティの反応も十分アーティらしかったが、それは知らなかった時の反応。


みんなの反応を見る限り、こいつらは十中八九俺が来ることを知っていた。少なくとも勇者の誰かが、来るかもしれないくらいは知っていたはずだ。


当然アーティも知ってたと考えるのが自然だ。

知ってた上で知らなかった反応を極々自然に示した。


いい子かと思ったが、お腹は真っ黒かもな。


「何でそう思った?」

「プラムー、お前ら隠す気無かったろ。そら気づくわ、当たり前だろ」

「──そうか」


勇者が来たってのに軽すぎだし、なんも聞いてこないし。

クーナが連れてきたからって、この落ち着き様は流石に変だ。


「知ってたのは、私とプラム、オーリン、ミーア、マルメロの5人。アーティ、リアム、フィリールは知らない」

「…………マジで?」

「まじゅで?」

「あーっ、本当?の隠語だ」

「本当」

「……」



アーティは知らなかったのか、そっかそっか。



…………ごめん!

実は腹黒とか言ってごめんなさい!

ちょーっと………顔、見れないかな?

スーッとアーティから顔を反らす。


そだよな。ここでわざわざアーティだけが嘘つくのも不自然だよな。

て言うか知らなかったのにあんなにフレンドリーだったの?

いい子なのか自信家なのかバカなのか。


…………バカないい子かな?


魔王城のキャラが読めない。


「…………なら結局、何で知ってたの?」

「それは後」

「ア、ハイ」

「まず、勇者と各三国の動向は?」


クーナのこの質問に答えたのはプラムだった。


「前回の勇者を投入した戦争以来、不気味なほど静かです。恐らくアサギリの処刑に気を取られていたのかと」

「違うぞ?」


黙ってプラムの報告を聞くつもりだったが、聞き捨てならない事があったので訂正する。

と言うか俺の処刑のこと、知ってたのね。


「三国が静かなのは確かに俺のせいでもあるが、王国が2度目の勇者召喚をする予定なのが大きい」


──2度目の勇者召喚──

それを聞いた皆は、気持ち顔が固くなる。


「これは戦後、俺が必要になるだろうと手当たり次第いろんな情報を集めていた時に知ったことだ。まず召喚に必要なのは術を発動するための莫大な魔力、魔方陣を書くための王族の血、最後に勇者の体となる山のような死体」


勇者の体が元々死体とかゾッとしねぇよな。


勇者召喚とは、異世界から魂を持ってきて、こっちで作った器に入れる事。


魂が入ると同時に器が魂に引っ張られるため容姿は変わらないらしい。


転生の時に周りの人間が倒れてたところを見るに、転生には召喚と違い魂が必要らしい。


故に召喚され転生した俺は、まさしく紛い物。

肉体も魂も元の朝霧 陽とはほど遠い。


……………ナイーブになってる場合じゃないな。


「いきなり大きな戦争を起こしたのもこれが理由だ。魔力と血は時間があればどうにかなるが死体はそうはいかない」


「俺の時は殺した魔族と犯罪者の物を使ったらしいが、2度目の分は残らなかったらしくてな。国民から集めるにしても不満を溜め込まれても困る、かといってめぼしいところは使いきった」


「だから──大規模な戦争を仕掛けた」


「戦死するであろう兵士の死体と俺達勇者の使用運転の二点を主な理由にな」


「莫大な魔力は王国の国宝の一つ『魔の宝珠』に溜め込んでおき、王族の血は専用の容器に注いで集め、死体は戦争で死んだ戦死者の物を待つだけ」


「時期的にもそろそろ召喚するんじゃないか?」


おぉ、部屋の空気がお通屋みたいになってしまった。


「それは──本当なのか?」


プラムが恐る恐る聞いてくる。


「ここで嘘を言う訳がない。まぁ、そんな暗い顔をすんな止めるのは簡単だから」

「…………本当か?」

「あぁ、人道を無視すれば簡単だ」


ちょうど道具もあるしな。


「人道?」


アーティは人道を知らなかったらしい。

こんな世の中じゃ確かに聞かないよな。


「騎士道みたいなもんだよ」

「そんなのあるんだね、無視してもいいの?」

「あぁ」


「じゃあ次は、ハルのこと」





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